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スクリーミングベイビィ  作者: おのこ
SS1:彼らは夜、狩りをする
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現代の子供達《ポジティブシンキング》

「で、その少年は礼も聞かずに去っていったと、ハードボイルドだね」


 フミはどこか呆れた顔でミナの話に相槌を打った。


「そうなのよ、うーむ痺れましたな」


 そう言って満足げにミナは腕を組みうんうんと頷く。


「いや、というかその事故ニュースで見たんだけどミナもそこに居たんだ、普通に警察沙汰になってた…というか死にかけた話を昼食の話題に出す?」


 ミナはその言葉を聞いて考える。


「確かに…家族にも言ってないし…ヒミツにしようと思ってたんだけど…」


「誰かに話したくて仕方なかった?」


「そう!」


 ミナは非常に楽観的な性格をしていると自覚していたが、事の重大さも解ってはいた。

 それでもなんとなくフミには話してもいいと思ってしまったので兎に角全部話してしまったのだ。


 フミは聞き上手で、一方的に話しても気まずい雰囲気にならない印象がミナにはあった。

 そろそろ友達と思っていたが、これはもう友達と言い切って良いかもしれないとミナは密かに考え直した。


「でもさあ、そのレッドキャップってどのニュースにも出てこないんだけど」


 ポチポチとフミはスマホでニュースを検索していた――弁当はいつの間にか食べ終わっている。


「そうなのよ、それが不思議で、でも所謂アングラ系の話題を扱ってる掲示板だと結構有名な話みたい」


 夜、街で悪さをするとレッドキャップという男が現れて成敗されるらしい、この街の都市伝説だ。

 曰く、恐ろしい怪物らしい、曰く、ウィザードであり同業を潰して回っている、曰く、本物の悪魔らしい、曰く、たった一人で大の大人達を片手で薙ぎ払ったらしい、曰く、実は妖精なんだよ、曰く、それって名前の話じゃん、曰く、曰く、曰く…世間では知られてないがその手の場所では話題は尽きない。



「掲示板って古風な…ミナ、謎の行動力あるよね、そういえばこの前空手始めたとか言ってたのも」


「そーう、そうなのよ、もう即日決めたの、やっぱ自分の身は自分で守らなきゃ!」


 事件があった翌日、ミナは親に頼んで空手教室へ通う事にした。

 両親は驚いていたが最近物騒だしと快諾してくれた、ミナはその際にフルコン――直接打撃のやり取りがある実戦式の対戦があるもの――を熱望した。


「いくら想定しても実際向き合うとビビっちゃったから、実戦よ実戦、練習とは言え人と向き合う場数踏まなきゃ動けないからね」


「ふぅん、で、どうするの?」


「どうするって?」

 ミナは首を傾げた。


「そのレッドキャップっての、探すの?」


「あー…」


 ミナは腕を組んで考えた。


「いや、それはしないよ、だって危ないもん」


 レッドキャップと名乗る少年は常に危険と隣合わせだ、ミナが探すと慣ればそれ相応の危険がつきまとう。

 ネットで探すだけなら兎も角、実際に探すとなればきっと先日の男達よりももっと恐ろしい事だって起きる、それは勘弁したかった。


「でもさ」


「悔しかったんだよ、何も出来なかったの、スプレーだって防犯ブザーだってあったのに、全然思った通りに動けなかった」


 ミナは素直に言う、あの時は驕っていたとはいえ想定もして居たのに動けなかった。

 悔しい、あんなに刺激を求めて背伸びをしていたのに、恐怖はもっと強烈なリアリティでその幻想を破壊した。

 自分と大して変わらない少年はあんなに見事に男達を倒したというのに、ミナは全然ダメだった。

 自らの色々な幻想を砕かれ、今はあの少年への強い憧憬だけが残っていた。


 あんな事はする気はない、でも。


「もし次に会ったら、お礼くらい言える余裕が欲しいもん、会わない方がきっといいんだろうけど」


 この混乱の時代に産まれた子供達には楽観的とも取れる図太さのようなものがあり、それはいつの間にか根付いていた。

 ミナにも同様に後悔を前向きさに変える力があった。


「そっか」


 フミは短く相槌を打って続ける。


「まあそれが妥当なんじゃないの?普通の女子中学生としては」


 フミもまた友人のこういった行動力を馬鹿にしない性格をしている、だからこそ聞き上手であり、むっつりとした顔をしてても結構話してくる友人が多い。


「でさ、話は戻すけど、レッドキャップってどんな感じなの?」


 フミはミナに首を傾げて聞いてくる、なんだかんだ好奇心はあるのだ。


「えーっと顔はわからないんだけど、うちのクラスで言うと…」


 そう言って教室の反対側でクラスの男子に罵倒を受けながら雑巾をかける義足の少年に目をやる。


「あー、アユム君くらいか、そりゃ小柄だね…まあ話を聞く限り似ても似つかないけど」


「そだね、ハードボイルドとは縁遠いもんね…」


 アユムは1年の1学期の間でも簡単に解ってしまう程、女子への対応がギクシャクする少年だった。

 赤面症、女性関係超ヘタレ、素直で人懐っこい笑顔から好かれてこそ居るがマスコット的な扱いが妥当だ。


「運動神経は義足か本気で疑うくらい良いんだけどねぇ…」


「確かにそこだけ見ればかなり条件は満たしてるんだけどね…」


 アユムが「クソったれー!」と叫んでいる。

 一応声も似てるけど流石にハードボイルドではないなと思い、ミナは嘆息した。


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