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三十話

隆太との試合に負けた彰は相手が悪かっただけだと考えていた。上級生でなかったら自分は負けなかったはずだと根拠のない自信を覗かしていた。大志に負けた烈音(れおん)はギフトを発現されないで負けた完敗であったため自分の能力を過信し過ぎたと反省していた。確かに好戦的な性格ではあるが、事実を目の前に叩きつけられれば間違いに気付くことのできる素直さは烈音にはあった。


このときから少しずつ彰とは距離をとるようになる。確かに今は大志にギフトを発現させることもできなかったかも知れない。次に戦うときにも手も足もでないかもしれないだが少しずつでも精進していけば必ず追い付く日が来るかもしれない。放課後は普段なら彰たちと一緒に過ごしている時間だが、自己修練の時間に充てるようになる。彼は元々、才能はある方なのだからあとは導く人と巡りあうだけであう。警備として巡回していた椎名二等特尉と出会い彼に師事するようになる。


要に頼まれたとあっては元部下である椎名は断ることなどできる訳がない。彼だって要に命を救われた一人であり憧れを抱いているのだから。厳しい特訓となり力をつける烈音。初めに師事するにあたって誓約させられたことは弱き者の為に力を振るうこと。この誓いを破った時点で士官学校への推薦は取り消されることになる。校長が許可しないし、同じ志を持てない人間は自衛官として使いものにならないからだ。それなら幹部たる資格なしと判断されて防衛大学に入るか平隊員として入隊して出世しないまま退官することになるだろう。


特殊部隊員が演武をするのも将来有望な生徒に声を掛け国防の要として役立ってもらうためである。烈音が入学する頃には椎名は分隊長になっているはずだし、ヤタガラスの場合は平隊員でも一名の生徒を推薦することが出来るため問題ない。推薦枠を使わない者や三幕のどこに入りたいか決まっていないものは辞退することもあるため、推薦枠は二~三枠ぐらいしか毎年、使用されることはない。高度な知識と愛国心を必要とするため一年に入学するのは多くても十五名ほどである。


選抜に落ちたものは、他の省庁へ入庁するか、一般企業へと就職する。中には後天性ギフトホルダーとなり、中途入学が認められるケースはあるが、本人が十五歳以上で曹候補生以上の資格を持っていない場合は一階級特進で済まされてしまうことが多い。なのでキブトホルダーの全てが三等特尉になれるわけではない。ノーマルの通う高校に進学し、大学に進学するものもいる。ギフトホルダーでも敢えて超能力開発幼年学校に入学させないで普通の小学校に行かせる親もいる。


成立過程からは考えられないだろうが、GIDを装着してさえいれば、学校側は拒否できない。誘拐の可能性が低いと国が判断すれば、親の考え次第ではどちらでも選択できるようにはなっている。


平和呆けしていると言われる日本の安全神話は続いている。混乱期に有志が積極的にギフト能力を国のために役立てようとし、犯罪を犯したギフトホルダーを同じキブトホルだーが捕まえて国家機関に引き渡したという経緯があるのは伊達ではないということだろう。烈音がどうなるのかは分からないが本人次第でどうにでもなる。まだ一年生で考える時間も鍛える時間はいくらでもあるのだ。現実を見れていない彰よりはましなのは間違いない。


いよいよ大志と隆太の試合である。一年生でありながら将来を有望視されている大志と三年生、首席である隆太の戦いに自衛隊関係者は注目している。身体強化にも段階があり、五感を強化するのが一般的である。隆太はギフトの特性上、視覚と反射神経のみしか強化ができないが、それで充分である。極めれば父、大悟の様に一戦級で活躍できるのは既に証明されている。流石に至近距離で銃弾を弾くことができるまでになるのは才能と時間が必要ではあるが。


大志は試合開始と同時に身体強化のギフトを発現する。全力でやらなければ隆太には勝てない。大志のギフトには相応のリバウンドもあるため例え隆太に勝つことができでも四回戦を戦うだけの力は残らないだろう。隆太は今日一番の強敵との対峙で興奮していた。大志とは何度が本気で手合わせをしたことがあるが、隆太が勝ち越している。年上としての意地があったことは否定できない。一戦に全力を出してしまえば次の敵と戦う時に自分の身すら護れなくなる。民間人を護るために存在する自衛官がそんなことでは、信頼を裏切ることになると口を酸っぱくされて言われてきた。当然、時には自分の命を懸けてでも戦うことを義務付けられる。敵の精鋭部隊と戦うことになるヤタガラス隊員を目指すのであれば相手の力量に合わせて戦闘をし、体力の消費を抑えることが重要となる。


同時に前へ出て攻撃する大志と隆太。大志の攻撃は頭を掠めて僅かなダメージしか与えることしかできなかったが、隆太の攻撃はガラ空きとなった脇へと当たる。最初の攻防では隆太が優勢となったが、大志の攻撃が頭を掠めたことでヘッドギアがズレ視界を遮ってしまう。眼の良い隆太がギフトを発現させたら攻撃を当てるのも難しくなる。視界を奪えるなら序盤で狙っていこうと考えていた大志の思惑道理となった。


時任もヘッドギアがずれたことで直すように指示を出すか迷うところだ。本来の用途通りに頭を保護する役割は果たしている。しかも大志は最初の攻撃を敢えて受けてまでずらしに行っている。二人の試合に興味を持っていた時任はそのまま試合を続行させることにする。柔道の試合でも道着がはだけても試合を止めないことは良くある。安全性が重要視される試合とはいえ、プロテクターの上からの攻撃しか認めていないため怪我することはないだろうと判断した。


視界を少し塞がれた程度で動揺する様な隆太ではないが、攻撃を当てたとはいえ、ギフトを発現する上で、重要な要素を占める視覚を制限されたことは痛い。直すこともできるが、大志は視線を外させることが目的であり外した瞬間にどんな攻撃をされるかは賭けになる。簡単に防げるような攻撃はしてこないだろうし、ダメージを覚悟すれば耐えられないことはないが、試合形式がライフゼロなので時間の経過とともに不利になる。


防御していても確実にライフゲージが減っていくので相手の攻撃を上手く捌きつつ会心の一撃を与える必要がある。牽制だけで最初の攻撃以降は防御に徹する大志。お互いが柔術を使うので、袖や襟をとられないように気をつけながら防御している。隆太も虚実を混ぜて攻撃していたが技を掛けようとすると必ずかわされる。隆太は三回戦まで相手の力量を測るかのように試合展開をしてきた。同じ一年生でも彰の攻撃は稚拙そのものだし、自分の能力にまだ振り回されていると言った感じがした。本格的にギフト使用許可がでてまだ一年が経っていないので当たり前だが、大志を相手にしていることでそこを失念している隆太である。


未成年者のギフト使用は成人したギフトホルダーと比べると極端に制限されると言っても過言ではない。強力な能力は思わぬ災いを本人・周囲にばら撒く。ギフト訓練機関として国に認可を受けている施設および、訓練教官の資格を持つ者の前でないと基本は発現できない。校内には最新鋭のGIDが設置され、寮では、個人携帯用のGIDの着用を義務付けられる。個人用にカスタマイズされ、脳の異常やギフトが暴走した時に外部から強制的に止める為の措置だ。隆太も風呂や就寝する時以外は身につけている。


二分ほど経った頃だろうか、攻めあぐねた隆太は一度攻撃を止める。大志はこの隙に強化を一段階上げる。筋力強化はあまり使いたくなかったが、このままでは一方的に攻撃され先にライフがゼロになるだろうと言う判断からだった。ギアが上がったことを察知した隆太は攻撃を再開する。リスクを受け入れて本格的に攻撃してくるはずの大志の攻撃を捌くために隆太も全力をだす。お互い七割ぐらい残っていたライフゲージが加速的に減少する。手数は隆太の方が多いが、一撃は大志の方が重い。


優勝候補とされている隆太に対して善戦する一年生の大志。大志の攻撃は諸刃の剣でもある。自身の筋肉線維を少しずつ傷つけながら戦闘して初めて隆太と対等になっているのだ。隆太は技で対抗し、力を受け流しつつ攻撃をしている。今までの大志の試合展開からは考えられなかったため観客は大河の説明を欲している。大河は敢えて最低限の解説しかしていない。原理が分かっても対応できるだけの実力がないと無駄に終わるだけで、真似してほしくない典型的な試合であったからだ。


大志が全力で戦うことを一分間に限定したのも理由がある。負担を掛け過ぎるとギフトの発現を終了した時点でリバウンドが全身を襲うことになるからだ。大志が仮に全力で筋力強化のギフトを三分間発現し続けると一日は立ち上がれないくらいは全身筋肉痛になるのだ。他の身体強化系のギフトホルダーよりも強化率が高いだけのリスクは背負っているのだ。隆太は全力の大志と戦いたいと考えていた為、大志が本気で仕掛けてくるまで、力をセーブしていた。優勢なのは隆太。体格が違うと言うこともあるが普段から鍛えているので大志よりは筋力がある。そこに修業していた期間が二年長いということもあって上手く捌くことができていた。隆太のギフト発現時間は既に終了していたが、大志の癖を知っている隆太からしてみれば問題は少ない。力で押してくるならこちらは技で応戦するだけである。


大志が単純に力押しだけでくる訳もなく、柳流柔術も組み込んで攻撃をしてきている。袖を一度とられた隆太であったが何とか引き剥がすことに成功して奥襟をとって投げ飛ばす。受け身をとったことで致命的なダメージは身体的には受けていなかったが今までの攻防で大志のライフはゼロになった。勝ち名乗りを隆太は受けて試合は終了した。単純な力押しではなく技も繰り出し、評価を更にあげた大志。何とか勝てたことに安心する隆太。


「大志。結局他のギフトは使用しなかったんだな。冬休みにはまた父さん達がキャンプをするはずだからそのときは本気で戦おう。」


「隆太くん勘弁してくださいよ。リバウンドは本当にきついんですから無理ですよ」


お互いの健闘を称えあっているように見えた二人を暖かい拍手が迎える。事実上の決勝戦みたいな雰囲気が出ていたが、見応えのある試合に観客は満足していた。大志が三回戦敗退。実継が三回戦棄権という結果で初日の大会は終了した。隆太は六年生の首席に勝利し個人戦優勝という快挙を果たした。六年生以外が個人戦で優勝するのは十年ぶりであり父である大悟も喜んだのだと言う。翌日に控えたチーム戦に備えて身体を休ませる実継と大志であった。


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