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スキルを一つ捧げよ。血の滲む努力で得た有用スキルを破壊し、Lv.を下げる僕は異端者として常識を裏切る。  作者: 丈禅


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第5話:少女との出会い

断崖から落ちた俺は死を覚悟した。だって底が見えないんだぜ?こんなの底に川があっても人間の体なんかバラバラになるに決まってる。


しかも、胸の辺りが焼けるように熱く、痛い。


「ぐぁああああ!」


(こんなことになるなら、日本にいた頃に彼女でも作っておくべきだった。。。)


と考えていると急に景色が変わり俺は水の中に着水した。


バシャン!!


(体がバラバラになってない?なんでだ?というか、一瞬で景色が変わって水の中に飛び込んだように思ったが。どういうことだ?!)


俺は急いで水中から水面に向かって痛い体に鞭を打って泳いだ。


「ぷはっ!!」


水面から顔を出すとどうやら俺は湖のような場所にいるらしい。


先ほど飛び降りた場所からは10メートルほどの場所なようだ。


(上から見た時はこんな場所なかったけど、なんだこれ?)


上を見上げると先ほどのアルフレッドと兵士が崖上からこちらを覗いているが見えた。


(まずい!)


しかし、アルフレッドと兵士は俺と目線が合うこともなく、しばらくして去っていった。


(どういうことだ?俺が見えていないのか?)


俺は良く分からないまま、湖に浮かんでいたが声が聞こえてきた。


「あなた何をしているの?!」


声の主は、湖畔の木陰から現れた一人の少女だった。粗末な服を着ているが、大きな瞳で俺を見つめている。


俺は少女に警戒しつつも、自分の状況を把握するため、まだ引かない胸の痛みに耐えながらステータスを確認した。


「ステータス!」


【ユーマ・カエデ】

種族:人間(異世界転移者)

レベル:2

HP:1 (10:12-2)/ MP:0(8)

筋力:7/ 魔力:10 / 耐久:8 / 敏捷:11

コモンスキル:『鑑定Lv.2』『短剣術Lv.1』『生活魔法Lv.1』『錬金術Lv.1』

概念スキル:『刹那の停滞エターナル・モーメントLv.0』

武器:なし


(HPの最大値が…10!?)


驚愕と痛みに耐えながら、俺はシステムメッセージを思い出す。


(確か回復魔法を概念化させ、火魔法を生贄に捧げるとか言ってたな。。意味が分からんがコモンスキルから二つのスキルがなくなってる。あとはHPも最大値12からなぜか-2されて10になってる。何が起こってるんだ?HPも1になってるし、MPも0になってる。)


何はともあれ、俺は生きている。生きているが胸がとてつもなく痛い。


(なんだこれ、俺大丈夫なのか?)


俺は少女の方をもう一度確認し、害意がなさそうだと判断し、悲鳴を上げる体に鞭打って少女の方へ泳いだ。なんとか気力を振り絞り岸についた時、俺はあまりの胸の痛さに気を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「どこだここは?」


目を覚ますと知らない家の天井が見えた。どうやら俺はベッドの上で寝ていたようだ。

部屋には誰もいないが、夕方のようだ。


「ステータス!」


【ユーマ・カエデ】

種族:人間(異世界転移者)

レベル:2

HP:10(10:12-2)/ MP:8(8)

筋力:7/ 魔力:10 / 耐久:8 / 敏捷:11

コモンスキル:『鑑定Lv.2』『短剣術Lv.1』『生活魔法Lv.1』『錬金術Lv.1』

概念スキル:『刹那の停滞エターナル・モーメントLv.0』

武器:なし


(やっぱりHPは下がっている。しかも今思うと概念スキル?のエターナル・モーメントもLv0ってどういうことだ?Lv1じゃなくて0?)


俺が思考に耽っていると、部屋の扉が開き湖畔にいた少女が入ってきた。


「目を覚ましたようね」


「君が助けてくれたのか?君は誰だ?ここはどこなんだ?」


「私はリリィ。この森の端で薬草を採っているの。ここが何かを教える前にあなたのことを教えて欲しい。あなたのレベルではあの森を抜けてここに辿り着くこと自体が変なの。正直に言うと私はあなたを信用していないわ。」


どうやら俺のレベルはバレているらしい。鑑定持ちだろうか。

おそらく俺のレベルであればなんとでもできると思って回復させてくれたんだろう。

嘘を言っても仕方がないので、俺はここに辿り着くまでの経緯を正直に答えた。


「それは辛かったわね。転異者に直接会うのは初めてだけど、最近まで世界最強とされていた転異者がいたわ。その人が亡くなったという噂を聞いたけど、おそらくあなたは変わりの人材として召喚されたのね。。可哀想に。。」


初めてこの世界に来て、俺の身を案じてくれた言葉を聞き、俺は涙を流していた。


「と、とにかくお腹が減ってるんじゃない?ご飯作っているから食べましょ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食事は質素ではあるがパンとシチューだった。

俺はこの世界にきて初めてまともな食事を食べることができた。

俺はご飯を食べてまた泣いた。泣きながら、おかわりした。

あまりにも泣くのでリリィは少し引いているようだった。


どうやら俺が泣きまくっていたことが功を奏したのだろう、リリィはこの場所のことを語ってくれた。


「この場所は私が幻惑魔法を使って、教団の追っ手が来ないように、私が逃走用に作った安全地帯なの。私も実はあなたと同じで教団に追われているの」


(幻惑魔法か、、だからアルフレッド達からもこっちが見えてなかったんだな)


「なぜリリィも追われているんだ?」


「私も実は元々教団に属していたの。その中で私は鑑定のレベルが高いことやデータの分析が得意だったこともあり、スキルの分析などを任されていたわ。過去のスキルなども分析していたんだけど、その中で私は好奇心から教団が秘密にしているデータにもアクセスしてしまったの。そこで見つけたのがスキルLv0の存在。教団はこのスキルLv0の存在を躍起になって隠しているようで、その存在を知ってしまった私は教団から除名され、追われる身になったわ」


「なぜ教団はスキルLv0を隠しているんだ?」


「詳しくは私も分からないけど、過去の転異者の記録でシステム自体を破壊する異端者と記録にあったわ。異端者は胸に烙印があることも記録にあった。ユーマの胸の烙印と私の鑑定のスキルであなたを見たけどLv0のスキルがあったこと。また、あなたが転移者であったことから私はあなたが異端者だと確信したわ。

私も追われている身でいつこの場所がバレるか分からないの。このまま怯えて私はここで人生を終えるのは嫌なの。ユーマならもしかしたら教団を潰してくれるかもしれない。あなたが強くなるのを手伝ってあげるわ」


俺は自分の胸を見た。見ていて少し不安になる真紅の紋章のような烙印がそこにあり、烙印には星が一つついていた。おそらく崖から落ちる際に発生した、あの激痛の正体はこれだったんだろう。


俺の戦いは、今、孤独な逃亡から、歴史的な反逆の戦いへと変わりつつあった。


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