表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
PR
85/85

5-6 マイカの誤解

「ああ、そうだ。俺たち王国外で産まれた人間はみんな王国の都合のいい存在になる」


ガブはそう言い切る。

言葉が少し早口になり語尾が強くなった。


「レイルはあまり王国のことは知らないの。ガブさんごめんなさい」


ガブはノアの方へ手を挙げる。


「いや、いいんだ。そんなもんだとは思っていた……」

「それで、俺たちは王国を嫌いなんだが……俺たちよりももっと王国を嫌いなのがマイカなんだ」


「たしかに、レガルドの槍って何回も言ってたな」


結局レガルドの槍ってなんなんだろう。

俺ってレガルド王国のこと、何にも知らなかったんだな。


「ああ、話を長くする気はない。単刀直入に言う。マイカは元レガルドの槍だ」


一瞬、意味が分からなかった。

レガルドの槍は王国の部隊だ。

なんで王国の部隊所属なのに王国が嫌いになるんだ。


「それだけじゃ、何も分からないですよガブさん」

「それに元レガルドの槍って……」


ノアの青い目が曇る。

何か嫌な予感がした。


「ああ……脱走兵ということになるな。マイカは幼い頃に逃げ出したおかげで詳細なデータは取られていないと思うが」


全く話についていけない。

マイカはレガルドの槍の脱走兵?


「なあ、なんで脱走なんてしたんだ?」


「それは分かんねぇ。俺はたまたまここら辺の荒野を歩いていた時に、まだ小さかったマイカを拾ってきただけだからな」


「マイカさんは自分自身がレガルドの槍だって知ってるの?」


ノアがやけに話に喰いつく。

レガルドの槍にしか分からない何かがあるんだろうか。


「ああ、レガルドの槍の頃の記憶はハッキリと残っているらしい。何をしていたのかは知らないが相当恨んでいるそうだ」


ガブはそう言った後に俺の方を指差す。


「そしてレイル。お前はおそらく、マイカにレガルドの槍のメンバーだと思われている」


「なんで俺がレガルドの槍だと思われてるんだよ」


俺の言葉を聞いてガブはまた、視線を落とす。


「元々、ノアのことをレガルドの槍だと俺たちは説明していた。だが、お前がノアを助けにきてケビンの選択が変わった。お前達を二人とも悪くないように組織には説明してきたんだが……」


ガブの言葉に息を呑む。

喉がゴクリと鳴った。

  

「マイカには無駄だった。レイル、お前はマイカを殴って無力化したらしいな。そんなこと、俺たち組織のようなただの人間にはできない。あいつは俺たちが自分よりも明らかに弱く、特別な力を持っていないことを理解していた。だから、自分より強かったお前を見てレガルドの槍だと思ったんだろう」


俺がレガルドの槍に見えた?

たしかに脈気は使えるがそれだけの理由で?


「たしかに…レイルの強さはおかしいもんね」


ノアは手を顎に当て静かに頷く。


「俺がレガルドの槍って思われてるのは分かったけど、じゃあ違うってガブから説明してくれよ!お前にマイカは懐いてるんだろ」


ガブは目を閉じる。


「俺には止められん。マイカがレガルドの槍を恨んでいる理由は知らないが、俺はあいつが我慢するような選択はしてほしくないんだ。例え、お前に迷惑をかけたとしても……」


「ガブさん……」


ノアもゆっくりと目を閉じた。

たしかに、マイカが俺に向けていた感情は簡単なものではなかったような気がする。


「マイカが俺を恨んでいる状態が本当にいいことなら、俺はそれでもいいよ」


俺の言葉に二人は目を開く。

身体をピクッと動かして驚いている。


「訳わかんないけど、ガブはマイカのことを思って俺への誤解を解けないなら誤解されたままでいいよ。マイカに悲しい顔して欲しくないんだもんな」


ガブはまた目を閉じる。


「ありがとうな」


「ああ、気にすんなよ」


ノアの視線を感じた。

けど、ノアの方を向くことはできなかった。

彼女がどんな目で俺を見ていたとしても、俺の心に刺さると思ったから。


――あの日から、俺は毎日マイカと一緒に街の見回りをしている。今日で4日目か5日目か...どっちかだったと思う。


「うわぁ……また咲いてるよ。もうなんか気持ち悪い」


マイカは地面に屈んで新芽を見る。

俺もマイカの隣に座り込む。


「咲いてるのは街にとっていいことなんじゃないのか」


――バーン

 

マイカは俺の足を勢いよく踏みつける。


「寄ってこないでよ、気分が悪くなるからさ」


青い目で俺を睨みつける。

俺は立ち上がり少しマイカから距離を空ける。

 

「ごめん……」


「気持ち悪いから、私に擦り寄って来ないで」


マイカは立ち上がり再び街の外周を歩き始める。

街の外に広がる荒野を眺めながら俺も後を追う。


街の外には大きな岩と果ての見えない剥き出しの大地が見えた。

新芽がここに咲いている理由は何なのだろうか。

それさえ分かればこの街は救われるんだろうか。


そんなことを考えているとビュッと強い風が吹く。

視線を前に戻すと、マイカが荒野の方へと走り出している。


俺も気づくのと同時に追い始める。

マイカの背中が見えると同時に前方に二人の影が見える。


黒い羽根と尻尾を細かく動かしているシルエット。

ムカデのような人間の形とは全く違うシルエット。


「あっ!レイルー!」


サラが黒い髪を揺らしながら大きく手を振ってくる。


「おいサラ、あの白髪。こっちに突っ込んできてないか」


「あー、あれね」


サラとカマイが呑気に会話をしているその間にマイカは一気に距離を詰める。

俺もマイカに追いつくために今までより強く地面を蹴り進む。


しかし、このままじゃ間に合わない。


「また会ったね!魔族さん!」


マイカはそう叫びサラに向けて爪を伸ばしていく。

サラは腕を組み余裕の表情を浮かべている。

 

――ギィン


黒い尻尾でマイカの爪に巻き付く。

爪は動きが止まる。


「あら、弱くなった?」


「何やってんだ!」


俺は立ち止まっているマイカに飛びつき、腕を掴む。

マイカは白い髪の毛を俺の顔にぶつけながら暴れる。


「離せ!なんで私についてくるのよ!」


サラはマイカの顔に近づき、ニヤニヤする。

 

「あんたが危ないからボスがレイルに面倒見させてるんじゃないの?」


「うっさい!魔族にボスの何がわかるのよ!」


サラとマイカの視線がぶつかる。

火花が散るような視線っていうのを初めて見た。


「私は魔族だけど、あんたなんかより人間については詳しいわよ」


「へ、へぇー。じゃあさ、あんたは私の気持ちもわかるのかな?」


お互いに一歩も譲らない。

顔は二人とも満面の笑みを浮かべているが腹の中がどうなってるかは俺には分からない。


「まあまあ、二人ともそこら辺でやめとけ」


赤色の背板をカタカタと鳴らしながらカマイが二人の間に立つ。


「また変なのが来たね。あんたも魔族でしょ」


「魔族……?ああ、俺のことか」


カマイが魔族?

確かに身体はムカデのようだしそう思っても仕方ないか。


「なに言ってんのよ!カマイのどこが魔族なの!」


サラがいつにもなく焦っている気がした。


「あんたもだけど!こんな身体の奴が人間なわけないでしょ……。身体がムカデだったり尻尾と羽根が生えてたりして……驚かない方がおかしいじゃない!」


マイカは少しだけ後退りする。

青い目からは光がなくなっている。


「レイル……あんたも人間じゃないんでしょ……」


「なに言ってんだよ」


マイカは爪を伸ばし、視線を下に落とす。


「おいサラ、レイル。この嬢ちゃんは何なんだ」


「カマイ。そんなの言ってる場合じゃないかも……」


マイカの視線を感じる。

顔は下を向いているはずなのに。


「ねぇ、やっぱりあんた達は殺さないとダメね」


「ガブに俺と一緒に動いて問題起こすなって言われただろ。やめろよ」


マイカはニヤリと笑う。

俺も木刀を腰からゆっくりと引き抜く。


「そうね。ボスはそう言ってた。でも、あんたと一緒に行動すればするほど、信じられなくなる。レイル、あんたは一体何者なの。王国は何を企んでいるの……」


辺りには一瞬の静寂が訪れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ