第28話「ベータ街で」
魔族は嫌われておるのじゃ…。
暫く夜は交代制で眠り、森の道を突っ切ったのじゃった。五日かけてベータ街に着くと、身分証を見せ中に入ったのじゃった。
「皆バイバイ」
ウェアはワイルドウルフ達と別れを告げ、中に入ったのじゃ。
「案内するよ」
ベータ街を案内してくれるウェアは街の中なのに警戒心を解いておらんかったのじゃ。何故なのかのう?
「おい」
唐突に男に話しかけられたウェアじゃ。
「なんでまたこの街に戻ってきてるんだよ?」
「ちょっとこの子達を案内するためにね。どいてくれるかしら?」
すると男は突然ウェアの胸ぐらを掴んだのじゃ。
「魔族が偉そうに街を歩くんじゃねぇよ!」
どうやら魔族は嫌われておるらしいのじゃ。魔物を従わせるからかのう?
「その手を離してください、オジサン」
ルナがお兄さんに優しく話しかけたのじゃ。
「この人は私たちの知り合いです。関わり合いになれとは言いませんが、自分から境界線を踏み込んだなら、言い訳はできませんよ?」
ルナは男を睨みつけるのじゃ。
「お前らこいつの仲間なのか? 悪いことは言わない、縁を切れ! 魔族は魔物を使って街を滅ぼす悪だぞ!」
ここはワシの出番のようじゃ。
ワシの力で男の魂を柔らかくしようとしたのじゃ。じゃが……そう上手くいかんかったのじゃ。
「くっ……か、硬いのじゃ! いくら撫でてもこねようとしても全く動じんのう。今のワシにこやつを解すのは無理じゃ……」
カッチカチじゃ。これはお手上げじゃ。
「さぁ、とっとと街を出ていってくれ。お前にいられるとこっちの居心地が悪ぃ」
カチンときたワシは思いっきり男の後頭部を殴りつけたのじゃ。
「ぎゃあああ! 痛いのじゃ! ぐううう!」
どうやっても無理じゃ。どうしたものか……。
「私たちは魔王だぞ? 私たちも出ていかなきゃいけないのか?」
見ればグーシャが腕輪からゴブリンを出しておったのじゃ。
「ひっ! 兵を呼ばないと!」
「待ってください! 私たちはちゃんと身分証を発行された認められた魔王と、私は聖なる巫女です。あなたがしているのは難癖ですよ?」
ルナは必死で呼びかけるが男は兵達を呼びに行ったのじゃ。
そして兵達に説明すること、三十分程度。兵達はワシらを認めて、宿へと案内してくれたのじゃった。
男はずっと叫んでおったのじゃが、無視して宿を取ったのじゃ。
ベータ街のある民宿のような場所で、広い部屋に通されたワシらはウェアに尋ねたのじゃ。
「何故魔族がこんなにも嫌われておるのじゃ?」
「恐らく、魔族自身が魔物と同様だからですよね?
ウェアさん?」
ルナの問いに頷いたウェアは語るのじゃ。
「魔族は元々、魔族の魔王から生まれた人型の魔物だと伝え聞いてるわ」
それ故に相性の良い魔物なら従えることができるのだという。
「魔王からの支配はとっくに消えて、私たち魔族は魔族の里でひっそり暮らしていたの。でも私は外の世界が見てみたかった。だから里の掟を破って飛び出してきたの。そしたら、まぁ思ったより迫害が酷くてね。街の外の方が落ち着けるくらいなのよ」
害がないと証明され身分証を持っていても、一発で魔族だとわかるのだという。それは肌の黒さじゃ。
ウェアは肌がとてつもなく黒かったのじゃ。ポニーテールの金髪に黒い肌じゃ。まぁ目立つわのう。
「あなた達は私を魔族と知っても普通に接してくれるけど、普通はさっきの男のような対応が一般的なのよ」
「それって悲しい」
ジーナは座っているウェアに近づいて抱きついたのじゃ。
「きっと今まで寂しい思いをしてきたよね? 私たちがいる間はそんな思いさせない」
「ありがとう、ジーナさん」
「呼び捨てでいい」
ジーナはウェアに頭を撫でられながら笑っておった。
「ウェアを虐めたらあたしが街を滅ぼしてやるよ! あだっ!?」
ワシは物騒な事を言うグーシャの頭にゲンコツを落としたのじゃ。これが通じるということは硬くはなっとらんのう。
「ふふふ、冗談ですよね? グーシャ。それよりコン様、ひとつ聞きたいのですが。もうずっと昔に魔王になった人まで救えると思ってますか?」
「当然じゃ。グーシャでも救えたのじゃ。過去なんて関係ないのじゃ」
するとルナはウェアの方を向いて聞いたのじゃ。
「コン様は魔王を良い方向に導く力があります。ですが、あなたから見てそれらの魔王は救えると思いますか?」
「思わない。あいつらは規格外だ。倒せるかすらわからない。近づくことすら叶わないと思う」
それでも、と思うのじゃ。悲しい結末は嫌じゃ。努力して届くかもしれぬのなら、手を伸ばすのじゃ。
たとえ何十年かかろうとも、本気じゃからこそやるべき意味があるのじゃ。
ワシの目を見てウェアは笑ったのじゃ。それは悪い意味でではないのじゃ。
「あなたなら叶うのかもしれないね。神様」
そうじゃ、ワシは神になったのじゃ。神の道はまだ始まったばかりなのじゃ。
ワシの神の道は始まったばかりじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




