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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
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4-22 選んだ先で

「なにをしているんだフウジ!」


フードの人物の一人が声を上げる。


「お前らこそ何してんだよ!」

「こいつらはお前らを殺そうとしてないのになんでお前らは殺そうとしてんだ!」


「街の危険を取り除くのが俺たちの仕事だからだよ!」


フウジと話しているフードの人物は俺に銃口を向ける。


「おいバカ!やめろ」


――ビュン


フウジの叫びも虚しく、音が鳴る。


俺はなんとかサラの場所まで辿り着く。


「頼む!」


「もー、私脈気なくなっちゃうよ!」


サラはそう言いながらも俺の代わりに紫色の線を受け止める。


「馬鹿野郎!」


フウジが殴り飛ばす。


「おいお前ら!ジオガンは捨てろ」


「それはできない!」


フウジとフードの人物達が口論している間に俺は白い線を自分の方へ手繰り寄せる。


スッと入ってくる白い線が俺の身体中を満たしていくような気がする。


「サラ、ありがとう」


俺はサラの肩に手を当て脈気を送る。


「うわっ!ビックリした」


サラはピクリと反応して俺から離れる。

俺の身体からサラの身体へと白く大きな線が流れていくのがはっきり見えた。


「あれ?脈気が溢れてくる」


サラは驚いた顔をしてこちらを見る。


「なんか、復活したっぽい」


サラは目を細めて俺をじっと見つめる。

そして少しだけ頬を緩める。


「そうみたいね、白い線白い線って言うからなんのことかと思ったら脈気のことだったのね」


「え?サラには見えないのか」


俺が聞くとサラはこちらを呆れながら見てくる。


「脈気が見えるなんて聞いたことないんですけどー」


「お前達はここで止める」


声に反応して振り向くとナイフを持った男が俺に向かって突っ込んでくる。


――パキ


男の手に持っていたナイフの先が地面に落ちた。


「なんで?」


サラは笑いながら指を指す。


「それ私もやられた!」


「やっぱりバケモノか」


男はそう言って仲間達の方へと戻っていく。


「レイル!」


声の方を振り向くとフウジが何人かに上に乗られ取り押さえられている。


――ビュンビュンビュンビュンビュン


紫色の線がいくつも飛んでくる。


俺は足で力強く地面を蹴り、全ての線を躱す。


そしてジオガンを持つ人物を目掛けて駆ける。


――パキィ

――パキン

――バギィ


視界に入った全てのジオガンを叩き割る。


淡い光を放ちながら脈気が漏れ出てくる。


周囲の人物達は俺の姿に息を呑み、注視している。


「どいてくれ」


俺はフードの人物達の前を堂々と歩いていき、フウジの元へ行く。


「ちょっとちょっと!」


サラが俺の元へと駆け寄ってくる。


「やり過ぎなんじゃない?」

「みんな引いちゃってるよ」


「誰も傷つけてないからサラやフウジよりもマシだと思うけど」


俺はサラに返事をし、フウジの上に乗り掛かっている人物達を睨みつける。


すぐにフウジの上からは人がいなくなった。


「立てるか」


俺は手を伸ばす。


「いてぇけど、なんとか」


フウジはゆらゆらと立ち上がる。


「お前らわかったか!敵対心ない奴を殺そうとすんな!」


フウジはフードの人物達に叫ぶ。


フードの人物達からは何の返事も返ってこない。

ただ、俺たちをジッと見ているだけだ。


「行こうレイル。時間くっちまったな」


フウジはそう言いながらふらふらと歩いていく。

俺は黙ってフウジについていく。


「あんた達運が良いわね。普通だったら殺されてるんだからね」


サラの声が背後から聞こえてくる。


「悪いな姐さん」


「いいのよ。これくらい日常だったから」


サラはそう言うとフウジの横にまで行き肩を支える。


「自分の目で確かめたいんでしょ。倒れないで」


「悪いな」


フウジはサラに身体の一部を預け、前を歩いていく。


俺もそれを見て、フウジの横に行き支える。


「レイル……」


「お前がいないと誰がノアの場所まで案内するんだよ」

「まだまだ倒れちゃダメだ」


俺たち三人はのそのそと歩いていく。


フウジの案内で本部の前についた時には、太陽は姿を隠し始め街を真っ赤に染めていた。


「ここが屑拾いの残響の本部だ」


ボロボロの大きな木造の建物が目の前にはあった。


「あー!ここ見覚えしかない!」


サラが大声を上げる。


「ここからノアの脈気がして、私ここきたんだよ」

「けど、すぐ見えなくなってまた違うとこ行ったんだ」


「俺はここの近くで姐さんに捕まった」


フウジが落ち着いた口調で言う。


「えへへ、そうだっけ?」


サラは軽い口調でとぼける。


「とにかくここにノアはいるんだろ!行こう」


俺が一歩踏み出した瞬間。


本部の扉が開いた。


――ザァァァ


強い風が吹き、砂嵐が舞う。


扉からは白い髪の女性が立っていた。

見たことのある顔立ちだ。


「マイカ!なんでここにいるんだよ」


フウジが叫ぶ。

マイカはフウジを見下ろすように見る。


「ああ、フウジね。なんであんたがそいつの近くにいるの?」

「あんたが捕えられるようには思えないけど」


「レイル達をノアさんに会わすのを手伝ってくれ!」


フウジがマイカに頼む。

 

マイカは鼻で笑う。


「助けるってなにを?」

「私はボスからこいつらを消してこいって命令されてるの」


マイカは俺の方を見る。

見ていることは殺気で分かる。


「ねぇあんた、不思議な木刀はどうしたの」


必死だったから気付かなかったがそういえば腰の木刀がない。


「あんたとの話なんてどうでもいいのよ!」


サラが大声で叫ぶ。


「どうでもいいってなに、あなたも死にたいの?」


マイカは俺から視線を逸らし、サラの方へ移す。


「時間の無駄なの、言ってもわかんない?」


サラが挑発する。


何か引き金があれば今にも殺し合いそうな雰囲気。


「やめろよマイカ、姐さん。ここは争う場面じゃない!」


「フウジは何を言ってるの。ここは殺し合う場面よ」


「そうね。ここはどっちが強いかで決めた方が早いわ」


サラとマイカが互いに挑発しあう。


「私はあんたみたいな弱そうな金髪のちびっこなんかより、そっちのフウジを洗脳した男と戦いたいんだけど」


「へー、あんたなんかより私の方がずっと人生経験豊富だけどね」


サラが足に力をいれた。


――まずい


俺はフウジを抱えて二人から離れる。


「おい、レイル!」


――バーン


激しく何かがぶつかる音がする。


「へぇ……あんたもレガルドの槍?」


「レガルドの槍?そんなの全然知らないんですけど」


二人は一度間合いを取る。


「なあ、姐さん!マイカは強いんだ、逃げろ」


フウジが叫ぶ。


「へー、これくらいで強いなら、私はこれより強い人を最低二人は知ってるわ」


「知ってるだけであなたじゃないなら死ぬだけでしょ」


マイカがサラに突っ込む。


サラは屈み攻撃を避ける。


――スカッ


何かを貫く音が聞こえた。


マイカの手を見ると爪が長く伸びてサラが羽織っているマントを貫いている。


「爪を伸ばすなんて、しょぼい能力」


「不意打ちを運で躱すなんて、ラッキーね」


マイカは爪を地面へとそのまま叩きつける。


サラはそれを見て動くが間に合わない。

肩の一部に爪が食い込む。


――ザン

 

「うっ!」


サラの腹の底から絞り出した声がする。

肩からは赤い血が腕へと伝ってきており、マントは破れ地面へと落ちる。


マイカは驚いた表情を浮かべる。


「あんた怪しいと思ってたら……」


マントで隠していたサラの尻尾と黒い羽根が剥き出しとなる。


「人間ですらなかったのね」


「ええ、何か悪い?」


サラは再びマイカへと向かっていく。


「なあおいレイル!姐さんのあれどう言うことだ」


「何って、羽根と尻尾生えてるのがおかしいか」


「おかしいに決まってんだろ!」


フウジはそう言うと頭を掻きむしる。


「ああー、もうまたわかんねーよ!」


フウジはそう言って地面に座り込む。


「ああ、わかんない事だらけだ」


――ドスン


サラとマイカの重い一撃が衝突し、鈍い音を起こしている。


「きっと分かんないことは一生分かんないかもしれないしいつか分かるかもしれない」


――ガランガランガラン


マイカとサラがお互いの攻撃を受け、建物を巻き込みながら吹き飛ばされる。


「結局、俺は何してるのかわかんなくなることもある」


「何言い出すんだよレイル!」


俺はマイカが飛んでいった方向を向く。


「分かんないことを分かりたいと思うから前に進むし、このままは嫌だと思うから俺は生きてる」


マイカが瓦礫の中から飛び出す。


少し遅れて、サラも飛び出してくる。


「俺はわかんなくても歩き続けるよ」

「歩き続けろって言った親友と歩くのをやめさせてくれない大切な人がいるから」


俺はそう言い残してマイカの方へ飛び出す。


――ダーン

 

サラとマイカの拳がぶつかり合う。


俺はサラの腕を掴み、フウジの方へと投げ飛ばす。


「ちょっと――」


サラの飛んでいく速度が早すぎて何を言っているのか分からなかった。


きっと恨み言だろうから聞かない方がいいか。


「あの魔族を逃すつもり?」

「どこまで王国は腐ってるの」


マイカは俺を見て吐き捨てるように言う。


「ちょっとレイル!何してんのよ!ここは私に任せなさい」


フウジの横で叫んでいるサラの姿が見えた。


「魔族じゃない。あいつはサラだ」

「俺の仲間のただのサラ」


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