『革命団』の蜂起――『初期化・開始《フォーマット・スタート》』
政府を憎む人達と行動を共にすることを決めたとはいえ、アーシェ将軍達とのような関係になったわけではない。お互いに警戒してギスギスするのは避けられない。
「昨晩は良く眠れたか?」
「牢屋のような場所でしたから、疲れはとれませんね」
会話も、当たり障りのないものしか行わない。
リーダーのアーノルドはまだマシだ。信頼関係は無くとも、魔法の力をもった僕に最低限のコミュニケーションはとろうとしてくれる。だが、他の人達――特にセレージャの態度は頑なだ。会話どころか、目を合わせることすらしようとしない。
そんな間柄では信頼関係など望むべくも無く、行動こそ自由になるものの常に監視されているような状態。素性の知れない状況で受け入れられたあの世界が、(良くも悪くも)如何に特殊な世界だったかを実感する。
「これからのこと、何か考えはあるんですか?」
何度目かの朝食時、アーノルドに質問してみた。
数日間一緒に生活してわかったことだが、彼等は何か明確な行動を起こしているわけではない。あちらの世界で皇帝を暗殺し、国を変えようとしたような過激な企みもなく、毎日政府への恨み言を言って過ごしている。
「考えてはいる。だが、我々の人数や持ちえる力だけでは実現が困難なことばかりだ」
「僕の魔法を使っても、ですか?」
「魔法を使えるのは相手も同じ。まして、私はまだお前の魔法をこの目で見ていない」
利用はするが、信用はしていないということだろう。僕も似たようなものだから、文句は無い。
しかし、具体的な活動内容も無く、ただ集まって恨みつらみを並べるだけの現状では、先に繋がるものがない。
魔導政府に敵対してほしいと思っているわけではない。予言者を始めとして、魔導政府は相手にするには強大過ぎる。
「だけど、このままじゃ……」
歪んでしまう。あちらの世界で見たザイスリング王国生き残りだった人達のように、何かが決定的に狂ってしまう。
苦しめられたことによる恨みと、何も出来ないという諦念。それらが停滞し、地下の隠れ家全体に澱んだ空気として溜まっている。
「こんな空間にいつまでもただ隠れているだけじゃ、精神に異常をきたします。直接的な行動でなくても、何か変化を伴う行動を起こさないと」
「わかっている」
苦々しい表情からは、彼もこの状況に悩んでいる様子が窺える。
「……調査、という名目で外に出ませんか?」
「調査? 何を調べるつもりだ」
「別段、なにも」
「なんだと?」
怪訝な顔をするアーノルド。椅子に座り直し、考えを伝えるために正面から向き合う。
「実際に政府の動向を調べるには、ここは中枢から遠すぎます」
地図で確認した限り、魔導車があったとしても丸二日はかかる距離。調査しようにも、直轄地ですらないこの場所では何もわからない。だからこそ、ここは安全な隠れ家であるとも言えるが。
「ですが、安全な場所で隠れ住むだけでは負の感情が蓄積される一方です。せめて、『政府へ対抗するための行動を起こしている』という実感がなければならない」
「だからといって、不用意に外で動けば見つかる可能性は高まるぞ。非直轄地といえど、政府関係者が全く来ないというわけではないからな」
非直轄地であろうとも、視察や魔法技術の講義などで術師が訪れることは少なくない。僕が政府の人間だと間違われたのも、そのせいだ。
外にある畑などに食糧の調達をしに出ていく時はあるが、基本的には地下で過ごしているのは、極力そういった術師との遭遇を避けるためだ。
「護衛は僕がします。術師の使う魔法もある程度把握していますし、戦闘になった場合も時間稼ぎくらいは出来ます」
「お前が政府側の人間で、我々を誘き出そうとしている、ということも考えられるが?」
「そうだとしたら、こんな無駄な時間を過ごさずに政府に連絡しています」
本当に疑っているわけではないだろう。疑っているとしたら、初めて会ったあの日に殺されているはずだ。
「……そうまでしてやることは、架空の調査活動か? 危険性と成果が見合わんな」
この慎重さ。これが、アーノルドのリーダーとしての資質の一つであり、ここにいる人達が停滞している要因の一つでもあると僕は考えている。
常に冷静で、不用意な行動はしない。集団が危険に晒されないためには必要なことではあるが、僅かな危険も片端から回避しているようでは何も行動を起こすことが出来ない。
「『期待』を、持てるようになるかもしれません」
「『期待』だと?」
立ち上がり、話を終えようとした体勢のまま向けられた目に、真っ直ぐと向き合う。どんな時でも、人の目を真っ直ぐに見て話してくれたアーシェ将軍のように。
「ここにあるのは、ただの『絶望』です。苦しめられた過去、それに対する不満、何も出来ない無力感。そこから生まれるのは、先の無い『絶望』です」
「仕方あるまい。我々は、魔法至上主義の世界において、虐げられ、爪弾きにされる者だ」
「それは……事実でしょう。かつては、僕も魔法の力を疑ってはいませんでした」
しかし、あちらの世界で戦う内に、いくつもの不自然さに気が付いた。それはやがて政府の、ひいては魔法という技術を基底としてイグナシルという世界への疑念に繋がった。
「けど、今はそうじゃない。術師として、自分の使う魔法という力そのものにも疑問を抱いています。それに苦しめられている貴方方を、救いたいとも思う」
「だったらどうする。お前一人の力で我々の立場を変えてくれるとでもいうのか? そんなことは出来まい。そんな期待など、誰もしてはいない」
「だから絶望に飲まれたまま耐え続けるんですか?」
僕を見る目が、徐々に怒りを帯びたものへと変わっていく。
おそらく、理解しているのだ。僕が言うまでも無く、当事者であり、他人と状況を客観視できる彼は、今の自分達の危うさを。
「不用意な行動は、身を滅ぼす。ここに逃げ延びる前の我々のように」
「何も行動しなければ、何も得られない。それは緩やかな自殺です」
目の色が、明確な怒りの色へと変わる。机に身を乗り出し、胸倉を掴んで睨みつけてくる。
「迷い込んだだけの部外者に、我々の何がわかる。あの時の苦しみも、恐怖も、痛みも! 何一つ知らんお前に何がわかるというんだ!」
初めて、アーノルドが個人の感情をぶつけてきている。
思い出しているのだろうか、予言者に殺された子供のことを。
「僕だって……」
服の胸元を掴んでいる手を掴み返す。
叩き付けられた感情に呼応するように、僕の中の感情も急速に湧き上がってくる。その速度は「止めよう」と意識することが間に合わない程に早く発露した。
「僕だって、アイツに人生を狂わされた!」
突然の激昂に驚いたのか、胸元を掴んでいた手が緩む。少し浮いていた足が地面に着くと同時に、今度は僕が両手で掴みかかる。
「たった一言で! 身に覚えがあるはずのない罪状で! 見知らぬ世界に放り出された!
いつ死んでもおかしくなかった。いや、彼女に出会わなければ、すぐにでも殺されていた。僕がまだ生きているのは、望外の幸運だ」
「何を……」
「貴方達だけじゃない! 魔法を使える使えないなんて関係なしに、予言者は僕の敵だ!」
自分でも制御のできない感情が次々と溢れ出てきて、言葉にするのが追い付かない。
予言者の使う『予言』を、優れた魔法だと素直に思ったこともあった。その有用性と信憑性から、政府が理不尽な法律を制定したのも仕方のないことかもしれないとすら考えた。
――すぐに、そんなものは傍観者の妄言だと気付かされた。
実際に自分がその理不尽に晒されて、「仕方が無い」なんて考えた自分を殴り飛ばしたくなった。予言罪の宣告を受けるまでは見えていた自分の未来が、一瞬で暗く閉ざされたことを感じて心が絶望で満たされた。
彼等はまさに、当時の僕だ。
「――アイツを是とする魔導政府に、今では疑問を持ってる。
僕の目的は、予言者の企みを知り、場合によってはそれを阻止すること。そして、魔導政府の真意を知る事。それは、貴方達の無念を晴らすことにもつながる可能性がある」
僕が立ち直れたのは、絶望に浸る余裕すら無い世界に行ったこと、そして――
「僕が貴方達を政府へと連れて行く。たとえ力で政府に敵対することになっても!」
手助けをしてくれる人達が居たから。だから、今度は僕が彼等を助けなくちゃならない。そう思った。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙。暗い森の中は、複数の人が居るとは思えない程静まり返っている。静か過ぎて、沈黙が耳を突く音にすら感じる。
僕の後ろでは、青い顔で周囲を気にしながら歩く人達。お互いに目配せしながら、見えない何かに怯えている様は見ていて気の毒になる。
「……何を企んでいるの」
ただ一人、堂々とした足取りで前を歩く女性――セレージャだけは例外だ。隠そうともしない敵意を纏って先へと進む。
「何も企んでなんていませんよ」
「嘘! 政府の人間のくせに政府に敵対する私達のために動くなんて、何か良からぬ事を考えているに違いないわ!
そうよ、こんな男信用するなんて……アーノルドはおかしくなっちゃったんだわ。いいえ、この男が魔法で何かしたに決まってる。あぁ、なんてこと……」
隠れ家を出てから、彼女はずっとこの調子だ。会話をすると言うより、僕に対する不信感を吐き出しているだけ。何と答えようと、頭から否定してブツブツと妄想じみた言葉を呟くだけ。
アーノルドは、僕を使って本格的に政府への抗議活動を行うことにしたらしい。それは、信じてくれたというよりも、セレージャのように精神的に限界を超え始めている人達のためなのだろう。
「そうだわ、今ならこの男を殺して魔法を奪えるかもしれない。私が魔法を使えれば、操られているアーノルドも助けられるし、政府だって打倒できるわ。ふふ、どうして気が付かなかったのかしら」
いつ政府に見つかるかという不安と理不尽に耐える苦痛で、彼等の中には気が狂うギリギリで踏みとどまっているような人が多くいる。中でもセレージャは酷い。実際に行動こそ起こさないものの、言動がかなり危険だ。
今回の周辺偵察は、僕の言葉が本当か確かめる意図もあるだろうが、澱んだ精神を晴らすために意味のある行動をとらせようという意味も含めた決断なのだろう。
「……おい」
「はい?」
震えた声で男性が話しかけてくる。敵側だと疑っている人間と話す嫌悪感よりも、引きこもっていた場所から離れている恐怖が勝ったらしい。
「こんなことして、何になるっていうんだ」
「どういうことですか?」
「こんな田舎を偵察なんて、しても無駄だ。それくらいわかるだろう!?」
「そうだ。こんなことをして、もし政府の監察官にでも出くわしたら……」
無駄だと言う割には、政府の人間が来ることを怖がっている。彼等もまた、思考の整合性が取れないほどに精神が侵されている。
「それが目的です。政府の人間がどう動いているのか、それを知らなければこちらも行動のとりようが無いでしょう」
魔導政府は、直轄地以外での活動はさほど頻繁には行っていない。とはいえ、月に数回は必ず地方担当の執行官が非直轄国にも入国し、視察と魔法技術の伝授を行っている。たいていの場合は国ごとに入国日が決まっており、視察の日が一日わかればその後の予定も把握できる。
幸い、地下に居ても日数だけは数えられている。今度どのような動きをとるにせよ、まずは政府の動きを知っておくことが重要だと僕が進言した。
「ふふふ、なるほど。仲間と連絡をとりあいたいということ。口を滑らせたようね」
定まらない焦点で木々の隙間を見据えながら、口元を歪ませて笑う。そんな彼女の姿に、他の人達は一貫して見て見ぬふりを続けている。自分達も遠からず同じ途を辿ることを薄々わかっているのか、単に見ていられないだけなのか。
どちらにせよ、たった数日だけで明らかに悪化している。あるいは、政府の間者と疑っている僕が余計な心的負担となってしまい、加速度的に悪化していることも考えられる。だから、彼女に何を言われても責める気にはなれない。
「フフ、仲間と一緒に殺しテやるわ」
血走った目で人の言葉に耳を貸さない様子は、ザイスリングの民に酷似している。そもそも、アーノルドがこの場に居ない理由は、リーダーである彼が隠れ家を離れると動揺が広がるということと、僕が彼を外に連れ出して殺害するつもりだとセレージャが騒いだからだ。
「……同じようには、させるもんか」
またアイツのせいで犠牲になる人を作るわけにはいかない。
「あ……」
「どうしました?」
セレージャに意識をとられていた僕の耳に、後ろから小さな声が聞こえた。振り返ると、同行していた男性の一人が、震える指先を木々の先へと向けている。
「?」
「おい、何が……ひっ」
指が差された方向を見た別の男性が、小さく悲鳴を上げて後ずさる。
ブツブツ言いながら先に進むセレージャが少々心配ではあるが、遅れ気味な後方集団の場所まで戻る。
「何が見えたんですか?」
「あ、あれ、って……」
何か言おうとはしているのだが、言葉がうまく出ないらしくラチがあかない。結局、自分で見た方が早そうなので、『遠視』と『暗視』を使って確認する。同一部位に対する魔法の同時使用は魔力の消耗と疲労が待っているが、他に方法が無い。あちらの世界に居て、魔力そのものが底上げされた今の僕なら大丈夫だろう。
彼等は暗闇に慣れているからか、かなり先まで見通せているようだが、魔法を使わなければ僕には何があるのか見えない。距離がわからないので調整にやや苦労はしたが、彼等が何を恐れていたのかは確認できた。
「見つけた……!」
月光を反射して微かに煌めく銀の服。かつて憧れた執行官服を来た二人組が、その身の煌びやかさとは不釣合いな田舎道を歩いていた。
「お、おい! 逃げた方がいいんじゃないのか」
「皆さんは、彼女を連れて戻って下さってもかまいません。僕は、彼等のことをもう少し調べてみる必要がありますから」
本当は気分転換ついでに連れ出したのだが、夜ということもあってか彼等の今の精神状態では気分転換など到底望めない。
とはいえ、やはり夜を外出の時間に選んだのは間違いでは無かったらしい。銀の制服ということは、あの二人組は上級執行官だ。直轄地でもない上、特に重要度が高いとも思えないこんな田舎待ちに二人も上級執行官が来るのはおかしい。
「帰るったって……セレージャは、あいつらのとこに行っちまったよ」
「え!?」
慌てて周辺を見渡す。すると、木に身を隠しながら二人組に近づく彼女の姿を見つけた。直前の不穏な言葉が頭をよぎって血の気が引く。
ここで魔導執行官に攻撃を仕掛けてしまえば、確実に政府の敵対勢力とみなされる。そうでなくても、上級執行官が相手では僕一人では手に余るというのに、下手に制圧隊を編成されでもしたら一網打尽にされる。
「僕が連れ戻します! 皆さんは急いで隠れ家に戻って下さい!」
僕が守ると約束した。初めから破るわけにはいかない。手を出してしまう前にと、可能な限り大きな音を出さないように走る。
「――セレージャさん!」
二人組には聞こえない程度の大声で呼びかけるも、反応は無い。
背後からでも強い殺意を持っていることがわかる。声なんて聞こえていないのだろう。
「イリアの仇!!」
制止が間に合わず、セレージャが執行官達に飛び掛かる。
「な、なんだ!?」
「報告にあった危険分子か!」
一人は突然の襲撃に驚いたようだが、もう一人は素早く反応して魔法を起動している。
僕の時には魔力切れと大勢いたことが幸いして捕まえることが出来たかもしれないが、魔法の専門家である上級執行官に魔法を使えない人間が単独で立ち向かうのは無謀過ぎる。
「くらえ!」
「なんっ……うぐっ!」
すぐに反応した執行官の起動した魔法で、セレージャの体は吹き飛ばされて木に激突する。
「そんな!?」
助けに入ろうと走っていた足を思わず止めてしまう。
執行官が使う魔法は、たとえ犯罪者相手であっても基本的には『意識喪失』一択だ。イグナシルの魔法は生活補助のために生み出されたものであるという経緯から、あちらの世界のように攻撃魔法は無い――はずだったのに。
今使われた魔法は、生活のために作られた魔法ではなく、明らかに敵対者に対して危害を加えるための魔法だ。
「くそっ、どうなっているんだ!?」
疑問を持ったまま、とにかく移動を再開する。攻撃魔法を使ってくるというのなら、今後の心配以前に命を奪われかねない。先の魔法は、そういった危惧すら抱くようなものだった。
気を失ったセレージャに対して、驚きから回復した執行官が新たな魔法を使おうと準備している。
人相を知られないためにとっさに『性別転換』を使って執行官二人の前に飛び出す。
「『|初期化開――(フォーマット・――)』」
「『魔力妨害』!」
起動寸前の術式に、外部から無理矢理魔力を流し込む。
『魔力妨害』は魔法を構成する術式を根本から破壊することが出来るが、イグナシルでは術式が暴走した時の対策として標準装備されている停止機能だ。だが、緊急時の停止用としてイグナシルの魔法に用意されているはずの機構が無効化しようとした術式には無かった。そのせいで、思った以上の魔力を消費してしまった。
「なにっ、術師だと!?」
「報告には無かったが……何者だ!?」
問いには答えず、セレージャの近くで姿勢を低くする。
二人を睨んだまま後ろ手首筋に手を当てて無事を確認する。脈に異常がないところを見ると、気絶しているだけのようだ。こういった時の対処は、向こうで慣れてしまった。
「答えるつもりはないらしいな」
「ならば敵だな。『意識喪』――うっ?」
執行官達の足元がフラつく。『魔力妨害』で術式を破壊した直後に、彼等の背後に『意識喪失・改』を仕掛けておいた。魔法に気付いた頃には手遅れだ。
「くそっ、『意識喪失』、だと……!? 一体、いつの間に……」
「ま、待て……」
セレージャを担いで立ち上がる。意識を失っている人間を持ち上げるのは想像以上に苦労したが、肉体強化を施して何とか速足でその場を退くことは出来た。
「くっ、せめてコイツをくらえ。『初期化・開始』!」
「ああ!」
咄嗟に躱しきれずに、背後からの魔法を受けてしまった。
「くそっ!」
受けてしまった以上はどうしようもないので、とにかく急いで来た道を戻った。
痛みこそ無いが、魔法は僕達二人を包むようにして放たれたように感じた。聞いたことの無い魔法だったせいで、どういった効果があるのかもわからない。せめて術式を見ることが出来ていれば何とかしたのだが、一度目は構築前、二度目は背後からだったせいで確認できなかった。
不意をついたおかげで逃れることこそ出来たが、やはり上級執行官。最低限の仕事として、何らかの手を打ってきたということだろう。
「こんなんじゃ、ダメだ。他の人達を守らないとダメなのに……!」
たった一人の女性を守りきることすら出来なかった。アーノルドを焚きつけておきながら、このザマでは合わす顔が無い。
これでは、彼等はまた地下で鬱屈した気持ちを澱ませた生活を続けるという選択をするだろう――そう、思っていた。
「我々は、これより『革命団』として魔導政府に敵対する!
虐げられてきた過去を清算するために、立ち上がるぞ!!」
『おおーーー!!』
段上に立って演説するのはアーノルドだ。その言葉に呼応して、地下にいた全員が雄叫びを上げる。
どういったワケか、僕達が偵察から戻って後、セレージャと少し話したアーノルドは突然『革命軍』を結成して政府を打倒すると言い出したのだ。
動かなければ何も変えられない。その考えは今も変わっていないが、唐突に過ぎる決意に正直戸惑っている。
軍、という名称だけは活動を終えた後のために改めてもらったものの、このまま活動を開始しては危険なのではという思いが拭いきれない。
「僕一人じゃ力不足だった。策も展望も無い。それはわかっているはずなのに、どうして急に……?」
問いただしても、帰ってくる答えは「時が来たから」という抽象的で的を得ないもの。
同行している以上協力するつもりではあるが、不安だけが募っていく。
「アーシェ将軍……」
不意に思い出した。
圧倒的な権力者に対して敵対する。構図だけならば同じはずなのに、あの時とは毛色の違う、酷くネバついた不安感で気分んが悪くなる。
「……何とか、してみせる」
不安ばかりを口にしていたら、何も出来ない。アーシェ将軍のように、不安はあっても強い言葉を自分を鼓舞していかなければならない。
まずは、自分の力を高める必要がある。
短期間で魔力を上げることは無理だとしても、せめて向こうの世界で作った魔法を使えるようにしないと、攻撃魔法を使ってくる政府の執行官とは戦えない。
「――出来る。必ず、目的は果たす」
その目的が曖昧であることは心の奥底に押し込んで、顔を上げて熱狂の輪へと加わった。
三ヶ月も間が空いてしまった……
執筆時間が全然とれない……




