一章 僕とテレポ=ラフダイヤモンド
目を開けた瞬間、周りの景色が一転する。
それはまるでイリュージョンにでもかけられているような感覚。
目的の場所へテレポートしたと言うよりは、自分はその場から動いていないで見えている風景だけが変化しているような。
これがテレポートを使い始めて暫く立った、俺の感想だ。
◇ ◇ ◇
話は一週間程前に戻るが。
俺は、部屋のエアコンの機嫌が、ずっと悪いせいで。
(買い替えるお金が無い訳ではないのだが、貧乏症の為に踏ん切りがつかないだけ)
じっとりと汗ばむ暑さの中、浅い眠りについていた。
その時、夢の中で出会った謎の少女『ジニス』に覚えのない選択を迫られた俺。
お金に関しては、死んだ両親の遺産がたんまりあったので全く興味がわかなかったが、テレポートの方は『何となく、面白そうじゃんか』と言う理由で即決定した訳っだったが。
翌日目を覚まし、あまりにハッキリと覚えている夢に対して違和感を感じつつ。
(なんでこんな夢見たんかなぁ、心の中では現実逃避したい願望があるんかいな?)
ちなみに両親は幼い頃に死に別れていて、今は六畳一間の安アパートに一人暮らしです、ハイ。
「夢が本当だったらなぁ、トイレとかに一瞬で行けるんだろうな」
物は試しとトイレの場所を視覚的に位置確認して、目を閉じてあそこに行きてぇ~と願ってみた。
次に上瞼と下瞼が別れた時、俺はトイレに居た。
「???????????ほへっ?!?!?!?!?!」
ほっほ~?リアルにテレポートしとるんかいな!?
いや、寝起きで思考能力が混乱してるのか。
はたまた白昼夢?? ナイトメア?? 精神錯乱?? 実はまだ夢の中?? まあ、ここは冷静になってもう一度試してみようではないか。
そうだな~、今度はアパートの前にあるコンビニで試してみっか、コンビニの位置を捕捉してと……。
静かに目を閉じて願ってみる。
そして、一瞬の間の後……。
「きゃ―――――――――――!! なんか変態が現れたんですけど~!!」
若い女のけたたましい叫び声に慌てて目を開けてみると――。
上半身裸で下半身はパンツ一丁のみの男がコンビニのレジの前に並んでいるようだが。
それって俺じゃんか!? 寝起きのパンツのみで、まさかコンビニへのテレポートが成功するなんて……。
運が良いの悪いのか(いや、その格好でコンビニにテレポートした自分が一番悪い気がするが)
警察を呼ばれる前に急いでその場を後にした俺は、今起こった出来事を整理していた。
ラ族の俺が悪いのか?? ―――いや論点がずれてるぞ、ジニスに会った事とテレポート能力を手に入れた事が事実だったんだな。
でも何で俺なんだ?? なんか小動物でも幼い頃に助けたんかいな? それともどっきり?
う~ん、悩んでいても始まらない! まずは学校に行こう! そして帰ったらまた考えよう! うん、そうしよう!(ただの現実逃避じゃんか)
(ちなみにこの時点では、テレポート以外の七つのおまけ能力についてはジニスから教えられていない俺だった)
◇ ◇ ◇
あっ、そうそう自己紹介がまだでしたね。
俺の名前は神子 翔威。
高校生やってます。
身長、体重およそ日本人の平均並で学校の成績は中の中、口癖は語尾に『じゃんか』。
見た目に関しては一つ一つのパーツに関してはクオリティは高いと思うのだが。
くっきり二重の目、鼻筋の通った鼻、上唇の薄い口、左の方が穴が狭い耳、左目の下の泣きぼくろ、まぬけの小足(これは見た目じゃないし)
しかし、全てが揃うとなぜか地味に……。
非常に納得いかないが、我ながら地味だと思わざるを得ない。
どこにでも居るような、いつかどっかで会った事があるような、最終的に誰にでも平凡というレッテルを貼られる結論を、自分で無理やり納得しているのかなぁ?。
かといって、女子に人気が無い訳ではない(少なくとも荒くれ者の浩二よりは……)。
毎年バレンタインに二個や三個は、チョコをもらっているし。
女の子から告白された事もあるし、(その後、その子は春香からいじめられてたけど……。)付き合った事もある!
でも、その付き合った子も春香の執拗な毒舌攻撃により俺から遠ざかっていったような……。
――――今になって思うと春香って俺の魔除けみたいだな。
まあ、そんなミスター平均野郎の(自分では平均より上だと思っている)俺がテレポートなどという非現実的な能力を手に入れた所で。
銀行強盗や、痴漢や、盗撮や、無銭飲食や、映画のタダ見や、のぞきや、警察官を後ろかぶん殴る(良い子の皆さんは真似をしないように)などの悪事を働く訳もなく。
せいぜい遅刻しそうな時などの、緊急時に使用する程度である。
(ただ、テレポートしてる時を一般人に見られると騒ぎになるだろうから極力控えてはいるけどね。)
使えるようにはなったけど、実際には使えるシーンがあまりに限られるのでお金の方が良かったかなと後悔している今日この頃の僕。




