プロローグ
久しぶりの投稿となります。
よろしくお願いします。
早く終わらないかな。
ここにいたって、お金は稼げないし。
リーリエは遅々として中々進まない列にうんざりしていた。
ここオリエンス王国では、十五歳になると必ず魔力の有無と属性を教会で検査することが義務付けられている。
魔力を持ちながら使い方が分からず、暴走させることを防ぐ為だと言われているが、実際は悪用することのないよう魔力持ちを管理する為でもあるし、国に有用な人材を見つける為でもある。
とは言っても、魔力があるのは百人に一人くらいで、そのほとんどが貴族で、その子どもはもっと幼い時に検査を受けて早くから魔力の扱い方の訓練している。
だから、今日ここに並んでいるのは平民ばかりで、平民の中で魔力を持つものは千人に一人あるかどうか。
魔力があれば、魔法を学ぶ為の学校に無料で通える上に、高賃金の職に就ける可能性が高く、魔力検査の為に教会に並んでいる人たちは期待に満ちた表情でその順番が来るのを待っている。
街の食堂で働くリーリエにも検査を受けるようにお達しがあり、渋々出向いて来ていた。
平民で魔力がある人なんて、滅多にいない。
期待するだけ無駄だわ。
魔力は神様からのギフトだと言われているけど、本当に困っている人にはないんだから、神様ってなんなのかしら?
リーリエの家族は母親だけだった。
父親の記憶はないし、母は父親については亡くなっているということ以外は一切口にしなかった。
女手一つで必死に働いてリーリエを育ててくれていたが、流行り病に罹ってからはベッドから起きられなくなってしまった。
一所懸命、母の快癒を神に祈り、必死に働いて薬代を稼いでいた。
それなのに、看病の甲斐なく母が亡くなってしまってから心がポッキリ折れて、すっかりやさぐれていた。
「はい、次の人、その石板に手を置いて下さい。…はい、お疲れ様でした」
案内をする神官もうんともすんとも言わない石板に飽きているのか、無表情で事務的に声をかけてはお引き取り願うことを繰り返していた。
二時間以上並んで、漸くリーリエにも順回ってきた。
「はい、次の人、その石板に手を置いて下さい」
神官の声に従って、古代語が一面に膨られている灰色の石板に手を置いた。
はぁー、やっと帰れるわ。
今日は仕事を休んだから、店の賄いが食べられないし、今日の晩ご飯は何にしようかと考えながら。
リーリエが石板に触れた瞬間、虹色の光が眩いばかりに教会の内部に満ち溢れる。
ざわめいていた教会に静寂が訪れた。
皆がその眩い光に言葉を失って、降り注ぐ神秘的な光にただただ祈りを捧げた。
「聖属性…」
石板の前にいた神官は目を見開いて、石板に浮かぶ文字を凝視している。
突然光り出した石板に驚いたリーリエは慌てて手を離そうとした時、頭の中に見たことのない風景や物がぐるぐると回り出した。
大きな建物にカラフルな乗り物。
黒髪に黒目の人々。
手には四角い機械。
乙女ゲーム、悪役令嬢、ヒロイン、攻略対象
聞き慣れない言葉が駆け巡る。
「わたし、このヒロイン好きになれないわ。健気でかわいければ何でも許されるって訳ないじやん。ヒロインって結局、他人の婚約者を奪う略奪者だよね。こんな顔と聖なる魔力だけが取り柄の世間知らずな子を王妃にするなんてこの王子もバカよね」
「浮気男と略奪女が王と王妃なんて、この国、すぐに滅んじゃうんじゃないの?」
「確かに〜。ハッピーエンドの先はバッドエンド確定」
「その前に悪役令嬢に逆ざまぁされてるかもね」
「所詮ゲームの中の話よね。どっちにしても現実じゃあり得ないわ」
誰だか分からない女の子たちの会話が次々と蘇ってくる。
突然、膨大な情報がもたらされたことによって、頭が飽和状態になったリーリエはそのまま意識を失ってしまった。




