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妖精と王子様のへんてこチャチャチャ(へんてこワルツ4)  作者: 魚野れん
理解できない結末

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42/84

10

 ロスヴィータはブライスとしばらくどのようにしてあぶり出しをするかについての案を出し合った。その間、エルフリートはひたすら魔法具をひっくり返しては光を当て、を繰り返している。


「フリーデ、何か分かったのか?」

「ん?」


 小さく首を傾げる彼は、相変わらず愛らしい。だが、今はそれを味わっている場合ではない。


「そろそろ、その魔法具に穴が開いてしまいそうだよ」

「簡単には穴なんか開かないよぉー」


 のんきそうな彼の頬をつつく。にへら、と相好が崩れる様に、強く言い出す気持ちが薄らいでしまう。ロスヴィータとエルフリートのやりとりを見ている男二人は、いつもの事だと慣れきってしまっており、役に立ちそうにない。


「うんっとね、ルッカとは違う視点で見たら、何か分かったりしないかなって思って観察してたの」

「それで?」

「分かったというか、なんと言うか……」


 ううん、と悩ましそうにするあたり、あまり良い結果は見込めなさそうだ。


「分かったと言えば分かったんだと思うけどね、ルッカに見てもらう必要があるかなって」

「とりあえず、現状で良いから聞いてみたい」

 しぶるエルフリートにロスヴィータが言葉を重ねると、ようやく彼は口を開いた。


「ルッカは刻まれている式を読んだのだと思うのね。彼女が式を引き出してみたいって言っていたって話から、私なら引き出さなくても擬似的にそれができる方法を持っているなと思ったのね。

 それで、式が浮かび上がる魔法で照らしてたの」

「なるほど……?」

「それで見ていたんだけど。この式すごく複雑みたいなんだ。アイマルならなんとなく分かってくれるかなぁ?」


 エルフリートはアイマルの方へ魔法具を突き出し、光を当てる。角度を調整した。


「ここ、式が飛んでるの分かる?」

「……専門ではないんだが」

「ルッカは共鳴型だって言ってたけど、もしかしたら、分割型なのかなって思ったんだ」

「分割型」


 ロスヴィータは聞き慣れない言葉に首を傾げる。ブライスの方は、知識だけはあるのだろう。顎を指先で撫で、考える素振りを見せていた。


「分割型っていうのは、使えるようにしたい魔法の規模が大きかったり、複雑だったりする時にやるんだけど……」

「フリーデ、その調子で話していたら日が暮れる」


 エルフリートののんびりとした説明に、アイマルがつっこむ。すかさずブライスがエルフリートが解説したかったであろう内容をようやくしてみせた。


「一つの魔石じゃ容量が足りない事が多々あるが、複数の魔石を媒体にする事自体が難しい。だから、普通の魔法具は一つの魔石で機能できるように作る。

 あまり耳にしないのも当然だな」


 ロスヴィータはブライスの説明も不親切だが、何となく察した。


「つまり、二つの魔石で一つの魔法を行使するというのは同じだが、機構が違う……という事か?」

「そうだ」

「共鳴型は、魔石一つずつにそれぞれ要素を詰め込んで、文字通り共鳴させるんだけど。分割型は、片方がもう片方に込められた式を読みとり、動作させる感じなの」


 エルフリートの補足に、ロスヴィータはぴんときた。


「つまり、この魔法具が分割型であった場合、シップリーの少なくとも四つある耳飾りで一つの魔法が構成されている可能性もあるという事か」

「さすがロス! 頭良い!」


 無邪気に喜ぶエルフリートの隣で、ロスヴィータはぞっとしていた。詳しくないが、この魔法具が四つ以上で構成される魔法など、絶対にろくなものではない。

 ブライスもアイマルも、それに気がついているのか、あまり良い表情ではない。


「フリーデ、この耳飾りの対だけで構成されている爆発系の魔法。どのくらいの規模になるか、見当付くか?」


 ブライスの硬い声に、エルフリートがさらっと答える。


「うーん、もともとの宝石の質を考えると、この魔石は結構良いレベルだから、一対の耳飾りで構成される魔法なら、ここくらいなら破壊できるんじゃないかなぁ?」

「……それは、まずいな」

 深い溜め息を吐くブライスの横で、アイマルが頭を抱える。四つ集まった場合の規模を思い、頭が痛くなったのだろう。ロスヴィータも一緒に頭を抱えたいくらいだった。


 しばらく沈黙が流れる。分からない何かを恐れ、動かずにいるならば、早く対処してしまった方が良いに決まっている。ロスヴィータは重苦しくなってきた空気を破った。


「ところで、この魔法具の中身が分からないと言う事は、だ。

 我々の手元にあるのが操縦機であると思われる」


 三人の頭が上がる。彼らの目を一人ひとり見まわしながら、ロスヴィータはあえて笑みを浮かべた。


「幸運な事に、これがない限り、何も起きないはずだ。紛失に気がつき、複製される前に終わらせよう。

 まずはルッカのところへ向かい、改めて調べてもらおうではないか」


 新しい情報を得るのは難しいだろうが、シップリーとカトレアを追い詰める為の材料は増えるはずだ。ロスヴィータはそんな望みを抱き、仲間に頷いてみせるのだった。

2025.1.13 一部加筆修正

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