第10話「旅立ち」
移動はかなり省くぞい。
町からの旅立ち。向かうは次の街じゃ。漢字が違うだけあって大きな街らしいのじゃ。
ワシは少しだけ不安になったのじゃ。傍から見れば女の子二人だけの旅じゃ。
ワシの存在なんぞ賊でも出たらひとたまりもないのじゃ。
そんなワシの考えを察したのか、ルナが教えてくれたのじゃ。街に着くまでは護衛の兵達が付くとのう。
そうして馬車に乗り込んだワシらは旅に出ることになったのじゃ。
出発前、ルナとジーナはマザーに抱きしめられとったのう。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
いつまでも見えなくなるまで手を振るマザーは優しい人じゃった。
いつかまたこの町にも帰ってきたいのう。
馬車はトコトコとゆっくり進むのじゃ。そして街までは三日かかるという事で、野宿をする事になったのじゃ。
兵達が交代で守ってくれるらしいのじゃが、ジーナが提案したのじゃ。
「私のスライムたちも見張りに使わせてください!」
野犬などが出ても戦えるスライムたちは頼りになるのじゃ。ワシらは安心して野宿したのじゃった。
そうして三日かけて旅を続けて、とうとう街の入口が見えてきたのじゃ。
「あれがそうなのかのう?」
「はい! ビー街です」
「ちなみに前の町はなんと言うのじゃ?」
「エー町です」
なんか適当じゃのう? 気のせいかのう?
「大きな街だね!」
ジーナが大はしゃぎで街を見とったのじゃ。それをルナが抑えて言ったのじゃ。
「街に入ったらスライムの力を使ってはいけませんよ」
「え? なんで?」
そりゃそうなのじゃ。魔王の力は人からすれば脅威じゃ。
いくら制御されとるとは言っても、他人からすればそんなものは関係ないしのう。
「勿論危険が迫れば遠慮なく使って構いません。ですが認められるまで普段は隠しておかなければなりません」
ルナの言うことに納得いったジーナは頷いてスライムたちを回収したのじゃ。
「ルナ様、念の為……街のギルドに着くまでは我々もついて行きます」
兵達の申し出を受け入れたルナ。ワシらは門で検閲を受けて街の中へと入ったのじゃ。
「おお! すごいのう!」
ワシは思わず叫んでしもうた。それ程までに立派な街並みじゃったからじゃ。
日本があった世界なら古来の街並みじゃろうが、ワシからすれば古きこそ良きじゃ。
「まずは依頼を受けたり頼んだりする場所「ギルド」に行きましょう」
兵達の手を煩わせすぎるのもいかんしのう。
後で聞いた話によるとエー町では教会がギルドの役割をやっとったらしい。
そのため身分証を作れたらしいのじゃ。つまり登録自体は済んどるらしいのう。
身分証には通り名と、未成年なら保護者の事が書かれとるのじゃ。ルナとジーナの保護者はワシになっとるようじゃ。
じゃがここで問題が発生じゃ。ワシの姿は見えんのじゃ。じゃから各街に着く度にギルドで姿を見せないといけないらしいのじゃ。
ルナはギルドの役員さんに立ち会ってもらって、ワシの姿を見させたのじゃ。
「ほ、本当に神様がいる……!」
ギルドの役員さんはあまりの事に驚いておったのじゃ。ワシは人形でないように、動いたり喋ったりしたのじゃ。
そして役員さんと握手をして、ルナとジーナを認めさせたのじゃ。
次にジーナじゃ。スライムの芸にはまたまた役員さんは驚いておったのじゃ。
そうしてギルドでの証明が済み、宿へとルナを運ぶことになったのじゃ。
ワシの姿が見えるようにするのはかなりエネルギーを使うようじゃ。
ジーナはスライムで運ぼうとしたのじゃがルナに止められたのじゃ。街の人にはまだ認められとらんからのう。
兵達が運ぼうとしたのじゃが、ワシはここでワシが運べるのではないか? と思ったのじゃ。
ルナがワシに触れられるのじゃからワシからも触れられるじゃろう。
傍から見れば透明な何かに運ばれとるように見えるじゃろうが、それでもワシも力になりたかったのじゃ。
「よし、触れられるのう」
「こ、コン様!」
よいしょっと、背負ったのじゃ。うむ、ちょっと重いのじゃ。
「ああ……神様の手を煩わせるなんて……」
「ワシの証明にしたためじゃろ? これくらいはさせとくれ」
ワシは兵達の案内で宿に着いたワシらは、兵達に別れを言うのじゃ。
「では神様のこの世界の救済の旅の成功を祈っています!」
ビシッと敬礼した兵達。ルナはワシの背で兵達に礼を言い、荷物を受け取ったのじゃ。
「最低限の荷物で旅するので着替えなどは現地で。そのための資金はギルドの身分証から引き出せます。身分証は不思議な力で出来ており、その身から離れることはありませんので安心してください」
兵達から説明を受けたのじゃ。なるほどのう。銀行みたいなものかのう。
とはいえ無駄遣いはダメじゃな。しっかり管理せんとのう。
兵達とはここで別れたのじゃ。
「ありがとうなのじゃ! さよならバイバイなのじゃ!」
そうして宿のベッドにルナを寝かせると、ジーナも横になったのじゃ。三日ぶりのベッドじゃしのう。
ワシもベッドに寝たかったのじゃが生憎二つしかない部屋なのじゃ。
仕方なく床に寝ようとすると声がかかったのじゃった。
声がかかったのじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!