21.ゲットだよ!
「リリー、絶対一人で出歩いたりしたらダメよ」
パトリシアがリーリエにの手を握り、もう何度目になるか分からない注意をしてくる。
学院祭から三日、後片付けも終わり、ようやくほっと一息吐く頃。
なぜかパトリシアがやたらとリーリエの心配をしている。
「パティってば、心配性ね。元々わたしは市井育ちなんだから、一人で出歩くのは普通のことなのよ」
「今までとは状況が違うじゃない」
「そんなに状況が変わってる?」
「変わってるわよ。リリーは希少な聖属性持ちな上にかわいいんだから、いつ誘拐されるか分からないわ」
何でこんなに過保護な父親みたいになっているのか分からないけれど、パトリシアのうるうるとした瞳で見つめられると、何でも頷きたくなってしまう。
「大丈夫よ。学院の外では、いつもレオナルドさんがついていてくれるから」
「そう、そうよね」
パトリシア自分に言い聞かせるように頷くと
「くれぐれも身辺に気をつけてね」
再び、リーリエの手をぎゅっと握った。
「それはそうと、カフェでの売上金を孤児院に寄付するっていう話だが」
ライハートがさりげなく、パトリシアの手をリーリエから剥がす。
「材料費だけ引いて、残りを寄付する予定だ。それでも、みんな頑張ってくれたおかげで、かなりの金額になったよ」
喋りながらも、リーリエから引き剥がしたパトリシアの手を握っている。
パトリシアがわたしをかまうのが気に入らないのかもしれないけど…
相変わらず、心狭っ!
「それなんですけど、そのお金で本や文房具を買って寄付することってできますか?」
パトリシアの手を握っているその手を白い目で見ながらも、話を進める。
「別に構わないけど、現金のがよくないか?」
「孤児院にもよると思うんですけど、現金だと何に使われるか分からないですよね。孤児院の子たちに勉強を教えてあげたいので、その為の道具を用意したいなぁと思って」
「リーリエ嬢は孤児院に行ってるのか?」
ライハートはパトリシアの手を放して、少し表情を引き締めた。
「わたしは今、教会の施設でお世話になっているんですけど、そこに併設されてる孤児院があって、休みの日に読み書きと計算を教えに行っているんです」
暇に任せて、子供たちのところに遊びに行っているという側面もあるけど、それは言うまい。
子どもたちの勉強には、道具があった方がいい。
孤児院にあるのはボロボロの本とペンが二、三本。
紙も不足してる。
ライハート殿下はこの国の王子だ。
ここはいかに勉強が大切か、プレゼンしないと。
「孤児院では余裕がなくて、勉強を教えることまではできていません。でも、子どもたちが読み書き計算ができたら、将来よい仕事につける可能性があがります」
「なるほど。仕事をするには読み書き計算が必要になることが多い。成人になると職があろうが無かろうが自動的に孤児院は出ることになるから、仕事がないと犯罪に手を染める者も多いのも確かだ」
「なので、今回は本と文房具を寄付できるといいと思います」
「リーリエちゃん、意外と政治的だね」
アンドリューが面白そうにリーリエを見ている。
「そんな立派なものじゃなくて、国民みんなが読み書き計算できるようになったらいいなってだけですよ」
「確かにそうね。貴族の寄付は大概現金だから、今回は本と文房具を寄付するってことでいいんじゃない?」
パトリシアが援護射撃してくれたことで、みんな賛成に回ってくれた。
無事、本と文房具を確保できた。
やったよー!孤児院のみんな!
キレイな本と紙とペン、ゲットだよ!
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