04_稀代の悪女と聖女と子爵令嬢(3)
次に目覚めたとき、フィリスは、レザーク王国の片田舎に領地をもつ、コッド子爵家の娘として、三度目の生を受けていた。
そして物心ついた頃から、稀代の悪女という汚名を着せられ処刑された第一王女だった前々世や、命尽きるまで身を捧げ続けた聖女だった前世のことを、徐々に思い出す。
前世から、また三百年が経っていた。
いったいいつになったら、この悪夢から目が覚めるのか……。
フィリスは終わりのないはじまりに、幼い頃から、すでに人生を投げ出しそうになっていた。
しかし両親は、幼い頃から無邪気さとは無縁の、なかば達観しているような娘のフィリスに対して、あふれんばかりの愛情を注いだ。
子爵家は、先代の当主が身の程をわきまえずに手を出した事業が失敗して、多額の借金を抱えてしまい、困窮する一方だった。
貴族とは言えないほど貧しい暮らしで、料理のできる家政婦をひとり雇うのも精いっぱいの暮らしだったが、はじめて注がれる見返りのない無償の愛に、フィリスはしあわせを感じはじめていた。
そしてささやかながらも穏やかな暮らしは、フィリスを徐々に癒した。
成長し、字が読めるようになったフィリスは、過去の歴史を調べた。
聖女として生を終えたあとのことが、気になったからだ。
だが突きつけられた現実に、体が小刻みに震えた。
聖女だった前世のフィリスが亡くなった年の翌年、原因不明の疫病が王国を襲い、民の四割にものぼる死者が出たという。なんとか国が持ち堪えられたのは、その時代の王族や貴族諸侯、医師らが力を尽くしたからだと記されていた。
偶然といえば、それまでかもしれない。
しかし王国の歴史書に記されるほどの大きな転機が、いずれも過去のフィリスの死をきっかけとするように起こっていることに、言い知れぬ恐怖を感じた。
偶然の一致ならいい、でもそうでなかったら──?
フィリスは、震える指先で、そっと歴史書をなぞる。
前々世は、王国の第一王女で、前世は、聖女という立場。
立場だけで見れば、レザーク王国の中では、いずれも高い位にいたと言えるだろう。
(だからこそ、その死が少なからず、国の行く末に影響を及ぼした──?)
わからない、とフィリスは首を横に振る。
わからないことだらけだが、間違いなく言えるのは、自分は二度死に、その記憶をもって、今世を生きているということだ。
そして、一抹の不安を覚えるのは『ミーシェ』の存在……。
フィリスは、自分をやさしく見つめてくれる両親に抱きついた。
(王国が、三度目の悲劇に見舞われることがありませんように……、もう二度と、ミーシェの存在を感じることがありませんように……)
今世こそは、平穏に暮らしたい──。
幼いフィリスは、固く心に誓ったのだった──。
次話で時間軸が現在に戻ります!
(そのため、ちょっと短いですが、ここで話を区切ってます)
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