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吉買通り商店街  作者: フミ
9/32

美味しいな 母さんの味 ああ越中 日本海味噌

♩Ah-ah, ah! Ah-ah, ah! ♩


「アアアアーア!アアアアーア!」

挿絵(By みてみん)

「私のアクビはロバート プラントよ。

やっぱり目覚ましはレッドツッペリンに限るわね。

久しぶりに 家のベッドで熟睡したぁ。

全く私ったら 山で迷ってツリーハウスなんて見つけちゃったから本来の目的 忘れちゃったのよね。

しかし あそこ高い場所にあるってのに、蚊がクソうるさくて ロクに眠れなかったわ。

その分12時間も眠っちゃったわ、よーしテンション上げて行くわよ!…

あれ?なんか上がんないわね…昨日 なんかあったのが原因のような…

思い出せないわ、眠り過ぎて脳が腐ったのかしら?

ちょっと私の足 納豆臭いから 納豆菌が脳まで行っちゃって 糸引いてんのかもね。

…な ワケあるかいな!

…ひとりツッコミってこれで合ってるのかしら?…

ああ…そうだった…」

挿絵(By みてみん)

「「亜希さんは自分を何だと思ってんですか!!」か…

あいつ 何で あんなにムキになってのかしら?

初対面の私 相手に頭おかしいんじゃない?

てか 私も お母さんの事とか言っちゃって何ムキになってたんだろ?…

ああああああああ!アタマ来る!!

何で 思い出さないようにすれば するほど あいつの顔が出て来んのよ!

アアアアーア!アアアアーア!」


「お姉ちゃん寝言?起きたの?起きたのなら早く下りて来て御飯にしよう。」


「起きたのよ!睦美、寝ぼけてるのはそっち、寝言で移民の歌を歌うヤツなんているわけないでしょ!」


「お姉ちゃん以外はね、いつも大声で歌ってるのに 自分で目が覚めないの?

フルートで練習してる曲とか 本当にフルート吹いてるみたいに歌ってるわよ。」


「ちょっと 嘘でしょ?!それって変人じゃない!」


「知らなかったの?自覚がないのが本当の変人なのよ。

フルートの吹き語りとかも出来るんじゃない?

ジミヘンって人は 歯でギター弾きながら歌ったんでしょ?」


「睦美 あなた いろいろ間違ってるわよ、歯でギターにしろ フルートにしろ、歌えるワケないじゃない。

ブベラブレラベラってしか発音出来ないわよ。

まあ ブベラブレラベラって歌詞の歌なら歌えるけどね。」


「あははは!やっぱり変人じゃない。

お姉ちゃん いつまでも二階とキッチンで話してないで早く下りて来てよ。

ちょっと お鍋見ててほしいのよ。」


「今行く!うんこでしょ?うんこなんでしょ?!」

挿絵(By みてみん)

「もう!可憐な女子高生はうんこしないし、女子音大生は うんこ うんこ連呼しないの!」


「うんこ うんこ言ってるのは睦美の方じゃない。

はい、お鍋 見てて あげるから早く ひり出しておいでよ。」


「もう!ひり出すって もう!

うふふ やっぱりお姉ちゃんがいると 賑やかで楽しい。

昨日も言ったけど、合宿があるなら あるって言ってよね、本当に心配したんだからね。」


「ああ…ごめんね、急に決まってさ、あのロッジ電気 通ってなくて携帯 充電出来なかったのよ…気をつけるよ。」


「どうせ 私が言っても忘れちゃうんでしょうけどね。

でも いいの、私は お姉ちゃんのお母さんだから、心配するのが仕事だもの。

一煮立ちする直前で火を止めてね、あーもれる!もれる!」


「もれるって それ 普通オシッコ…

私 何 嘘ついてんだろ、昨日 帰るなり合宿だったなんて…

いつもは 野宿したくらい笑って言っちゃうのにさ…

ああ!また あいつの顔!アアアアーア!アアアアーア!ウィーカムフロン…

ヤバい あんまりイラつくからワンコーラス行くところだった。

ああ、そうだ!あいつ お味噌汁に麺つゆ入れるって言ってたわね。

ちょっと これ美味しくして 驚かせてやろっと。」


「おはよう亜希、合宿だったそうだな、連絡もせずに全く。」


「ああ、おはよう お父さん、ごめんね。」


「あれ?亜希が 素直に謝った!今日は雨が降るな、いや 槍が降るか?はっはっはー!」


「うわあああ 超 面白いんだけど…

あのさ、お詫びと言ったらなんだけど、今日のお味噌汁 美味しく出来たと思うよ。」


「ほほう、やっぱり今日は雨だな、亜希が料理するなんてな。」


「ええと、まあ、そ、そういう事ではないんだけど…」


「ははは!やっぱりな、いつも睦美に任せきりだから 今日くらいは盛り付けだけでも二人でやるか。」


「そうだね。」


「♩今だ!出すんだ ブレストファイヤー♩

あっ!もうテーブルに用意されてる。

お姉ちゃんがやってくれたの?

今日はハリウッドのアクションモノで、ヒーローが教会のステンドグラスを割って登場しないんじゃない?」


「はあ?睦美それって珍しいものの例え?

分かりづらい!それにバットマンやらX-メンが必ずステンドグラス割って登場するとは限らないじゃん。」


「あはは、ミラ ジョボビッチは割って登場したよ、あの映画 本当 ありがちなシーンばっかりだったよね。

それより 食べよ、いただきまーす!

…ん?!何このお味噌汁?!勘違いだったらごめん、お姉ちゃん もしかして何か入れた?」


「美味しいでしょ?何入れたか当ててごらん。」


「ちょっと 余計な事しないでよ…」


「余計な事って何よ、美味しくなったならそれでいいじゃん。」


「お姉ちゃんは 何も分かってない!!」


「何よ 急に大きな声出して、昨日も今日もで やってらんないわよ。」

挿絵(By みてみん)

「昨日何があったか知らないけど、そうやって 自分の都合ばっかりで 分かってくれようともしない!」


「私が分からず屋だみたいな言い方やめてくれる?

いつも言葉に出して言わないのは睦美の方でしょ?!」


「私が言いたい放題 言っちゃったら どうにもならなくなっちゃうの!!

私がお母さんになって我慢してるから この家は うまくやってるんでしょ!!」


「何よ 恩着せがましい、そんなの誰も頼んでないわよ。

料理だって私 コンビニとかほか弁とかで 全然OKなんだけど。」


「言ったわね!!お姉ちゃんなんかにもう私の料理 食べさせない!!

毎日ほか弁の揚げ物 食べて太れ!!

そのハードコアな性格と丸々太った体で、よりいっそう男に見向きされなくなれ!!」


「望むところよ!あんたの料理なんか誰が食べるもんか!

男に見向きもされないのは睦美の方よ!

この男性恐怖症の夏なのに冬服女!!」


「亜希もう止めなさい言い過ぎだ。」


「何よ お父さん いつも睦美の味方してさ!

お味噌汁くらいでギャーギャー言われて たまんないのはこっちよ!」


「このお味噌汁は!私のお味噌汁は!お母さんのお味噌汁なの!!

私が守って行かなかったら !この家からお母さんが 居なくなっちゃうの!!

自由に好き勝手やって、ステージでライト浴びて注目されて!ちやほやされてる お姉ちゃんに、たまに気が向いたくらいで 手出しされたくないの!!

出てって!行きたい所に行けばいいじゃない!お姉ちゃんなんか だいっ嫌い!!」


「ああ 出てってやるわよ!こんな息苦しい家なんか頼まれたって居てやるもんか!!」


「死ね!死ね!このハードコア女!」


「うっせ!うっせ!この日陰女!」


ガチャンドゴンバタン!


「♩アアアアーア!アアアアーア!♩

ちくしょう!あれもこれも みんなあいつのせいだ!!

余計な入れ知恵しやがって!ああああ!また あいつの顔!出て来んな!

アアアアーア!アアアアーア!

うわあああああああああ!!」

挿絵(By みてみん)

「ごめんなさい おばさん!私どうかしてて全然気付かなかった!

怪我ありませんか?本当にごめんなさい!」


「大丈夫、大丈夫よ、亜希ちゃんの方こそ怪我はない?」


「ああ 私が悪いのに、私なんか心配なさらないで、お、お怪我の手当てをしましょ!

私の家まで…ああ!なんてバカなんだろ私!」


「あはは、本当に大丈夫よ、ほら 学校 遅れちゃうから早く行きなさい。」


「あ、はい!行ってきます!」


♩漢 漢 漢が 燃えるそれが定めよ 漢♩


「何で ここの学食 この歌ばっか かかってんのかしら?

歌ってる角田信朗さん格闘家のくせに妙に歌上手くて気持ち悪いのよね。

しかも この後 男が惚れたり濡れたりするのよね…ああ気持ち悪い!!」


「違うわよ亜希、男じゃないわ漢よ!」


「あ、樹里 いいとこに来てくれた!

B定食 おごって。」


「ダメ 。」


「じゃあ、お金貸して。」


「ダメ、借りて不仲になるよりもよ。」


「ええ?!居酒屋の壁に貼ってあるような事言わないでよ、じゃあ、一口ちょうだい。」


「それなら いいわ、私ダイエットしてるから。

それより あんた凄い げっそりしてるわね。

一口って言っておきながら根こそぎ行かれそうだから やっぱりダメ。」


「ええ?!そんな事言わないでよ、朝から何も食べてないのよ。」

挿絵(By みてみん)

「永島 おごってやろうか?」


「ちょっと亜希、金沢君よ!あんた どういう関係なの?」


「(どういう関係って言われてもね。

ギター科の この人と文化祭で知り合ってから 何となく気が合って、何となく付き合うのかなって感じのところだなんて説明出来ないわよ。)」


「なあ、永島 おまえ昨日まで裏山で野宿してたんだって?

何やってんだよ?マジウケるんだどwwwwwマジ意味わかんねwwwww!」


「まあ そうだけど…怒んないの?」


「え?何が?wwwww!」


「うわっ、薄っぺら。」


「え?何が?」


「いや、何でも無いよ。

(何でもなくない、何この違和感?!

私なんで怒んないのとか聞いてんの?

薄っぺらとか言ってんの?

嫌いになった…そう!たった今 こいつの事 強烈に嫌いになった!

なんで?そもそも なんで こいつと付き合うって思ったの?

嫌じゃなかった、不愉快じゃなかった、私の言う事に同意してくれた。

それだけ?他には?何も無い!こいつの言ってくれた言葉、してくれた事、心に残ってるもの何も無い!

こいつ私の事 真剣に考えてくれてない!心配なんかしてくれてない!


「亜希さんは自分を何だと思ってんですか!!」


また あいつ!佐藤 実樹貴!


「命があったって心が死んでしまう事があるんだ!!

大切な人がいなくなったら、本当の意味で前向きになんて生きて行く事なんて出来ないんだ!

いくら時間が経っても癒えない傷があるんだ!!

僕より年上のくせに そんな事も分からないのか!!」


ちょっと やめてよ!一々 出て来ないでよ!

そんな怖い顔して怒んないでよ…)」


「どうしたの亜希、顔色悪いわよ、あんたお腹が空くと土佐犬になるから怖いわよ。」


「え?!何でもないの…って!土佐犬って何よ!せめて内田裕也か亀田興毅か大物女優にしてよ!」


「それな!マジウケるwwwwww!」


「うわっ こいつの言ってる事 全部 定型文。」


「え?何?」


「私の言ってる事 分かる?分かんないでしょ?

いきなりで悪いんだけどさ、もう話しかけないでくれる?

それじゃ…」


「おい!ちょまてよ!」


「うわっ また どっかで聞いたような台詞!

つきまとうなって言ってんだよ!コピペ男!!」


「ひいいいいい!!」



♩隠しきれない移り香が♩

挿絵(By みてみん)


「移り香ねえ、こんな歌 流れて来たら 嫌でも あの革ジャンに目が行っちゃうよ。

亜希さんか…かわいい人だったな…

うわあああ!何 言ってんだ俺!

あんなハードコアな女 かわいいワケあるもんか!

じゃあ何で俺、出入り口のドア さっきからチラチラ見てんだろ?

開店前だし、八百昌さんは ああ言ってたけど、昨日の今日で来る訳ないだろ…

うわあああああああああああああ!!」

挿絵(By みてみん)


「お腹すいたぁぁぁあ!!ハードコアな女って誰よぅ!!

うわあああああああああん!」


「ど!どうしたんですか?!またお腹空かせてるんですか?

とりあえず座りましょ?ね?ね?」


「怒ってない?ねえ、怒ってない?」


「怒ってませんよ、今マスターと僕の まかない作ってたんです。

でもマスター 今日も遅くなるって言ってたから二人で食べましょう、ね?ね?」


「やさしいいいい、うわあああああん!」


「もう そんな号泣して どうしたんですか?」


「分かんない!分かんないけど あんたの姿が見えたら こうなったの!

今日は朝から あんたのせいで ひどい目にあったの!」


「うう、よく分かんないけど ごめんなさい。

とりあえず 食べましょう!ね?ね?

食べたら きっと落ち着くから。」


「私は土佐犬なんかじゃない!」


「はい、はい、アーンして。」


「アーン、やさしいいいい、うわあああん!

んがっ!グボッ!ぐげ!」


「ああああ!はい お味噌汁、飲んで飲んで!」


「もう自分で飲むぅぅ!これ以上やさしくされたら死ぬぅ!

ああああああああ!美味しい!お母さんのお味噌汁だ!うわあああああん!」


「あははは!昨日のお味噌汁とは比べ物にならないでしょ?

これは きちんとダシを取ったヤツですから。」


「ああああ!ごめんなさい!睦美 ごめんなさいぃぃぃ!」


「あははは、睦美さんとケンカしたんですね、かわいいなあ亜希さんは。」

挿絵(By みてみん)




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