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助手席  作者: 狸
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うつらうつら

谷さんの運転は失敗を恐れてすぐブレーキを踏むこともなく、後部座席で座っていた私にはとても心地が良くつい寝てしまいそうな程だった。

彼女の次は自分なのにこうも楽観的になれるものなのかと自分でも感心していた。

あくまでも素人目では何の問題もないように感じた。

コースを回り終えると彼女は小さなため息をついた。

はかれた息は白くなり溶けていった。

それは自身のなさからくるものなのか不安から出るものなのか

終わったという安心からなのか分からなかった。


「橋元さん」


そう名前を呼ばれ後部座席から降りる。

運転席から出てきた谷さんは


「頑張って。」


と明るく言った。

外の寒さのせいか鼻の頭は赤くなっていた。


「うん。」


小さな声でそう言い私は運転席に乗り込んだ。

運転席に座りハンドルを握ると

こないだとは比べ物にならないほどに落ち着いていた。

心の中ではおそらく一度失敗したなら二度目も三度目も大差ない。

そう思っていたからなのだろう。

言われた通り進んでいくと不意にバックミラーに視線がいった。

そこには気持ちよさそうにうつらうつらしながら寝ている谷さんがいた。

そんな彼女をみて


ふっと体が軽くなったような気がした。


試験の時間はあっという間で気付けばコースを回り終えていた。


「では名前を呼ばれた方から順番にこちらに来てください。」


そう言われ突っ立って待っていると


「橋元さ〜ん!寝ちゃったよ〜。」


とあっけらかんとした様子でこちらに来る谷さん。


「バックミラーでバッチリ見たよw」


「あ。本当に??だってすごい気持ちよかったからついつい。」


「あれ確かに眠くなるよね。」


「運転上手だからだよ!ブレーキもグンッて止まる感じじゃなくてスーッて止まるからww」


「あはは。緊張感は寝てるの見て吹っ飛んだ。ありがとね。」


きゃいきゃい2人で楽しんでいると


「谷さん」


と教官に呼ばれ彼女は運転席に向かった。

少し話をしてこちらに向かってくる彼女の顔は

合格した!!と言わんばかりの笑顔でこちらに戻ってきた。


あぁ。どうしよう

今になって自分だけが不合格だったら。

そう思う反面彼女には笑顔を返した。

お久しぶりです。こだぬきです。

前もっての報告なく長い間更新できなかったこと誠に申し訳なく思っております。

仕事の都合上更新が今日になってしまいすいませんでした。

また読んでいただけると幸いです!!

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