児童連続誘拐事件
前文としてまず、このレポートを読んでいる人にお伝えしたい事がある。
この記録は、僕こと高坂 光来が、先に起こった児童連続誘拐事件について、実際に僕が体験し調査した内容と後日様々なメディアで公開された情報を元に推測と主観を交え今後同様の事件が発生した際の参考にするべく書いた、いわば僕の為の備忘録である。
前回のレポートの内容を殆どコピペしたことから分かる通り、僕としては今回はあまりやる気はない、基本的に、僕等としてはありきたりな相手だったと言わざる得ない。
ただ、少なくともシマハラ事件以降に発生した初めての大規模な裏の動きであり、その背景には記録の必要性を感じた為、レポートに纏める事にした。
まあ、注意事項は前回のレポートを見てくれ、書くのがめんどくさい、前文終わり。
まず、今回の事件を起こした集団と事件のあらましについて整理しよう。
今回の主犯となったグループは昔から居るチンケな街のチンピラ、ヤクザでもない世間一般で言う半グレ集団、暴対法の適用外となる緩いグループだ。
今まではシマハラ達、街の悪魔崇拝者達を相手に、子供の売買やそれに付随して天使の嘆きを卸され個人の使用者[※1]に売買を行っていた奴らだ。
※注記1:悪魔崇拝者として個人活動している者もそうだが、そもそも天使の嘆きはドラッグなのだ、依存性はあるし強烈な不安からの解放、人によっては悟りと言われるそれを求め悪魔崇拝者以外でも服用する者もいる。更に言うのであれば天使の嘆きによって齎される【魔法】は扱いにさえ慣れれば、警察にも対抗できる武器だ、ポケットに入るような一枚の紙片が拳銃と同等以上の存在ならば欲しがる者なんていくらでもいる。
色々書いていたが、要約すると、僕等が普段狩っていた相手だ、組織自体の差異はあっても大体こんなもんって感じのクズ共。
だが、その活動が今回の事件ではかなり大規模だった為に随分と忙しい事になった。
理由としては至極簡単で、今までの彼らの稼ぎ口が無くなったからだ。
シマハラ達、街の悪魔崇拝者達が一掃された事で彼らは材料としての子供の売買先と、天使の嘆きの仕入先を失った[※2]。
※注記2:天使の嘆きは材料さえあれば多少の知識があれば誰でも作れるようなものという世間一般の認識があるが、効率的に作り上げるにはノウハウがいる。生かさず殺さずの子供への拷問のやり方、調薬のバランス、特にシマハラ達はこの2点の研究に関しては相当なものだった。
慌てた彼らは今まで培った技術と商売道具を使って営業をしたのだろう、その結果彼らに目をつけたのが外部の悪魔崇拝者達だ。
ケンゴさんの話では、全国的に活動している根っからの反社会的勢力で資金力も山程あり国際指名手配を受けている者もゴロゴロ居るような組織だ。
悪魔崇拝者の下請け集団だった彼らは、新しい金蔓を見つけ子供を上納し傘下に入る事で、調薬や拷問などのOJTや製造施設のバックアップなどを受け、この街の最大手であったシマハラの後釜として一大勢力を築くつもりだったらしい。
詰まるところ、悪魔崇拝者のフランチャイズ店という訳だ、最悪にも程がある。
何にしてもこの判断はかなり現実的で双方にメリットがある話であったことは間違いない。
チンピラ共には言うに及ばず、悪魔崇拝者達としても勢力圏の拡大は願ってもない話だが、新しい街ともなれば子供攫いという避けられない生業故に、土地勘や警察の事情等を調べ人員を派遣し地元に馴染ませるコストは尋常なものではない、それが全部セットで残されているのだ、鴨が葱を背負って来るようなものだろう。
何はともあれクズ共が利害の一致で手を組んだが、少なくとも立場は上の悪魔崇拝者達はチンピラ共に条件を出した。
一定数以上の子供の上納だ、実務能力のテストのようなものだったのだろうが、それが今回の事件の引き金になった。
シマハラがこの街から消え、僕等が入院している間に子供達の行方不明数は急激に増え始め、狩りを再開した時はちょっと目を疑う程だった。
まあ急に実働を増やした関係で随分と隙だらけで、 毎晩の狩りは嬉しくもない大豊作といった所ではあったのだけど、そのせいで僕等は圧倒的に数が足りないという問題に直面した。
なにせ警察が見回っているとはいえ、僕等は二人なのだ、そうポコポコ出てこられても身体は足りない、困る、本当にやめて欲しい。
極めつけは夏休み最終日の宿題とばかりに夕暮れ時からの同時多発拉致だ、寝不足で夜から動こうと思っていた僕等は完全に虚を突かれ、そのうえリーベまで拉致されていた。
結果的には一網打尽となったが、過程としては僕等の弱点故にかなりギリギリになってしまった。その点は海凪さんの活躍に感謝したい。
そう、平良 海凪さんについても書く必要があるだろう。
彼女はアユムのクラスメイトで、以前どこかでアユムが救ったこともあったらしい。
今回の事件で2回目の救出となり、2回も助けることができて運がいいのか、2回も拉致されるなんて運が悪かったのか微妙な所だ。
問題は夏休み明けにアユムのクラスに園長がリーベを編入してもらうよう手続きをしていたことだ。
バレるだろうなぁとしか思えない、腹芸なんてできる気もしないし、アユムもリーベもその適正はゼロだ、もう関係性とか隠せる訳がない、無理、不可能、考えるまでもない。
それにリーベを見て忘れる人間はそうは居ないだろうと言うのがアユムの意見だ、まあそうだろうなと反応を見ても理解った。
とはいっても大事にはならないだろう、海凪さんはアユムに深く恩を感じていたみたいだし、秘密にしてくれと言えばしてくれるだろう、特に彼女の事は良く知らないがなんとなくそんな気がした。
僕は人を見る目はあると自分を信じよう、ダメならダメでその時はその時だ、隠すのもめんどくさいし。
最後になるが、気がかりになる点がひとつ。
外部からの悪魔崇拝者達の空白地帯となったこの街へのアクセスは想定していたが思った以上に動きが早い。
そして、今回のチンピラ共との連携に関しても随分と大盤振る舞いだったように見えた、あの時点である程度の資金援助を行っていたし、逃走の為に船まで用意していたくらいだ。
悪魔崇拝者達は貧困層の人間も多いが、同様に資産家の率もそれなりにある。
金や地位を手に入れてなんでも思い通りなると思ったのに、その先にある【魔法】に手が届かないという事に我慢ができないという性質を持つ人は一定以上居るためだ。
今回の組織もその手のヤツだと思うが、それにしてもサポートが手厚すぎる。
これは仮定になるが、今回の目的はおそらく新しい土地への足がかりであると同時にシマハラの残した研究資料の在りかを探っていたのだろう。
彼の残した研究資料は膨大で、多くは警察の手にあるが未だ見つかっていないものもある。
論理的な真の誇大妄想狂が長年をかけ倫理や手段を問わず調べ上げた【魔法】の研究。
それは【魔法】研究において世界でも類を見ない貴重かつ重大な意味をもつ資料で、持つ者によっては途方もなく邪悪で力のある経典となり得るだろう。
それを元々の下請けである彼らから引き出せないかというのも目的だったと僕は見ている。
何にしても、【大魔法全書】に続く第二の世界を変えうる魔導書となる可能性がある物がこの街にはまだ眠っているかもしれない。
自分で書いておいてアレだが、途端にスケールが大きくなってクラクラしてくる、世界とかなんだよ馬鹿じゃないか?僕等は中学生だぞ、ケンゴさんなんとかしてくれ。
何にしても僕等は流入してくると予想される悪魔崇拝者達に対して場当たり的に狩りを続けるしかない、やれることをやるだけだ、という事でこのレポートを締めくくらせて頂く。
PS:
リーベが制服を着て光輪会をウロウロしていた。
隠せるかとか心配するのも馬鹿らしい、とっくに諦めていたが僕はもう気にする事すらやめる事にする。
どうせ同じクラスなのはアユムなのだ、頑張れ。




