第42話「全員の成長」
テンポが遅かったのがまた早くなるかもしれんぞい。
ルナは大きく成長していったのじゃ。宿から毎日シゾフさんの所に行き、修行を見てもらうのじゃ。
「そうそう、段々コツを掴んできたのう。その調子でコン様への不満を爆発させるのじゃ」
「コン様の馬鹿ぁぁぁ!」
やっとる事は意味不明じゃ。なんでワシへの不満を爆発させねばならんのじゃ。
じゃがそれがトリガーになるなら仕方ないのじゃ。
「ジーナとグーシャに黒主がないのは不満がないからなのかのう?」
「いや、あってもなくても神から命を与えられた者は白主以外持つ権利がないのじゃ。そういう運命じゃ」
そういえば聞きたいことがあったのじゃった。
「シゾフさんやい。この世界には名前を名字と名前に分ける文化はないのかのう?」
ワシずっと名前しか教えて貰ったらんかったから気にせんかったのじゃが、少し気になったので聞いてみたのじゃ。
「名字とは何じゃ?」
「ファミリーネームじゃ」
「ファミリーネームとはなんじゃ?」
「ワシの名で言うと狐依の部分じゃ」
ふむと頷いたシゾフさんは、名字やファミリーネームはこの世界にはないと言うのじゃ。
「コン様のそれは、神名と言って神様にのみ付けられるものじゃ。普通の人間には付いていないのじゃ」
では名前だけなのかのう? 家族の印はないのかのう。
「ワシの前の世界では名字と言って、血の繋がった家族は同じ名字を持ったのじゃ。そういうものはないのじゃな?」
「ないのう。家族の繋がりはあるのじゃが、名に縛られることはないのじゃ」
「それは……名前同じ人とかおったらどうするのじゃ?」
ワシの前の世界じゃと同姓同名ですらおったのに、名前カブること沢山あるじゃろ。
「少なくとも同じ街内には同じ名をつけないのじゃ。旅する者でカブることはあるかもしれんがのう」
シゾフさんにはこの世界の色々を教われるのう。助かるのじゃ。
「そういえば、この世界には神も魔王もおるのに、勇者は話を聞かんのじゃ。勇者はおるのかのう?」
「勇者? 冒険者のことかのう?」
まぁ似たようなもんじゃな。じゃが聖剣だったり勇者だったりはおらんのかのう。
「実際強い冒険者はおるぞい。神力ではなく魔素が強い者じゃ。この大陸にはあまり強い魔素を持つものがおらんが、魔素の研究をしとる国がある大陸とかじゃと優秀な者が多いぞい」
それはなかなか凄そうだし面白そうな国もあるもんじゃ。
「その辺りは実際に旅して見た方が楽しめるじゃろ。まずは生き抜く力を付けよのう」
確かにシゾフさんの言う通りじゃな。
ワシも神力の使い方を学んだのじゃ。命令するのではなく感情を伝えることで白コンと黒コンを操るのじゃ!
神は魔素を扱えないのじゃ。ジーナとグーシャは特殊なアイテム、ネックレスや腕輪があるから魔素の塊である魔物を扱えるのじゃが、ワシにはそれがないのじゃ。
じゃから火や水や雷や風などの魔法を扱えないのじゃ。じゃが神力はその特殊な力ゆえ様々なことが出来るのじゃ。
ワシの白コンと黒コンは変化ができるのじゃ。刀を持ったワシに化けて的を斬ったり、熊に化けて力勝負に持ち込んだりのう。
更に黒コンはルナの魔素を纏えるのじゃ。ルナは神力を少ししか扱えんが魔素も扱えるから、ワシの黒コンにルナの魔素を乗せるという合わせ技もできるのじゃ!
チームプレイにはまだまだ慣れておらぬワシらじゃが、少しずつ練習して強くなっていったのじゃった。
ジーナとグーシャも白主を使いこなすよう教わっておったのじゃ。
そうして二週間が過ぎた頃、いよいよ新生ワシらの旅再開じゃ。これまでより一層強くなったワシらはシゾフさんに別れを告げるのじゃ。
「儂から教えられる基礎は教えたからのう。後は旅の中で強くするだけじゃ。じゃが敵わぬ相手からは逃げなさい。命を大事にのう」
「ありがとうなのじゃ! さよならバイバイなのじゃ!」
ワシらはシゾフさんに教わった通り、次の街ジータ街にいき、その先の街イータ街で空の旅をする事を目標にしたのじゃ。
イプシロン街からジータ街へはそう遠くなかったのじゃが、魔物は出るのじゃ。とはいえ油断はできんのう。
ワシらは省エネで戦い続けたのじゃ。交代で寝るのも慣れたものじゃし、旅は順調に行くと思っとったのじゃ。
もう失うのは勘弁じゃ、実際に失ってはなかったがのう。
ジータ街へ着いてからギルドに行き、ワシらは魔物の素材を納品したのじゃ。討伐の証として金と替えてもらえるからのう。
資金も貯まってきたのじゃ。ワシらは次のイータ街を目指すのじゃ。
イータ街からは飛行船が出とるらしいのじゃ。山道もあるのじゃが、魔物が溢れ危険でしかも長距離なんじゃそうじゃ。
それなら飛んで行った方がマシと開発されたのが魔法飛行船らしいのじゃ。
動力は魔素だそうじゃ。仕組みは聞いててもワシ馬鹿じゃからよくわからんのじゃが、柔らかい風と空気を起こし飛ばすそうじゃ。
とにかくイータ街に行かねばわからん。今いるこのジータ街には特に何もないのじゃ。
「少しよろしいですか?」
ワシらが一日休んだ後ジータ街を出ようとした時、声をかけるものがおったのじゃ。
「どうかしましたか?」
ルナが対応するとその者は言ったのじゃ。
「良ければズィー街まで護衛をしていただけませんか? ギルドに依頼できない無一文の身ですが、必ずお礼はしますので」
ズィー街とはイータ街から飛行船で飛んだ先らしいのじゃ。
その女性は金もなく困っておるようじゃった。どうするかのう?
この護衛任務ちょっとだけ意味あるぞい。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




