第4話:絶望と概念スキル
猛烈な睡魔に負け、俺は枝の上で深く眠り込んだ。キノコを食ったという安心感と、徹夜の疲労が俺の意識を闇の底へと引きずり込んだ。
目が覚めたのは、夜明け前。まだ薄暗い時間帯だった。
(まずい、寝すぎたか。追っ手が来るかもしれない。より遠くに逃げなければ。川を探して下流に下っていけばどこかのとかに行き当たるかもしれない。まずは川を探そう)
俺は大きな木を探し、なんとかよじ登って川を探してみたが見つからなかった。
とりあえずまだ元々登った山は見えるので山とは逆方向に進むことにした。
(目標物もなく、森の中をただひたすらに進むのマジできついな。)
モンスターも複数体見つけたが、隠れながら進んでいたこともありなんとか戦闘にはならず2時間ほど森の中を進んだところで断崖にたどり着いた。断崖は遮るものがなく風が強く吹いており、俺は恐怖から四つん這いになりながら断崖の下を覗いてみたが底は見えず、落ちたら確実に死ぬだろうと思える高さだった。
どうやら対岸に渡るには相当遠回りしないとしないと辿り着けないようだ。
俺は対岸に渡るため断崖沿いを歩いて行くことを決めた時、後ろから馬の足音がし、振り向くと兵士とアルフレッドの姿がそこにあった。
(強風で馬の足音が全く聞こえていなかった。。。これはまずい)
「ユーマよ、止まれ!」
俺は逃げることを諦めて、迎撃の準備に入った。
「鑑定!」
『ユリウス・アルフレッド:神聖レベリオン教団の司教。レベル40』
(レベル40!?勝てる訳ないじゃん!なんだよ、ただのデブじゃねぇのかよ!?)
俺は震える声でアルフレッドに尋ねた。
「なぜ俺をここまで執拗に狙う?!放っておいてくれないか?」
「せっかく異世界から召喚した有望な転異者を野放しにしておけぬ。なぜお前は逃げる?何不自由ない生活を保障すると言っているだろう?わしは懐が広い。今戻ると言えば今回の脱走はお咎めなしで済ませてやる。」
(そうだ、まだアルフレッド達は俺の能力を知らないんだ。砦を出る時は能力を知らせると殺されると思っていたから脱走したが、もしかしたらステータスを伝えたら見逃してくれるかもしれない)
俺はわずかな希望を胸に自身のステータスを伝えた。
(どうだ?)
アルフレッドは少し黙り込み、兵士に一言伝えた。
「殺せ」
俺は賭けに負けたのだった。
「なぜ俺を殺す?!見逃してくれていいだろ?!ただステータスの低い一般人だろ?!」
「転移は枠が決まっておる。お前が生きている限り転移者を増やすことができぬ。お前が死ねば新しい転移者を呼ぶことができる。枠をこのようなゴミに使う理由などない。この世界はレベルとステータスが全てだ。」
そう言って、アルフレッドはもう何も言うことはないと苛立たしそうにこっちを見ている。
アルフレッドから俺を殺すように指示された兵士が近づいてくる。
「鑑定!」
『神聖レベリオン教団の兵士:レベル20』
(兵士でレベル20だと?!絶対勝てない。。)
兵士がとんでもない速さで切りかかってきた。
兵士の剣はあまりの速さで見えなかったが、俺は恐怖のあまり尻餅をついたことで急所へ直撃は逃れたが肩に刃が当たった。
「ああああああー!!!」
とんでもない痛みが襲ってくる。
ステータスを見なくても分かる。俺はもうあと一撃どこに攻撃があったってもHPが0になりおそらく死ぬ。
逃げなくては、でも逃げる先がない。
(どうすれば、どうすれば、どうすれば良い。。)
俺は痛みのあまり気を失いそうになるのをなんとか踏みとどまり考えるが、絶望的な状況でもう打てる手がない。それでもただ殺されるわけにはいかない。
「回復魔法!!火魔法!!」
俺は自身に回復魔法を使ったが、少し暖かくなる程度で明確な効果は現れなかった。
そして火魔法も火花が出ただけだった。
(なんだよ、これ。。。なんで何も回復しないんだよ。なんで何も攻撃できる魔法がないんだよ。なんで俺はこいつらの都合で転移させられて、こいつらの都合で殺されなきゃならないんだ?なんで俺は砦の3階から飛び降りて、痛い目に遭って、ゴブリンなんかと戦い、徹夜で走り続けて、綺麗かどうかも分からない水を飲み、よくわからないキノコを食べなくてはいけないんだ?なんでだ?レベルとステータスが全て?なんだよそれ、なんでそんなもので俺は殺されなくてはいけないんだ?こいつらなんだ?なんでこいつらに殺されなきゃいけない?悔しい、悔しい、悔しい、悔しい!!絶対こいつらに殺されるのだけは嫌だ!!!なんで俺のレベルとステータスはカスなんだよ!なんだよ、このヘボスキルは!こんなスキル消えてしまえ!!!!!!)
【緊急警告:システムエラー発生】
【スキル『火魔法Lv1』を生贄としました】
【スキル『回復魔法Lv1』から経験値を抜き取りデグレードと純粋化。概念を抽出します】
【スキル『回復魔法Lv1』がシステムから離脱しました】
【概念スキル:刹那の停滞Lv.0を覚えました】
【代償として、肉体に『異端の烙印』が刻まれました】
「エターナル・モーメント!」
その瞬間、世界が停止した。
刹那の時間の中、俺は直感に従い底の見えない断崖に飛び込んだ。




