第9話「身分証」
ワシの体についてちょっと触れとるぞい。
宿に着いて三人用の部屋を取ったルナはワシをベッドに寝かせて、ジーナの話を聞いとったのじゃ。
「これ程までに酷いことになってるとは……」
スラムは放置されて長いらしいのじゃ。
「調査が必要ですね」
次の日、マザーが宿に来たのじゃ。マザーはルナの話を真剣に聞くと、この村の現状を教えてくれたのじゃ。
「国の端にあるこの村は王国の加護をほとんど受けていなくて役員も少ないの。だから普通に暮らしていける人と、スラムでしか暮らせない人に別れてしまうの」
どうやら現状ではどうにかするのは難しいらしい。じゃが流石に限度があるのじゃ。
「少しずつですが、調査を進めてジーナさんのような人が出ないように申し出ます。それで、私には見えないのですが……コン様はいらっしゃるのかしら?」
ジーナとルナがワシの方に向かって指を指したのじゃ。
ワシの格好は、狐を擬人化したような容姿に、ショートパンツじゃ。ショートパンツは汚れないようで洗濯不要なのじゃ。
ちなみにワシは食事はできんし、用も足さんのじゃ。
ルナの魔力を通して食事はできるのじゃが、胃に入っとる気がせんし、そもそもワシの体に胃はあるのかのう?
まぁとにかく、ワシの体はそんな感じじゃ。
二人の指さす方のワシを見たマザーは膝まづいて祈るような形で語り始めたのじゃ。
「私は元々、昔ある魔王によって滅ぼされた街から逃げてきた人間です。魔王の恐怖は今も拭えません。魔王の力を無力化してくださってありがとうございます!」
「礼を言われるほどの事はしとらんのじゃ。それより魔王であるジーナの処遇の方が心配じゃ」
ルナからの通訳を得てマザーはある話をしたのじゃ。
「どうやらジーナさんは魔王の力を上手く扱えるのではないかと思われているのです。それでもし魔王の力を使いこなせるなら、コン様と共にいてもらいたいと思っています。勿論ルナも一緒にです」
ルナとジーナは顔を見合せて抱き合ったのじゃ。ルナもジーナの境遇から同情の念もあるのじゃろう。
「ルナさん……私、ルナさんと友達になりたい」
「私こそですよ。ジーナさん、いえ……ジーナ、私と友達になってください!」
「ありがとう、ルナさん……ううん、ルナ!」
ルナが呼び捨てにしたのを真似てジーナも呼び捨てにしたのじゃ。これで仲良しの証じゃ。
「ではジーナさんには教会で力を使ってくれますか?」
「教会で? 広場とかでなくて?」
「そうです。勿論人払いもします。見られたら恐怖から迫害されるかもしれませんから」
マザーの言うことは正しいのじゃ。それなら、とここでやってはどうかとワシは思ったのじゃ。
マザーに力を示せたらそれでいいのじゃからのう。
「なるほど、コン様の言う通りですね。ではできますか? 暴走したら、コン様に任せますよ?」
ジーナはネックレスに力を込めるとスライムが一匹飛び出してきたのじゃ。そしてジーナの命令に従って動いたのじゃ。
「これは本当に凄いですね……」
マザーも驚いとったのう。何せスライムはいくらでも出せたのじゃから。
部屋がいっぱいになったのを機に戻せるかどうかマザーは聞いたのじゃ。
「戻ってきて!」
ジーナの掛け声とともにジーナのネックレスに戻っていくスライムたち。
これにはマザーも拍手したのじゃ。
「これで証明されました。私が証人になります。ジーナさんはスライムマスターとでもいいましょうか」
マザーは今日は少し待っていて欲しいと言って宿から出ていったのじゃ。
待っとる間にルナはジーナが出した一匹のスライムで色々検証を始めたのじゃ。
「柔らかいけど奥は固い。ふにふにしても何も傷つかないね」
ルナはスライムに乗ったりもしたのじゃ。そしてジーナが動かして馬ごっこしたりしたのじゃ。
「ちなみにスライムさん怒ってたりしないよね?」
「ルナさんを乗せられて喜んでるみたい」
それもどうかと思うがのう。そうこうしとるうちにマザーが帰ってきたのじゃ。
「三人の身分証が出来ました」
マザーは二枚の身分証を持ってきたのじゃ。
ルナの身分証には『聖なる巫女』とあり、ルナの顔写真とワシの顔写真が写っとったのじゃ。ワシの写真は魔力で抽出したらしいのじゃ。
ジーナの身分証には『スライムマスター』とあり、ジーナの顔写真と、こちらにもワシの顔写真が写っとったのじゃ。
二人の身分証にはどちらにも『神憑き』の称号が付いとったのじゃ。
「これから世界救済の旅に出てもらいます。コン様もこの町で大分レベルアップされたでしょうし、きっと次の街も救えると思います」
一日だけ猶予を貰って、ルナは教会の仲間に別れを言いに行ったのじゃ。
ワシとジーナは宿でマザーに今後のための知識を付けさせてもらったのじゃった。
ルナとジーナ仲良しじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




