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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない 作者:北部九州在住

豊芸死闘またの名を因果応報編

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香春岳城攻防戦 その4

タイトル再変更。
本当に申し訳ないが、チート爺の怖さはこっちの方が面白いので話そのものを変えた。
 動向が怪しい連中二千を戸代山に送った翌日に俺たちも出陣する。
 その際に、部隊を再編成してこうなった。

 本陣
  大友鎮成                  (篠原長秀・石川五右衛門)
   佐伯鎮忠    馬廻       五百
   有明      御陣女郎     五百  (明月・小少将・政千代・井筒女之助・小夜)
    田原お蝶   田原家郎党    五百  (実際の指揮は如法寺親並)
   柳生宗厳    雑賀衆      五百
   上泉信綱    根来衆      五百

 陣代
  大鶴宗秋     宇和島大友家直臣 五百
   鹿子木鎮有   旧菊池家郎党   三百
   内空閑鎮房   旧菊池家郎党   三百

 先陣
  吉弘鎮理     吉弘家郎党    五百
   城戸直盛    宇都宮家郎党   五百
   土居清良    西園寺家郎党   五百
    桜井武蔵   浪人衆      三百
   千手惟隆    千手家郎党    百


 合計               五千五百


 合戦指揮は基本大鶴宗秋にぶん投げる為、俺たちは後詰として部隊を投入するか退却するかだけ考えればいい、いつものスタイルである。 
 その代わり、先陣には対吉川元春向けに吉弘鎮理を置いて暴れてもらう。
 香春岳城にいる兵は千数百、信頼できない兵達が寝返らなかったらそれに二千プラスで一万届くかどうか。
 こっちにやってきている吉川元春相手に十二分に戦えるが、小早川隆景がこっちにこられたら劣勢になる兵力だ。
 仲哀峠から香春岳城に入る場合、余裕を見て二日。
 今回は馬ヶ岳城に一泊する事になる。
 かつて、この道を通って門司合戦の祝いを言いに大友宗麟の居る豊前松山城に行ったのを思い出す。

「よくぞ参られました!
 出陣前ゆえささやかなれど宴を用意致しましたぞ!
 僅かな滞在の間なれど、寛いでくだされ」

 この城は大友家直轄の城の一つであり、香春岳城と同じく門司合戦にて激しい争奪戦の上奪い取ったものだ。
 城主は高田鎮孝。
 豊後国高田城が本拠の一族で下り衆と呼ばれる譜代格の家だが、先代・先々代・さらにその前と当主三代を大内戦で討ち死にで失っている武闘派一族で、先々代がこの馬ヶ岳城攻めの先陣、先代が大友家の危機だった勢場ケ原合戦というのだから武功もすごいものがある。
 その武功に応えるために、大友家は豊前統治の要の一つであるこの城を彼に任せているのだろう。

「ああ。
 くつろがせて貰おう。
 だが、今は戦前で少し軍議を開いておきたい。
 空いている部屋を貸してもらえるか?」

「はっ。
 城の広間をお使いくだされ!
 よろしければ、我らもこの城の兵五百を持って参陣したいのですが?」

 今までの勝手働き連中と微妙に空気が違うのは、戦場が近場で領地が荒れるからである。
 かといって武名というものがあるから参陣を申し出ないと舐められかねない末法の世。戦国時代。

「いや。
 この城を守る事こそが武功と思ってくだされ。
 我らが敗れるならば、次はこの城ですぞ」

「かたじけない。
 八郎様の信頼に応えるためにも、この城は守ってみせましょうぞ!」

 高田鎮孝も参加しての軍議だが、出てきた報告は頭を抱えるものばかりだった。
 間者働きで広範囲で負けているから、とにかく情報が集まらない。 

「間者は半分もやられたか……」
「地の利は向こうにあり、大友への感情も複雑。
 むしろ、よく残った方ではと」

 呆然とする大鶴宗秋に報告する果心の表情も暗い。
 豊後との街道筋の掃除を命じた間者達の半分が帰らず。
 そういう場合の間者の末路はろくでもない。
 軽く目を閉じて彼らに黙祷した上で、他の報告を聞く。

「船便が生きているのがありがたいわ。
 府内への文は早船を用意した方が良いかもしれませぬ」

 御陣女郎なんて抱えたために、必然的に兵站担当になったお蝶が安堵の息で命綱の存在を提示する。
 軍の移動は船を握っているかどうかで話が格段に変わるからだ。

「何隻使える?」
「豊前松山城の多胡辰敬殿が提供してくれているのが弁財船四隻。
 簑島城に停泊しているのが弁財船二隻。
 うちがなんとか確保したのが弁財船二隻と小早船六隻」

 俺の質問にお蝶が答え、更に高田鎮孝が乗っかる。
 彼も本拠地である豊後国高田とこことの連絡に船を使っているのだろう。

「当家も小早四隻と弁財船二隻があります。
 お役に立てるならば、遠慮なく使っていただきたい」

「ならばお言葉に甘えるとしましょう。
 宇佐八幡の動向不穏。彦山が毛利についた。
 これを文にしますので、至急早船で送っていただきたい」

 俺の言葉に真っ青になる高田鎮孝。
 宇佐八幡宮と英彦山が組んで毛利と繋がるなんて悪夢以外の何物でも無いからだ。
 もちろん、他の諸将で青くなっているのが佐伯鎮忠と如法寺親並とお蝶と政千代ぐらいのがなんとなく面白い。
 いかにうちがよそ者を入れてきたかよく分かったからだ。
 なお、意味をこの面子の中で一番よく分かってて、背後が塞がれるに等しい一言を聞いても吉弘鎮理の顔色は変わっていないのに素直に感心する。
 俺と違って肝が座っている。

「八郎様。
 この事は簑島城の木付様には……?」

「もちろん知らせる。
 早馬も用意しておいてくれ。
 正直、ここと簑島城の間すら危ういかもしれん」

 高田鎮孝に念を押す俺だが、間者働きの敗北の為にほぼ目と耳を塞がれつつあった。
 それぐらい、現状がやばいという事を諸将はやっと理解したらしい。

「戸代山に向かわせた連中が陣を敷いて、敵が迂回しない事を確認した上で仲哀峠を越える。
 先陣は吉弘鎮理。
 道中の案内に千手惟隆率いる千手一族をつけるからうまく使え」

「はっ」

 ただ一言。
 低い声で返事をしただけなのだが、それだけで場の空気が安堵する。
 大友家において、それほど吉弘一族というのは武闘派なのである。
 なお、同じぐらい武闘派なのがこの高田家なので、地味に張り合っているふしがあるのだが見なかった事にしよう。

「先陣はそのまま放棄されている障子ヶ岳城を抑えた上で香春岳城との連絡を確保しろ。
 俺と大鶴宗秋の手勢は香春岳城に入城する。
 その後は、向こうにつき次第だな。
 毛利軍の詳細はどうなっている?」

 それに答えてくれたのは末席に座っていた千手惟隆である。

「大将は吉川元春。
 旗からの確認になりますが、丸に一つ柏、三つ巴、寄り掛目結、三つ撫子あたりは見かけました」

「丸に一つ柏は宗像家、三つ巴は麻生家だから麻生隆実、寄り掛目結は筑紫家、三つ撫子は秋月家か」

 この辺りは大鶴宗秋が詳しく、旗の家紋から出てきている家をつらつらと答えてゆく。
 大将が討ち取られても、家が滅んでも元の家臣がその家紋を使う事はよくあるのでこういう判別もできる。
 三つ巴は小早川隆景の可能性もあるのだが、言うこともあるまい。
 だが、その大鶴宗秋も千手惟隆の次の報告に言いよどむ。

「それと並び鷹の羽に十字の紋も確認しました」

「十字は島津と言いたい所だが、島津がこんな所にいる必要もない。
 肥後のキリシタン勢が何故か、高橋鑑種の所に保護された報告は聞いている。
 多分それだ。
 で、そこから考えると、並び鷹の羽は一つしか考えられんだろう?」

 この時の俺の顔が見えなかった事を感謝する。
 だが、それを口に出した時の抑揚のない声は忘れられそうになかった。

「肥後国の名家、菊池家本家のみが使う旗だ。
 だとすれば、兄上。
 菊池則直の旗だよ」



 軍議も終わり、俺はふらりと今川のほとりに出る。
 さすがに身の安全を考えて、柳生宗厳と馬廻旗持と馬廻の十数騎を連れてきているのだが。
 なお、当たり前のように有明も居るし、その護衛と称して男の娘も居たりする。

「何なんだろうなぁ。
 どうも違和感があるんだよなぁ……」

 俺がぼやくのを有明が聞きとめて尋ねる。
 この今川沿いを動向が怪しい連中二千が戸代山目指して進んでいるはずだ。

「何?
 良かったら話してみなさいよ。
 聞いてあげるから」

 もちろん有明にこの手の話がわかる訳がないが、話すことによって気持ちが楽になるのも事実。
 博多の太夫という頂点に居た有明はこの手の聞き上手でもあったのだ。

「何かひっかかるんだよなぁ。
 何かを忘れているというか、致命的な間違いをやろうとしているというか……」

 日も暮れかけて、すでに辺りは茜色。
 そんな河原をのんびりと駆けて気分転換というのが目的だった。

「分からないなりに言うけれども、そういう時の勘って馬鹿にならないのよね。
 で、失敗した後で思い出すのよ。
 ああ。あの時の違和感はこれだったのかって」

「縁起でもない事を言わないでくれ。
 今度戰うのは毛利軍の名将、吉川元春なん……」

「どうしたの?八郎。
 私の顔をまじまじと見て」

 茜色の有明があの落城時の炎の景色とかぶる。
 思い出せ。
 有明の父親だった小原鑑元はどうして高橋鑑種に滅ぼされた?
 誰に考えを誘導させられた?
 それは欠けていたパズルの一つ。
 けど、答えにはまだ届かない。

(「最初から。御曹司は早く来過ぎました」)

 声が聞こえた。
 有明の仇だった男の。
 俺が首を取らねばならない男の。
 あの時、俺は何を失敗した?
 状況にうろたえて、何も考えずに突っ込んだ結果が竜造寺の一人勝ちだ。
 鼓動が早くなり、汗が吹き出る俺が辺りを見渡そうとして、旗持ちと目があったのは運命なのか、過去の精算なのか。
 河原でのあの決闘時に、あいつが口にした言葉がフラッシュバックする。 


(「……てめぇの剣、戦う前に勝っているからだ……」)


 同じ事をした将が居た。
 俺がした事を大々的に、しかも完璧にやって見せた男の名前を毛利元就という。
 その男が成し遂げた偉業の名前は厳島合戦。

 時が止まる。
 悪寒が止まらない。
 汗が吹き出る。
 吐く息が荒くなるのが分かる。

「はは。
 ここまでするか。
 毛利元就」

 なんとか言葉を紡ぎだす。
 茜色の景色のなんと美しい事か。
 その男の紡ぎ出す謀略のなんと恐ろしくて、美しい事か 



 ここが運命の逢魔時。



「井筒女之助。
 ここで宴を開くという名目で小夜をこっちに連れてこい。
 それと、大鶴宗秋と吉弘鎮理もだ。
 あくまで隠密に頼む」

「承知」

 俺の真顔に男の娘も真顔で駆けてゆく。
 それを見届けて、今度は柳生宗厳に命じる。

「聞いてのとおりだ。
 陣幕を張ってくれ。
 先に俺が告げた三人以外の人間が来ても誰も入れるな」

 三人が来るまでの時間が偉く長く感じる。
 前提条件が完全に間違っていた。
 毛利軍が香春岳城を攻めたのは、攻勢防禦のためではなかった。
 俺を香春岳城に入れるため、俺の首を狙うためだった。
 だからこそ、最後の最後まで俺が香春岳城に入る仲哀峠のルートを塞いでいない。
 三人が来るまでの時間、半刻も経っていないが恐ろしく長く感じた。
 最初に大鶴宗秋が、次に吉弘鎮理がやってきて、最後に男の娘と共に小夜がやってくる。

「大事な事だ。
 嘘偽り無く答えてくれ」

 俺の真剣な表情に小夜も顔を強張らせる。
 だが、彼女はまだ小娘だからこそ、その質問の意味が良くわからない。

「千手惟隆殿に出会ったのは何時だ?」

 小夜は首をかしげながら答える。
 その意味を理解せずに。嘘偽り無く。

「はい。
 出会ったのは、八郎様が簑島城にて会った時がはじめてでございます」

と。
高田鎮孝 たかだ しげたか
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