03:好かない女、好かれる男
転校生のニカ・ブルシーロフ。赤い髪のエウロパ人。
最初に会った時からなぜか変な熱意を持って俺に絡んでくる、鬱陶しい男。
退屈な狭い世界に突如やってきた異邦人にクラスの連中は沸き立ち、あいつはあっという間に学校に馴染んで、このごろいつもクラスの連中と騒いでいる。
頭が良くて優しくてイケメンだとかで評判。どこに居ても常にスポットライトが当たっているような、眩しいやつ。あの口うるさい委員長、レイチェルすら人気者のニカにご執心だ。
そんな奴が俺みたいなクラスの嫌われ者に用があるとは驚いた。
だけど俺はニカに用はないから、無視。それなのに懲りずに何度もにこにこ話しかけてくる。はっきり言って不気味だ。何か裏があるに決まっている。
「ぼく、君とも友達になりたいんだよ」
昼食の休憩時間、ニカは俺にそんなことも言ってきた。隣の席いいかな、とにこにこ近づいてきて、俺の対面の席に給食のトレーを置いて座った。その時も無視を決め込むつもりでいたけど、その日は朝からハウスのゲロ掃除を押し付けられたせいで、ちょっといらいらしていたんだ。どうでも良いようなことばかりぺちゃくちゃ延々と喋り続けるニカに、俺はつい言ってしまった。
「お前さ、俺のことかわいそうな奴だと思ってんだろ」
「……え?」
「馬鹿にしてるんだろ。俺みたいな奴にも話しかけてくれるなんて、君は本当に優しい奴だよな」
流石にニカは顔を強張らせた。
「そんなつもりじゃない。ぼくは本当に君と仲良くなりたくて……」
「嘘つけ。偽善者め」
俺はニカの戸惑う顔を見て、なんだか笑えてきた。
「それに俺には分かるんだからな。お前、ちょっと演技してるだろ」
「……何が言いたいのさ。どういうこと?」
「こんな何もない田舎に飛ばされてうんざりしてるんだろ? それなのにいい子ぶっちゃってさあ。他の奴らは騙せても、俺のことは騙せないぜ」
ニカは今度こそ本当に固まって、白い顔が赤くなった。
ちょっと言い過ぎたかな。
でもこれで良いんだ。
お節介なあいつも、流石に俺から離れていくだろう。
いつも大人しい俺が珍しく大きな声を上げたせいで、なんだなんだとクラスの連中が集まってきた。もっと嫌なことにレイチェルもやって来た。
「さっきから話を聞いていれば、何よあんた?何様なのよ?」
めんどくさくなって俺はトレーを持って席を立った。
「そうやって、みんなから逃げるな!」
食堂を出ようとしたとき、後ろから腕を掴まれた。
「ぼくは諦めないからな!」
息を切らしたニカはそう宣言して、くしゃりと笑みを作る。
俺はその手を乱暴に払いのけて、みんなの視線を集めながら食堂を出た。
ああ、鬱陶しい。どうして俺を放っておいてくれないんだ?




