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1.その日、世界は武器を手にした

それは、何の前触れもなく訪れた。

午前10時17分。


世界中の人間が、同時にその声を聞いた。

『――聞こえていますか』

男とも女とも判断できない、不思議な声だった。


耳から聞こえたわけではない。

頭の中に直接、言葉が流れ込んできたのだ。

『貴方の身近にある、

貴方にとって大切なものを手に取りなさい』

わずかな沈黙。


『それが、貴方の力となるでしょう』


たったそれだけだった。


説明も、理由も、質問を受け付ける時間もない。

しかし、不思議なことに誰も疑問を抱かなかった。

いや、正確には疑問を抱くという発想そのものが浮かばなかった。


その言葉の意味を、人類は理解していた。

理解させられていた。

人々は、それぞれの手を伸ばした。


最も多かったのは、スマートフォンだった。

現代人にとって、肌身離さず持ち歩く小さな端末。連絡手段であり、娯楽であり、写真や動画、数え切れない思い出が詰まったもの。

それを大切だと思う人間が多いのは、当然だった。

しかし、スマートフォンを手にした人々の中には、困惑する者も少なくなかった。

端末は武具へと変化したものの、その多くは鈍い光を放つだけで、まともな攻撃能力すら持たなかったからだ。

武具の性能は、持ち主の想いだけでは決まらない。

構造、適性、成長性。

複雑な機構を持つものほど、その力を引き出すために膨大な経験値を必要とする。

スマートフォンは、まさにその代表だった。


ある剣道家の竹刀は剣に。

ある鉄板加工業者の手には盾が。

またある者の手には、杖や弓が現れた。

亡き祖母から譲り受けた指輪。

幼い頃から肌身離さず持っていたぬいぐるみ。

使い古された野球のグローブ。

人によって、大切なものは違う。

そして、その選択に正解も不正解もなかった。

世界が、一斉に光に包まれた。

*

大阪府。

「……今の、何やったんや?」

俺、保科透は自分のデスクの前で立ち尽くしていた。

周囲を見渡すと、同僚たちも同じように困惑している。

「おい、透! 今の聞いたか?」

声をかけてきたのは、同じ部署の先輩だった。

「聞きましたよ。頭に直接って、どういうことですかね。」

「なんやよぅ知らんけど、 夢でも見てんとちゃう。」

そんな会話をしていると、隣の部署から一人の女性が顔を出した。

「透! そっちも聞こえた?」


白石美咲。

同じ会社に勤める、俺にとって一番気の置けない友人だ。

「聞こえたよ。美咲も?」

「そりゃもう。なんか怪しい宗教の勧誘みたいやったな。」

「世界規模の宗教勧誘は規模がでかすぎるだろ」

「それな。ほんで、大切なものって何?」

美咲は自分のデスクに置いてある腕時計を手に取った。

亡くなった祖父から譲り受けたものらしい。

普段から大事にしているのを知っている。

「私はこれやな。透は?」

「うーん……。」

自分のデスクを見渡す。

財布、スマートフォン、ボールペン。

どれも必要なものではあるが、大切かと言われると少し違う。

ふと、鞄の中に入れていた一冊の手帳が目に留まった。


黒い革表紙に、金色の留め具。

ずいぶん古びているが、俺が長年使い続けているものだ。

仕事の予定、思いついたこと、何気ない出来事。

何でもないことを書き留めてきた、ただの手帳。

理由はない。思いつきの部分が大きい。

「これやな。」

手帳を取り出した。

その瞬間だった。


パァァァッ!!

眩い光が手帳から溢れ出した。

「うわっ!」

美咲が驚いて後ずさる。

周囲でも次々と光が発生していた。

光が収まったとき、俺の手には見覚えのない物体が握られていた。

黒い革の表紙。

中央には金色の留め具。

見た目は元の手帳とほとんど変わらない。

しかし、ページの代わりに無数の薄い金属板が重なっていた。

「……本?」

思わず声が漏れる。

直後、目の前に半透明の文字が浮かび上がった。

【個体名:保科 透】

【武具名:未記載】

【武具種:特殊】

【等級:測定不能】

【固有能力:未覚醒】

「何これ……。」

「透、なにそれ? 本?」

美咲も自分の腕時計を確認していた。

彼女の目の前にも文字が浮かんでいるらしい。

「見てこれ、剣みたいやな。」

そう言って美咲が腕時計だったものを握り直す。

すると時計の周囲に銀色の光が集まり、細長い刀身が現れた。

片手で扱えるほどの長さの剣。

その刀身の一部は折り畳まれており、展開すれば盾としても使えそうな形状をしている。


【武具名:軽護剣】

【武具種:剣盾型】

【初期等級:B】

【成長適性:低】

【固有能力:守護】

【大切なもの:祖父から受け継いだ腕時計】


「透のよりは強そうやな。」

「Bって書いてあるしな。」

「透のは?」

「測定不能だってさ。」

「それ、強いのか弱いのか分からへんな。」

「俺が一番それ聞きたいよ。」

二人で顔を見合わせ、思わず苦笑した。


そのときだった。

――ドンッ!!

建物全体が激しく揺れた。

窓の外から、耳をつんざくような悲鳴が響く。

「なんだ!?」

窓際に駆け寄った俺は、その光景を見て言葉を失った。

道路の真ん中に、巨大な生き物が立っていた。

身長はおよそ三メートル。

全身を灰色の毛に覆われ、背中は異様に盛り上がっている。

二本足で立っているが、頭部は獣そのもの。

鋭い牙を剥き出しにし、近くにあった乗用車を片手で持ち上げていた。

そして、その足元には人が倒れていた。


「……化け物?」

誰かがそう呟いた。

次の瞬間。

化け物が車を投げ飛ばした。

轟音とともに車が建物に激突する。

悲鳴が広がった。

「逃げろ!!」

誰かの叫びをきっかけに、オフィス内は一瞬で混乱に包まれた。

*

それから数分後。

俺たちは会社の非常階段付近に集まっていた。

テレビからは全国各地で同じような化け物が出現しているという速報が流れている。

警察への電話も繋がらない。

世界中で、何かが起きている。

「……これ、どうなるんやろ。」

美咲が不安そうに呟く。

「分からへん。でも、ここにおっても危ない。」


その時、外から再び大きな音が響いた。

窓の外を見ると、先ほどの化け物が道路に倒れていた。

敵前に立っていたのは、スーツ姿の男性だった。

手には巨大な槍。

男性は震える手で槍を構え、何度も化け物に突き立てていた。

やがて化け物は動かなくなり、その身体が黒い煙となって消えていく。

残されたのは、赤黒く輝く拳ほどの石だった。

男性がそれを拾い上げる。

直後、彼の槍が淡く光った。


【コアを確認】

【武具の強化が可能です】

俺の目の前にも同じ文字が浮かび上がった。

【魔獣のコアを確認してください】

【武具の強化が可能です】


「魔獣……コア……。」

知らない言葉のはずなのに、その意味が自然と理解できた。

あの化け物は魔獣。

体内にある石はコア。

そして、それを使えば武具を強化できる。

「透、これ……。」

美咲が自分の武具を握りしめる。

俺も手帳を見つめた。

すると、手帳がひとりでに開いた。

一ページ目に、文字が浮かび上がる。

【固有能力が覚醒しました】

【武具名:未記載】

【固有能力:記録】

【効果:???】

「記録……?」

何を記録するというのだろう。

そう思った瞬間、再びあの声が頭の中に響いた。

『――第一段階の適応を確認しました』

『これより、選別を開始します』

選別。

その言葉に、背筋が凍る。

『生き残りなさい』

声が消えた。

そして、手帳の最後のページがひとりでにめくれた。

そこには、見覚えのない文章が記されていた。

『第一の記録。世界はまだ、始まったばかりである』

その下には、さらに小さな文字が並んでいる。



『記録者:保科 透』



「……俺の名前?」

思わずページに触れようとした、そのとき。

美咲の悲鳴が響いた。


「透!! 後ろ!!」


振り返る。

非常階段の奥。

そこには、先ほど道路で見たものと同じ灰色の魔獣が立っていた。

いつの間に入り込んだのか。

その口から、涎が滴り落ちている。

そして、俺たちを見つめていた。

俺は手帳を握りしめる。

美咲は震えながらも、軽護剣を構えた。

「……透。」

「ああ。」

「これ、もしかして私たちが戦うしかないんかな。」

「そうみたいやな。」

「最悪や。」

「本当に。」

二人で顔を見合わせる。

こんな状況でも、なぜか少しだけ笑ってしまった。

だが、笑っていられたのはそこまでだった。

魔獣が、こちらに向かって走り出した。

逃げ場はない。

ここから、俺たちの戦いが始まる。


だが、このときの俺はまだ知らなかった。

この手帳に記される記録が、いつか人類の存亡を左右することを。


そして。



この手帳が、人類を救うために存在するものではないということを。




AIで小説が書けるという事を知り、自分の頭の中でずっと思い描いていたストーリーを投稿してみたいと思います。AIがなかなか言うことを反映してくれなくて3回は喧嘩してます()。

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