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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない 作者:北部九州在住

宇和島大友家内政編 永禄十年(1567年) 春

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外交の時間 その5

 これを外交と言っていいのか微妙な所だが、俺にとってはここをクリアしないと畿内に行けないので外交という形にする。
 大友家本家。府内。大友館。
 ここでの意思決定に今までの成果の全てを出さなけねばならないのだから。

 子供が出来てから三ヶ月後。
 俺達は船で府内に行き雄城屋敷に入る。
 子供の顔を見せるという名目で来ているので、二人の子供も府内に連れてきている。
 笑顔の有明は、佳月を雄城治景に渡す。

「孫ができたか。
 嬉しい限りよ」

 雄城治景は血の繋がっていない娘をあやす。
 いずれ彼女は雄城一族の息子と結ばれて正式に雄城家が一門衆となる大切な娘なのだ。
 それを除いても、老人にとって赤子というのは嬉しいものなのだ。

「義父上の家との繋がり深められて何より」

 俺の言葉に雄城治景は笑顔を隠さない。
 少なくとも大神一族としての粛清はこれで大分薄まったからだ。
 その分、大友一族としての粛清の確率が上がったとも言うが。

「佳月は宇和島に残して、明月に預けることになると思います。
 彼女は私と違って、元が武家の娘。
 しっかりと育ててくれるでしょう。
 で、乳母を雄城の家から出していただきたいのですが」

 この時代の武家は子供ができると乳母がつく。
 明月は乳母ではないが、奥の差配は彼女が居ないと回らない。
 その為、畿内行きにおいて明月は宇和島に置いていって、奥の差配に専念させることに。
 乳が出ない明月の代わりに乳母を雄城からもらう事で一門衆としての雄城家の繋がりを強化するのが目的である。

「うむ。
 それは構わぬが、お主はついて行くつもりなのか?」

 スタイリッシュではないが、有明の姿は俺が教えた花魁太夫姿である。
 経産婦になってえらく色気が増した気がするがここで言う事でもあるまい。

「八郎にどこまでもついてゆく。
 それが私の数少ない願いですから」

 畿内の戦がどれぐらいかかるか分からない以上それは当然の願いだろうし、俺もそれを無視する事はしたくなかった。
 なお、戦場では相変わらずスタイリッシュになるらしい。
 当人いわく、

「結局私は、姫じゃなくて遊女なのよね。
 だから八郎には本当の私を見せ続けたいの」

らしい。
 女ってのは男に見られることで美しくなる。
 だからこそ、有明を死なさないように俺は動かないといけない。 
 談笑しながら俺につけられた枷の存在を感じるが、それは決して不快ではなかった。

「存分に暴れてくだされ。
 府内での色々はそれがしがなんとかしましょうて」

 退いたりとは言え、大神一族の元加判衆の政治力はあなどれない。
 これに田原一族の支援も見込めるのだ。
 だからこそ粛清というフラグもあるが、今はそれを実行するほど大友家は追い込まれていない。
 畿内情勢と九州で勃発するだろう謀反を考えたら府内での長居はあまりしたくはなかった。

「義父上のお力、あてにしておりますぞ」

 俺はただ頭を下げることで、この老臣の恩義に報いた。



「おお。
 孫よ。
 我が田原の家を継ぐのはお主ぞ」

 厳密には孫ではないのだが、孫という設定なので田原親宏の言葉に俺は何も言わない。
 田原親宏には娘が一人居るが、多分塩一丸が成長したら彼が田原家を継ぐことになるのだろう。
 国東半島に絶大な影響力を持ち大友本家から警戒されていた田原家が、許されて大友一族として振る舞えるのだ。
 これも俺が成した政治的得点の一つだろう。
 ここでお蝶と塩一丸は府内に残り、田原屋敷にて育成される。

「義父上。
 どうかお蝶と塩一丸をお願いいたします」

 俺の畿内行きについては、既に田原親宏には話している。
 九州で起こるだろう乱において下手に残ると大友本家から粛清されるというのは理解してくれているからだ。

「また無事に帰ってきてくだされ。
 孫は多ければ多いほど嬉しいですからな」

「いやですわ。
 父上ったら」

 打ち掛け姿で母親ぶっているお蝶は有明とちがってスタイリッシュ女武者が嘘みたいに振る舞っている。
 まぁ、彼女にとってはこっちの方が地である。
 乳母を含めた色々も田原家の全面支援が期待できた。

「ええ。
 きっと帰ってきますとも」

 その言葉が嘘にならないように。
 俺は口に出して己に更に枷をはめた。  



 その夜。
 厳重な警戒の中、来てもらったのは四人である。

 神屋紹策
 島井茂勝
 仲屋乾通
 臼杵鑑速

 九州の豪商三人に経済が分かる加判衆一人。
 田原親宏は身内扱いなので、今回は遠慮してもらった。
 その四人の前にほかほかの焼き芋と唐芋が入った団子汁が湯気を立てている。

「食べてみてくれ。
 これが大陸から持ってきた唐芋だ」

 四人は興味津々という感じで食べる。
 正直、味なんてわかっていないのだろう。
 こいつが救荒食物として優れているというその一点のみ。
 その内々のお披露目なのだ。

「で、御曹司はこれをどのように扱うので?」

 毛利家と繋がっている神屋紹策が恐る恐る尋ねる。
 毛利家にとってこの唐芋の持つ意味が分からない訳がないからだ。
 それを見越して、俺はわざとらしく用意していた回答を告げる。

「何も」

「何も……ですか?」

 大友側博多商人の代表である島井茂勝が怪訝そうな声をあげる。
 これをどのように使うつもりなのか、俺の奥底の答えを知って、己の利益にしたいと商人たちは顔色を隠さない。
 そんな中、臼杵鑑速だけが表情を隠して淡々と唐芋料理を食べていた。

「俺ですら、大陸の倭寇に伝がある者を使って一年探した品物だ。
 同じことを誰かがする場合、それぐらいの時間がかかるだろうよ。
 で、山羊と違って持ってくるだけでなく、こいつは育てないといけない」

 最短の俺ですらそれぐらいはかかると言っているのだ。
 今すぐ間に合わない品物である事は四人とも納得したのを見て、俺は話を続ける。

「で、宇和島と国東半島の田原領に試験的に畑を作ることにしている。
 ここから栽培に一年だ。
 実用が確認できて、苗を増やして普及するのに五年はかかるだろうな」

 にやりと俺は笑う。
 ある意味賭けではあるが、その賭けは外れないと俺は確信していた。

「つまり、毛利元就の寿命が尽きるほうが早いんだよ。
 こいつは」

 歴史が変わっているので長生きする可能性もあるが、既に老人で病を患っている彼にとって五年は長すぎる。
 ここで重要なのは、毛利元就というより、その周りの人間が持つイメージだ。

「神屋紹策。
 あれがあと五年持つ方に賭けるなら構わんぞ」

「……」

 神屋紹策の沈黙が全てを物語っていた。
 もちろん、それで終わるならば後の世にチート爺と恐れられる訳がない。

「尼子が滅び、浦上家が内紛で揉めている現在、毛利は自由に攻め手を選ぶことができる。
 大内家の後継として中国地方の国人衆を取りまとめている毛利家にとって、大内家の悲願である博多奪還は避けては通れない道だ。
 ついでに門司城合戦の遺恨もあるしな。
 攻めてくるのは間違いがない。
 さて、そんな時に、毛利にとって目の前になる国東半島にこんな物が育てられている。
 あれは迷わないが、下は大いに迷うだろうな」

 博多を攻めるならば、豊前と筑前を抑える必要がある。
 だが、この唐芋を奪取する場合、豊後侵攻まで視野に入れないといけなくなる。
 そして、その際に相手をするのは孫ができて喜び、加判衆にまで入れた勢場ヶ原合戦の英雄こと田原親宏だ。
 片手間で攻めたら大火傷は間違いない。
 石橋を叩いて渡る毛利元就は迷わないだろうが、その下は間違いなく迷う。
 特に優秀な毛利両川に支えられる後継者である毛利義元は。 

「まるで知られても構わぬような口ぶりですな」

 仲屋乾通が信じられないような顔で俺の方を見る。
 安心しろ。
 俺はそんな目を南予侵攻であのチート爺からたっぷり味わった。

「ああ。
 むしろ広めてくれた方が助かる。
 ついでに言うと、俺が畿内に兵を率いる事もな」

 やっている事は、南予戦役の毛利元就の手の亜種だ。
 攻める前にSSSレアの唐芋の情報を流して、毛利家の戦略に迷いを生じさせる。
 で、俺が兵を率いて畿内に上がる事を知れば、幕府朝廷関係での大友家の巻き返しが発生すると毛利元就は読むから何だかの手を打つ必要が出る。
 実際に攻め込めば、南予戦線がうざく邪魔するだろうし、唐芋のある国東半島は魅力的な餌として毛利家諸将に映り続けるだろう。
 で、博多がらみの本隊は日田経由の筑後川を使って博多を直撃できる。
 俺には毛利元就よろしく策を連鎖させる事なんてできない。
 だからこそ、手札を全て晒して相手のリソースを奪うことに全力を尽くす。
 相手のリソース--毛利元就の寿命--が残り少ない事を確信して。
 何よりも素晴らしいのは、こちらの手を晒すことで、大友家の威信が上がるという事だ。

「乱世に悩まれたお屋形様は出家し徳を積むために、それがしに民に役に立つ作物を探すようにお命じになられた。
 その功徳によってこうして唐芋を手にし、それを仏の里である豊後で育てることができた。
 大友家には御仏の加護がついている。
 いかがですかな?臼杵殿」

 大友家内部で密かに溜まっているキリスト教不審もこれである程度は払拭できるだろう。
 そして、こういう形で功績を出した以上、俺の畿内行きを大友家は拒否しにくくなる。
 そこまで悟った臼杵鑑速はため息をただ一息だけついた。

「絶対に畿内より帰ってきてくだされ。
 八郎様は大友家にとって大切なお方。
 貴方様がおられる旗は杏葉の旗という事をお忘れにならぬように」

 実質的に、俺の畿内行きが決まった瞬間である。
 翌日、加判衆の評定において、『幕府への使者として』俺の畿内行きは問題なく了承された。



「畿内に行くか」
「はい。
 果たさねばならぬ約束があります」

 府内館の庭にて、大友宗麟と俺は二人きりで話す。
 少し離れた所で田原親賢がこちらを見ているが、声は聞こえない。
 池で泳ぐ鯉が跳ねて水面が揺れた。

「色々と手を尽くした事は田原と臼杵から聞いた。
 それでも離れなければ殺されかねんこの家の闇をお前はどう見た?」

 水面に映っていた大友宗麟の顔が波で歪む。
 俺の息子の名前が塩一丸と聞いた時ですら彼の顔色は変わらなかったが、この歪んだ水面の顔が本当なのではと俺は思いたかったのかもしれない。

「つくづく大名になんぞなるものではないと」
「違いない」

 俺と大友宗麟は苦笑する。
 お互いその顔は実にわざとらしい。
 俺は宇和島大友家の大名であり、大友宗麟は俺を含めた九州六カ国の主なのだから。
 大友宗麟が手を振ると、田原親賢が合図をし一人の娘を連れてくる。
 その娘の後ろに居たのは、加判衆の一人戸次鑑連だった。

「死ぬことは許さぬ。
 だからこちらからも枷をつけておこう。
 連れてゆくといい」

 大友宗麟の言葉の後に娘が自己紹介をする。
 なんとなく後ろの将で想像はついていたが、自己紹介でそれを確信した。

「戸次鑑連が娘、政千代と申します。
 御曹司の女中としてついて行く所存。
 よろしくお願いしいたします」
仲屋乾通がらみの修正が終わっていなけど、先には進めるスタイル。


戸次政千代 べっき まさちよ
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