表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
4章 奪還編
59/71

4-10 魔族作戦

太陽が沈み、月が浮かんだ夜。


俺たち三人は、とある小屋の屋根の上に立っていた。


「ねぇ、本当にこんな作戦で上手くいくの?」


サラが不安そうに俺へ尋ねてくる。


「やってみて、ダメだったらそこまでだ」


「現状、作戦はこれしかないんだ。やるしかないだろ」


俺とクロールがサラを説得する。


サラは下を向いたまま、不安そうに黙り込んだ。


それもそうだろう。


俺とクロールは、二人で一つの服を着ている。

ロープで作った尻尾をぶら下げ、木刀を服の中に突っ込み、角のように見せていた。


どう見ても即席の魔族だ。


「じゃあ、作戦を確認するぞ」


クロールが俺の真横で話し始める。


「今回の作戦は、俺とレイルで屋根から大通りに飛び降りて、精一杯叫ぶ」


「サラはそれを見て、“魔族が来た”って騒ぐ」


「騒いでるサラを俺たちが攫う。そのまま関所を目指す」


クロールはニヤリと笑う。


「単純明快だな」


サラはそんなクロールを、呆れたように見ていた。


「これって、全部レイルの脈気頼りよね?」


サラは俺を見る。


「レイルの脈気、元が多いから大丈夫だけど……エルド村にいた時と、全然大きさ違うんですけど」


「大丈夫だって。何も変わってる感じしないから」


俺はサラをそう諭しながら、クロールと息を合わせて歩く練習をする。


「クロール、そっち行ったら服破れるだろ」


「レイル、こういう時は年長者に合わせるんだよ」


俺とクロールのやり取りを見て、サラは大きくため息を吐いた。


そして――


自分の頬をパンッと叩く。


「よし」


気合いを入れ直したようだった。


「やろう」


サラはそう言うと、人のいない暗い路地へ飛び降りた。


クロールがボソッと呟く。


「お前らすごいな。俺がやったら骨が折れちまうよ」


「脈気使えよ」


俺が突っ込むと、クロールは呆れた顔でこちらを見る。


「あのな。お前らみたいに、みんなが脈気使えると思うなよ?」


クロールは肩をすくめる。


「なんで俺がここに来る時、サラと一緒にレイルに捕まって来たと思ってんだ」


足元を見ると、クロールの足は細かく震えていた。


ビビらなさそうな性格なのに、震えるんだな。


その時――


「ウワー! アレナンダー!」


サラの大声が夜の街に響いた。


大通りに出たサラが叫んだのだろう。


俺はクロールの腰を掴み、体を引き寄せる。


そのまま大通りへ向かって飛んだ。


「行くぞ」


「ちょっと待てよ、こんな気持ち悪い飛び方――」


クロールが何か言っているが構わない。


俺はそのまま屋根から飛び降りた。


――ダンッ!


わざと大きな音を立てて着地する。


暗闇の中、俺たちの姿はシルエットのように浮かんでいるはずだ。


「なにあれ……」


「逃げろ!」


「王国兵士様を呼べ!」


街の人々が悲鳴を上げながら逃げていく。


その中を、サラがこちらへ走ってくる。


そして俺の手を掴んだ。


「ダレカ、タスケテー!」


サラがカタコトで叫んだ。


俺とクロールはそれを聞いた瞬間、同時に街の中心へ向かって走り出した。

サラはわざと引きずられるように動く。


「レイル、少し足が速い」


クロールが息を切らしながら言う。

仕方なく俺は少しだけ速度を落とした。


「喫煙者に運動はキツイんだよ」


「頑張って走ってくれ」


俺がそう言うと、クロールは何かをぼそりと呟いた。

だが、何を言ったのかまでは聞き取れなかった。


「レイル、前から来てるよ。兵士たち」


サラが背後から小さな声で状況を教えてくる。


「キャー! タスケテー!」


サラが叫ぶ。


その直後――


前方の路地から三人の兵士が飛び出してきた。

すでにジオガンをこちらへ向けている。


「ダメだ。女性が人質になっている」


兵士の一人が叫ぶ。


その言葉を聞いた瞬間、俺はくるりと反転した。


そのまま――跳ぶ。


クロールとサラを引っ張りながら、一気に三階建ての屋根の上まで飛び上がる。


ドンッ!


なんとか屋根の上に着地する。


「いいか、魔族だけを狙うんだ!」


兵士の声が下から聞こえる。


次の瞬間。


ジオガンの紫色の光線が、俺の背後を貫いた。


俺は瞬時に脈気を背中へ集め、防御する。


光線が脈気に弾かれ、夜空へ散った。


「俺じゃなくてよかった」


クロールが横で安堵の表情を浮かべている。


俺は二人を引っ張り、屋根の上を走り出した。


一つ隣の屋根へ。


さらにその隣の屋根へ。


夜の街の屋根を、俺たちは駆け抜けていく。


俺たちはなんとか、関所の前にある建物の屋根まで移動してきた。


しかし、関所の方を見て俺は思わず息を呑む。


そこには――多くの兵士が集まっていた。


朝に見た高圧的な男。

そして昼に俺たちを止めた男も、その中にいる。


高圧的な男が中心に立ち、何かを話しているようだった。


「誰か、あいつらの話が聞こえるか」


クロールが小さな声で尋ねる。


俺もサラも首を横に振った。


「そうか」


クロールは軽く息を吐く。


「まぁ、大方見当はつく」


「街に魔族が入るなんて、本来あっちゃいけないことだ。関所の連中は今ごろ、高官から責められてるんだろう」


そう言ってクロールは立ち上がった。


「サラ。一芝居できるか」


「おーけー。なにすんの?」


サラは軽い調子で了承する。


クロールはサラを見て言った。


「お前のそのマント、もういらねーから俺に寄越せ」


そう言うなり、サラのマントを奪い取る。


その瞬間。


サラの背中に生えた羽と、黒い尻尾が露わになった。


「おい! そんなことしたらサラが魔族だってバレるだろ!」


俺が言うと、クロールは落ち着いた声で返す。


「もうバレたって構わねぇだろ」


そして関所の方を顎で指す。


「なんたって、こうなった以上――正面突破するしかねぇからな」


俺は納得できなかった。


「関所の兵士がいなくなるまで待てばいいだろ」


するとサラが横から言う。


「関所の兵士は、たぶんいなくならないよ」


サラは冷静な顔で続けた。


「私たち魔族領でも、人間が入ってきたら絶対に見つかるまで出入り口は塞ぐもん」


そう言うと、サラはその場で屈伸を始めた。


軽く体をほぐし、準備運動をしている。


そして俺の前まで歩いてくる。


「ちょっと脈気補充ー」


そう言ってサラは俺の手を握った。


次の瞬間。


白い線のような脈気が、俺からサラへと流れていく。

 

次第に、サラの体へ流れていた脈気が止まる。


「じゃあ、行こう」


サラはそう言うと、誰よりも先に関所の前へ飛び降りた。


「俺たちも行かないといけなくなったな」


クロールは足を震わせながら、俺が飛び降りるのを待っている。


「ああ、行こう」


俺はクロールを掴み、そのまま一緒に飛び降りた。


ドンッ――!


地面に着地する。


「はーい、注目」


サラの声が夜の関所に響く。


「私、魔族のアロって言いまーす」


なぜかサラは、関所の兵士たちに向かって自己紹介を始めていた。


兵士たちは槍とジオガンを構え、こちらの様子を探っている。


「報告では、奴らはジオガンが効かない皮膚の硬い種族だと聞いている」


高圧的な男が兵士たちに説明する。


サラはその男を見て、楽しそうに叫んだ。


「あー、喋ったね。もうダメでーす」


高圧的な男は大きく口を開け、サラを見つめている。


そして、口をパクパクと動かしていた。


……俺は一瞬、サラを煽っているのかと思った。


違う。


サラの能力だ。


「隊長に何をした!」


槍を持った兵士がサラへ突っ込んでくる。


俺は咄嗟に動いた。


兵士の槍を掴み、そのまま――


バキッ!


真っ二つに折る。


「おまえは……!」


兵士が何かを言いかける。


その前に、サラが軽く手を振った。


「はい。君も何も言わないでね」


兵士たちは一歩だけ後退した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ