13:絶体絶命から始まる誘導作戦:窮地
「ガァアアアァァアアアアアァァァァァッッッ」
「なんで、こんなことになったんだぁー!」
僕は悲鳴を上げ、息を切らしながら洞窟の中をわき目を振らずに走る。
オーガはそんな僕の命を刈り取ろうと大剣を振り回し、洞窟の壁を、いや何もかもを破壊しながら追いかけてきていた。
後ろから飛んでくる大きな土くれ。
当たれば大ケガなんてものでは済まない。
だけど、振り返って確認している余裕もない。
止まれば殺される。
かといって、このまま逃げ切れる気もしない。
いや、待て!
落ち着いて周りを見るんだ。
このまま逃げ回っていても、何の解決にもならない。
だから、利用できるものを探すんだ。
僕は生き延びるために、オーガから逃げながら周りを見る。
だけど、利用できそうなものなんて何もない。
あるのは僕を殺そうと追いかけてくるオーガと、岩肌を剥き出しにした壁ぐらいだ。
とてもじゃないけど、利用できるギミックやアイテムなんて見当たらない。
「くそっ」
こうなったらオーガのパワーを利用して壁を壊すか?
だけど、思った通りに攻撃してくれる保証はない。
じゃあどうする?
何かしないと、ただただ殺されるだけだぞ。
そんな最悪な状況の中、嫌な声が耳に飛び込んできた。
「ガウッ!」「ガウガウッ!」
視線を洞窟の奥へ向けると、数体のコボルトの姿がある。
さすがにこれはマズい。
オーガに追われている状態で、コボルトを相手にするなんてできない。
そう思っていたら、コボルト達が岩陰に隠れ始めた。
「ん?」
思わず僕は疑問符を頭に浮かべ、声を漏らした。
魔物はナワバリ意識が強く、他の魔物が侵入したら攻撃する。
そのはずなのに、コボルト達は隠れた。
なんで、と思った直後、オーガがまた雄叫びを上げた。
「ガァアアアァァァァァ!!!」
「うわぁーーーーー!」
容赦ない大剣のぶん回し。
そのせいで洞窟の壁が破壊され、砂埃が舞い上がる。
衝撃のためか、あちこちで天井が崩れている音が響いた。
僕はそんな中を走る。
進行方向にコボルトがいても関係なしに。
進路を塞ぐように落ちてきた岩を飛び越えて。
倒れてきた岩柱を、身を低くして滑って掻い潜った。
振り回される大剣によって、岩石が打ちだされても。
僕はひたすら逃げる。
「ひぃっ! ひぃっ!」
目には涙が浮かんでいた。
足を止めないのは、止まったら死ぬからだ。
たぶん、容赦なくあの大剣に叩き潰される。
いっそのこと戦うか? いや、やっぱり無理だ。
あんな奴に勝負を挑んだところで勝ち目はない。
だけど、なんとかしないと。
このままじゃあ、逃げ道を塞がれて死ぬだけだ。
「オォオォォオオオォォォォォッッッ」
ひたすらに洞窟の奥へ逃げ込む僕。
でも、オーガはしびれを切らしたのか、手に持っていた大剣を投げてきた。
だけど、その大剣は僕の頭の上を通り過ぎていく。
狙いを外した?
そう思ったけど、違う。
放たれた大剣は岩柱を破壊した。
倒れた岩柱は、僕が逃げ込もうとしていた通路を塞いでしまう。
「あっ……」
やられた。
僕は慌てて違う逃げ道を探す。
だけど、先ほどの天井の崩落のせいか、全ての通路が瓦礫で塞がれている。
逃げられない。
僕は気づき、臨戦態勢を取る。
振り返ると同時に、オーガは地面へ突き刺さった大剣を掴み取っていた。
不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと足を踏み出した。
「くっ……」
追い詰められた。
逃げようにも逃げ場がない。
かといって、戦って勝てる相手でもない。
あんな力で攻撃されたら、絶対に死ぬ。
じゃあ、どうする?
何かいい方法があるのか?
僕にできることは?
オーガの手から逃れる方法は?
利用できる何かはあるのか?
くそ、全くいい方法が見つからない。
何か、何かないのか!
迫る死へのカウントダウンに僕が焦りを覚える中、またコボルトの声が耳に入ってきた。
目を向けると、崩落した瓦礫から顔を出しているコボルト達の姿がある。
お互いの無事を確認しているのか、身体の香りを嗅いでいる。
何かのコミュニケーションだろうか。よくわからない。
だけど、コボルト達を見たおかげで、僕は大切なことを思い出した。




