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ボクの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第一章 ボクの成り立ちと今
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報復

 翌日、誰も連れることなく、渚は1人で獣牙と呼ばれた組織の領域に踏み込んだ。周りには獣人の亜人だらけで、どれもギラついた目で渚を見ていた。渚はそんな中、1人で獣牙の本拠地に乗り込む。

 入り口から入ってのカウンターでは、ウサギの獣人が眼鏡をかけて座り込んでいた。


「すみません、獣牙にどう言ったご用件で…ひっ⁉︎」


 渚の姿を見た途端、ウサギの獣人は慌てて扉の奥へと入っていった。直後、ガチャリと鍵の閉まる音がする。

 恐らく、彼女がナハトヴォルフからの刺客だと分かっていての行動だろう。扉は固く閉ざされて開かなくなるが、この程度、渚にとって問題ではなかった。


「よっこいしょっ!」


 扉を思いっきり蹴って蹴破ると、渚は中に入る。そこでは、獣牙の構成員達が待ち構えていた。


「な、ナハトヴォルフの女王だ! 昨日構成員を傷だらけにして送り返したせいで、俺たちを襲いに来やがった!」

「やーどうもどうも、その節はお世話になったね、ボクの仲間が」


 渚が銃の代わりに手榴弾のボタンを押すと、その場で投げた。獣人の男達は慌てて手榴弾を投げ合うが、渚が持ち出したのは裏路地で作られた強力なプラズマボム、一度起爆すると周囲を軽く抉り取るほどの強力なグレネードだった。


「ちく、たく、ほら、早くしないと爆発しちゃうよ?」


 わざと起爆時間を遅くして、男達が慌てる様子を見ていたが、こちらに投げ返されたのを見ると、渚はそれを蹴り返した。直後、爆発が起き、その場にいた者達を周囲の空間ごと抉った。

 爆発の音を聞いて獣牙の構成員がゾロゾロと現れる。それぞれ銃火器や剣などの武器を持っては渚を襲おうとしていた。


「このガキ! 女王と呼ばれてるからっていい気になりやがって!」


 狼の獣人が渚に向けて剣を振る、だが渚はそれをするりと横によけて狼の獣人の頭部に銃口を突きつけ、ショットガンで頭を吹っ飛ばした。


「撃て! 鉛玉を喰らえば流石に奴は死ぬ!」


 獣牙の男達が銃を撃ちまくる、すると、銃弾は渚に当たりこそするが、影に変えるかのように渚は弾丸をすり抜けた。


「バカな⁉︎ 裏ルートで手に入れた白銀弾だぞ! 何で当たらないんだ⁉︎」

「"カゲロウ"…ある妖狐の能力を模倣してね、ボクなりに完成させたんだ。まぁ向こうは焔で幻を作ってるけど、ボクのは違う、影の中に潜んでは攻撃を避けてるからね」


 渚は銃弾を避けもせずに通り抜けていくと、一気に男達に近寄り、1人を蹴り飛ばした。鉄の靴底が使われたブーツで蹴られたせいか、骨を砕かれると、男1人は倒れる。


「よくもぉ!」


 違う男が銃口をもう一度渚に向けるが、ケープが変形してコウモリの羽へと変わり、それが盾になると銃弾を弾き返す。

 反対に渚は男の腰にリボルバーライフルを押し付けると、銃で真っ直ぐぶち抜いた。高威力の弾丸が通り過ぎ、男の体に見事な風穴が開く。


「あはっ♪ 昨日撃った相手の仲間に撃たれる気分はどう?」

「ぐぅ……クソッタレが…!」


 男が腰を押さえながら渚に銃を撃ち続けるが、渚はそれをひらりと回避すると、男の首を腰にあったマチェットではねる。


「バケモノが! さっさと死んでしまえ!」

「このクソ女め!」

「えー、バケモノとかクソ女とか口悪くない? ボクそんなに悪者扱い? まぁ、悪者ならそれはそれでいいけど、ね!」


 斧を持ったライオンの獣人の攻撃を避けると次はクマの獣人が殴りかかってきた。渚はリボルバーライフルを撃つが、流石に種族の差か、一発撃っただけでは死なず、渚は壁際まで追い込まれた。


「死ねぇえええっ!」

「危ないっ!」


 斧が振り下ろされるのを渚は丸くなって転がって避けるとライオンの獣人の背中に向けてリボルバーライフルを撃つ。

 だが今度はただの弾じゃない、命中した相手の力を"原初の状態に還す"白銀と呼ばれる素材が使われた弾だ。

 それが命中すると、ライオンの獣人は猛烈な痛みを感じ、その場にガックリと膝をついた。どうやら特殊能力か何かで痛みを抑え込んでいたらしく、体のあちこちにできた銃創に、男は悶え苦しみ、倒れる。

 今度はクマの獣人にライフルを向けるが、クマの獣人は銃口を向けられた途端それを弾くと、渚を思いっきり殴った。


「うぐっ」


 鋭い爪が渚に突き刺さり、彼女は室内をゴロゴロ転がっては倒れる。


「手間かけさせやがって…ぶっ殺してやる!」


 クマの獣人が拳を振り上げるが、次の瞬間、眉間をリボルバーライフルで撃ち抜かれた。


「いったいなぁ…! 頭から血が出たじゃんか…! まぁボクにとっては問題ないんだけどさ」


 サキュバスの精力を消耗することで、傷口を即座に再生させると。渚は獣牙のビルの一番奥へと向かった。そして、ドアを開けると…そこは社長室だった。


「なんだ? 人間のガキが1人……いや、お前、人間じゃないな、何者だ?」


 そこでは、ヒョウの獣人がスーツを着て椅子に座っていた。渚は挨拶代わりに机にマチェットを突き刺すと言う。


「昨日はボクんところの仲間がお世話になったね、そのお礼にしに来た」

「お礼だと? 下等な人間風情に躾をしてやっただけなのに礼とは随分と大層じゃないか。えぇ?」


 男は立ち上がると、渚と面と向き合う。


「たった1人人間を躾しただけでうちの大半の戦力を殺すだなんて、お前は何者だ? ただのガキにしては殺しのセンスがありすぎる」

「あまり詮索しない方が身のためだよ」


 渚は銃を握ると、戦闘態勢に入る、逆に男は爪を出した。


「獣牙をすべる王の力を知れ」


 すると、男はものすごいスピードで近づき、渚の腹部を貫いた。


「かはっ⁉︎」


 カゲロウを発動させる暇もなく、容易く爪でやられ、渚は血を吐きながら膝をつく。


「下手に抗おうなどと考えない方がいい、この爪には白銀がコーティングされてある。今のお前はただの人間同然、痛かろう」


 白銀の効果によって、サキュバスの回復の効果も使えなくなり、さらにしばらくは普通の人間と同等の肉体となってしまった。渚は次に来た爪の攻撃をギリギリで避けるが、爪が頬を掠める。


「ほう、人の体に戻っても反応できるか、よくやる」

「このっ!」


 渚は反動に吹っ飛ばされながらリボルバーライフルを撃つが、男はそれを爪で切り裂くと、もう一度渚の体を貫いた。渚は抵抗するが、獣人と人間の前に力の差は大きくあり、何もすることができなかった。


「ナハトヴォルフの女王も所詮こんなものか、ただの諦めの悪いガキに過ぎやしなかったな」

「そう思うでしょ…でもボクだって、意地くらいはあるよ」


 腰からプラズマボムを取り出すと、彼女はスイッチを押した。それを見た男は目を見開き爪を引き抜く。


「まさか、ここで自爆する気か⁉︎」

「そんなわけ、ないだろ!」


 渚はプラズマボムを男の後方に投げつけると、強烈な爆発が起き、爆風で男は吹き飛ばされた。地面に倒れた男はすぐ立ちあがろうとするが、渚の足に頭を押さえつけられ…同時にリボルバーライフルを向けられる。


「しまっ…!」

「死ね! クソ野郎!」


 リボルバーライフルが火を吹き、男の脳天を貫くと、男は死んだ。渚はようやく回復してきた体にほうっと一息をつくと、壁に倒れ込んで座った。


「今日からここは、ボク達の領土だ」


 傷だらけの体でそう言うと、渚は天井を見上げ…ため息をついた。

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