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吉買通り商店街  作者: フミ
10/32

けっ!イチャイチャするんじゃねえ!

♩わたしが おばやんになぁ〜ったら あなたは おじやんよ♩


「亜希さんもう おかわりいいですか?

落ち着きましたか?

(うわー綺麗な目だなぁ、でも言っちゃダメなんだよな恵さん言ってたもんな。)」


挿絵(By みてみん)


「うん、ごちそうさま、ホント美味しかった ありがとうミッキー。

ちょっと待って 洗い物なら私がやるよ、上げ膳据え膳じゃ申し訳ないよ。」


「じゃあ 二人でやりましょう。」


挿絵(By みてみん)


「(ちょっと 近くで見るとこの子 何?

昨日はお腹空いて意識が半分飛んでたから分からなかったけど、カワイイ、女の子みたい!ヤバいヤバいヤバい!

落ち着け 落ち着け!落ち着いたら曲が頭に入って来た!なんだこれ?!)

ちょっと なにこれ!誰が歌ってるの?」


「僕です。」


「あはは!あはは!嘘でしょ?ミッキーが?あはは!

言ってたわ!この前 畑仕事してる おじいちゃんに、弁当持って来た おばあちゃんが言ってたわ!

おじやーん!って、そしたら おじいちゃんが

おばやーん!って、言ってたわ!

あははは!あははは!

超上手いんだけど、超真剣に歌ってるんだけど!

だから面白いんだね、おちゃらけて おちゃらけやってたら 聞いてる方は冷めちゃうもん。」


「そうなんです、王様って人がディープパープルの曲を日本語に直訳して歌ってますけど、ハイウェイスターって曲の

♩高速道路の星ぃ〜♪ってところで 声が裏返って おちゃらけてるんで興醒めです。


高い声が出ないなら出ないで 一所懸命に歌ってたら最高だったんですけど。

目の付け所と演奏技術が素晴らしいだけに とても残念です。

どうせやるなら真剣にやるべきです、朝倉さや さんみたいに。

歌詞を方言に変えて歌っていても、歌唱力と言葉選びにセンスと真剣さが あるんでグッとくるんです。」


「あはは!何 真剣に分析してんの?ホント ミッキーって面白い、魚蔵の旦那と気が合う訳よね。


ねえ ミッキーって音楽やってるの?

ディープパープルなんて私ら世代じゃあまり聞かないんじゃない?

私もさ ここでバイトしてからツッペリンとか聞くようになったり、

モダンジャズとかブルースとかのアドリブに挑戦するようになったんだ。

それまではクラシックばっかりだったな。」


「僕は この前までサッカーばっかりやってました。」


「へぇ!意外!体育会系の匂いなんてちっともしないのに。

ああ、でも昨日 私を支えてくれた時 微動だにしなかったもんね。

華奢に見えて鍛えてあるんだね、ちょっと見てみたいかも…」


「あれは胸トラップです。

残念ですけど もう辞めちゃったんで試合は見せられなくなったんです。」


「いや、試合じゃなくて…ええ?胸トラップ?!

私 ワントラップボレーされちゃうとこだったの?!」


「亜希さん サッカー詳しいんですね。」


「詳しくは無いんだけど 小学生の頃やってたのよ。

割と一生懸命やってたんだけと 伸び悩みでさ…

あっ ちょっと待って、言直す…

割と一生懸命やってたんだけど 伸びしろ?!それが僕には無いと!フルートに専念するべきだと!」


挿絵(By みてみん)


「あはは!本田選手ですか?ダビッドソンですか?あはははは!」


「面白かった?でもさ本田って真似されても 伸びしろって言葉 使うからかっこいいよね。

でさ、話戻すけどミッキーの音楽のルーツって何?

ここで昔の音楽 知った訳じゃないよね、マスターの趣味に共感したからバイトするようになったんでしょ?」


「へぇ、亜希さんってロジカルなんですね。

僕の音楽のルーツは父です。

父は兼業ミュージシャンで、工場を経営しながら地元の企業の社歌を作曲したり、イベントで演奏してました。」


「えっ?ロジカルって理論派って事?なんで?なんで?

兼業ミュージシャンって兼業農家みたい!」


「偏見かもしれませんけど、女の人って感性で会話するから、質問に答えてない返事が来てもそのまま流して 会話が進む場合が殆どだと思うんですが、

亜希さんは 僕に質問した事の答えをずっと待ってました。

きちんと質問と応答が合ってないと気持ち悪いんじゃないですか?」


「そう!そう!そう!気持ち悪いのよ!

そのせいで友達からは クドいとか言われちゃうのよ。

でも なんか なんだろ…嬉しい…ちょっと違うな…初めての気持ちだから分かんないんだけど、ミッキーって本当の意味で本気で分かろうってしてくれるんだね…


ちょっとタンマね、話題がミッキーの音楽のルーツと、私のややっこしい性格の二つにダブっちゃって ややっこしいわ。


私ね 俄然キミに興味出ちゃった!

もう私の事なんてどうでもいいわ、お父さんはまだ音楽やってるの?どこに住んでるの?兄弟は?お母さんはどんな人?

なんでサッカー辞めちゃったの?」


「腸チフスになりそうです、一つずつお願いします。

まず住んでるのは亜希さんの家のすぐ近く、メゾン ド アイニージューに一人で暮らしてます。」


「あははは!あははは!メゾン ド アイニージュー!!まさかあそことは!

壁にカタカナで メゾン ド アイニージュー!

凄いセンスよね!アイ ニード ユーでもI Need Youでもない、アイニージュー!

ねえ、ねえ、どんな大家さんなの?」


「大変 親切にして貰ってます。

見た目は草間彌生さんと志茂田景樹さんを足してそのままです。」


「あははは!2で割ろうよ!足したなら割ろうよ!目が痛い!見ても無いのに目が痛い!

男性か女性かも分からない!」


「2年以上の付き合いですけど、男性か女性か僕にも分かりません。」


「あははは!あははは!あははは!死ぬ!死ぬ!お腹痛い!あははは!………


ねえミッキー…私に聞かれるの嫌?……」


「え?!何がです?

(ヤバい、亜希さんって頭いい!)」


「何がってキミ はぐらかしてるもの。

キミの事 私に知られるの嫌?私の事 嫌い?」


「(やっべえ直球来た!でもなんて真っ直ぐな人なんだろ。

やべえ やべえよ、知って欲しい!亜希さんに知って欲しい!

でも!ああ!ごまかしたってどうせバレる、全部話せないまでも正直に言うしかねえか!)

(いや)でも(きら)いでもありません。

父は僕が6歳の時 他界しました。

でも今は両親 共にあって母親に限っては2人もいます。

兄弟は去年 産まれたばかりの弟がいます。

はぐらかしてました、でも嫌いだから知られたく無いんじゃなかったのだけは分かって下さい。」


「そうなんだ…ごめんね…昨日会ったばかりの人間にそう話せる事じゃないよね。

2人もいるってお母さんの事が凄く気になるけどもう聞かない。

私も無神経に聞かれるの嫌だもの お母さんの事…

睦美と友達なら知ってるでしょ?」


「いいえ、睦美さんと知り合ったのは一昨日ですから。」


「うそ!!同級生なんでしょ?!なんで?

ヤバい ヤバい またキミのキャラへの興味で脱線するとこだった。

私のお母さんね、2年前乳ガンで亡くなったんだ。

遺伝するっていうじゃん乳ガンって、

アンジェリーナ ジョリーもさ、遺伝子検査したら相当ヤバいんで発病する前に取っちゃえって手術したみたいだし。


昨日も言ったと思うけど、それから私 焦っちゃってさ、今やりたい事は今しか出来ないんだって…

睦美やお父さんに心配かけてるのを お母さんの病気のせいにしてる訳じゃないのよ!


キミがその…真剣にさ…だから!私キミに分かって欲しいんだ!

キミに頭の悪いアバズレだって思われるの嫌なんだ!」


「初めから誤解なんかしてませんよ。

亜希さんから僕に届くものは昨日も今も全く同じです。

それに僕は頭の悪いアバズレになんか真剣に関わったりしませんから。」


「ホント?!嬉しい……ねえミッキーもう一つ聞いていい?

昨日 言ってた やっちゃいけない事とされちゃいけない事ってなに?」


「それは 色々とありますけど…」


「ミッキーさ 私が野宿したって聞いたら急に怒ったじゃん、怒ってくれたじゃん。

あれは やっちゃいけない事?」


「直接は人を傷付けないから そうとは言えないけど、

されちゃいけない事に繋がりかねないんで、それを分かってないみたいだから頭に来たんです。

少なくとも僕だったら 亜希さんみたいな人がですよ、人気の無い山の中で野宿してる所に出会したらですよ。」


「ナニこのバカ女とか思う?」


「やっぱり分かってない!!…ごめんなさい、またムキになって、落ち着きます…」


「私の方こそゴメン、もうチャカしたりしないから聞かせて。」


「はい、僕だったら、いや 僕じゃなくてもきっとそうだ、こんな幸運 自分の人生に2度と無いって思う!」


「ちょっと ヤダ それ褒めすぎよ!」


「違う!亜希さんよく聞いて、

僕の場合 少しは将来に希望があるから行動に移さないかも知れないけど、

何の希望も無い人なんて世の中には沢山いるんだ!

そんな人だったら この先の人生なんて消えて無くなっても、今目の前にある幸運を選んでしまうんだ!

幸運なんて言ったらダメだ!伝わらない、男の理性なんてあるようで無い…」


「分かった!分かったから言わないで!

私 怖い、やっと今になって分かった、震えが止まらないの…

私だけじゃない!私を探して睦美がそんな目にあったならっても思うと 怖くて死にそう!

キミが言ったように 睦美に何かあったら私の人生は終わっちゃう、

一生 前向きになんか生きられない!

やっと分かった!私 ホントにバカだ!

でも どうしよう!やりたい事 我慢して また息苦しくなったらどうしよう!

ホントに苦しいの!大きな手に押さえつけられて海の底に沈められるみたいな気持ちになるの!

ああ 思い出しただけなのに息苦しい!

私どうしたらいいの?!教えてよ!!」


「大丈夫、大丈夫だよ、亜希さんは大丈夫。」


挿絵(By みてみん)


「ホント大丈夫だ…息苦しくない…ねえ なんでキミはそんなにやさしいの?

身の上 何だか複雑だもの、きっと私なんかよりも辛い目に遭って来たから分かってくれるんでしょ?

自分のことじゃなくてキミのこと考えたら苦しくなくなったの!

ねえ これだけは教えて!キミの胸には消えない傷は今もあるの?本当の意味で前向きに生きていられるの?」


「うん、毎日楽しいし、マスターに拾われてからは 本当の意味での幸運な巡り合わせに恵まれてる。」


「ホント?嘘じゃない?」


「本当。」


「私も幸運な巡り合わせの1人?」


「うん。」


「よかった…なんだろ私 ホントおかしい!

昨日 会ったばかりのキミに わめきたおしてホントにヘンよ。

でもホントにヘンなのはキミの方、気を悪くしないでね 褒め言葉だから。

今まで こんなふうに接してくれる人なんていなかった。

キミは人気(ひとけ)の無い所で無防備なバカ女を見ても絶対に襲ったりしない、

自分の将来だなんて言ったけど それはやさしいからなんだ。

不思議な人 ホント キミって不思議な人…」


「いやいやいや!そんなたいした人間じゃないですよ僕は。

自分じゃ普通だと思うし、僕が変だって言うなら世の中が変なんだ。」


「そうかも…みんな同じよなことやって、同じようなこと言って、

人と違う事するのが 怖いんだね、怖いところまで人と関われないんだ…

うわっ!やだ!

(出て来んな!あご髭 薄っぺら野郎!その最たるもんがお前だよ!)」


「どうしたんですか?!」


「ううん 何でもない!

(やだやだやだ、この子の前で あご髭薄っぺら野郎の事なんか思い出したくない!)」


「何か 嫌な事 思い出させましたか?」


「違う 違う ちぃ〜が〜う〜。」


「あはは!あはは!亜希さんって表情が激変する!

睦美さんも表情豊かだったけど それ以上だ!」


「今 他の女の話すんなぁあ!!」


「ひい!」


「ごめん、ごめん、違うのそうじゃないの…

ああああ!睦美って表情豊か?キミとは会ったばかりなんじゃないの?」


「はい、良く笑う人だなぁと。」


「ウソ…そんな…

(睦美って男性恐怖症じゃなかったの?

誰も私を分かってくれないなんて スネくれてたけど それは私じゃない。

私は睦美の事 分かってやろうなんてしてなかったんだ。

ああああ!私ホントにバカだ!)」


「すいません、睦美さんとはケンカしてたんですよね、気を悪くしましたか?」


「違う、私 睦美に謝らなくちゃいけない!」


「はい、はい、良かった良かった。」


「でも 睦美って怒ると長いしホントに怖いの。

ミッキーも一緒に来て!そしたら勇気出る!

まだ開店時間に余裕あるでしょ?一緒に来てよ、ね、ね。」


「うー、僕のせいだとか言われたからな、うー、睦美さんみたいな可愛らしい人に怒鳴られたりしたら ヘコむよな、うー…

行きます!これを断わりゃ男がすたるぁ!」


「うわ!かっこいい!また違う一面 発見!

そうと決まれば 行こ、行こ!


ちょっと何 見てんのよ、これからイイとこなんだから あっち向いててよ、じゃあねバイバイ。」








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