3
葵に電話をかけた。今度は、待たされることはなかった。
「小林、考えがまとまったの?」彼女の声はひそやかで、まるで人に知られてはならないことを企んでいるかのようだった。
「伯母上、午後三時に、いつもの場所で」私は宣言の形で言った。
佐々木家の旧屋敷の西側にある花房は、葵の縄張りだった。硝子の天井の下には、彼女が丹精込めて育てた椿の木々が並び、どの一本も並々ならぬ値打ちがある。彼女はここで「他人に聞かせたくないこと」を話すのを好んだ——確かに、この場所の防音は申し分ない。
私が着いた時、彼女はすでにそこにいた。深緑の旗袍に、髪は隙間なく結い上げられ、細長い女物の煙草を指に挟んでいる。煙に包まれて、その表情ははっきりと見て取れなかった。
「座りなさい」彼女は向かいの籐椅子を指さした。その口調には、どこか見慣れた命令調が混じっていた——義母という立場で主導権を握ろうとしているのだ。
私は座らなかった。彼女の前に立ち、見下ろす形を取った。
「お聞かせください」私は口を開いた。「どのようにお考えで?」
彼女の煙草を挟んだ手が、一瞬止まった。客人でありながら主の立場を奪うこの態度は、明らかに彼女の想定の外だった。
「私が?」彼女は小さく笑い、煙草の灰を椿の鉢の中に落とした。「小林、動くべきはあなたでしょ。結衣はあなたの婚約者なんだから」
「だからこそ、彼女のことは私が取り仕切ります」私は彼女の目をじっと見据えた。「伯母上、私にこうしろとおっしゃりたいのですか? それとも、あなたの考えを聞かせろと?」
沈黙が花房の中に広がった。外では庭師が枝を剪る音がしている。規則正しい、かりかりという音だ。
葵は煙草を鉢の縁に押し消し、顔を上げた。その目には、抜け目のない計算の色が露わだった。
「あの佐藤という男、小さな零細企業で営業の真似事をしているそうよ。月収は五千にも満たない」彼女の声は冷たくなる。「借りている部屋も調べたわ。八百円よ。彼はもう昔のお坊ちゃまじゃない。そんな身分で、よくもまあ私の娘を狙えるものね」
彼女は袱紗包みから封筒を取り出し、机の上に押し出した。
「五百万。あれば彼も故郷に帰って家を三軒は買えるわ」彼女は私を見上げる。その目には、何か期待するような色があった。「小林、あなたが彼に会って、この金を渡しなさい。そして江城から立ち去れと」
封筒はぽっこりと膨らみ、銀行の封緘紙が巻かれていた。
「私に悪役を演じろと?」私は笑った。その声から感情は読み取れなかった。
「あなたは佐々木家の婿なんだから、こういうことは本来ならあなたが立ち回るべきでしょ」彼女の口調には、もっともらしい確信があった。「それに、男同士の方が話は早いわ。行って教えてやりなさい。結衣はもう貴方のものだ、と。その思いを断てと」
貴方のもの。
この五文字が彼女の口から語られると、まるで品物を売りつけるような響きがあった。
「伯母上」私は腰を下ろし、封筒に指を置いた。しかし、手は取らない。「お考えになりませんか。結衣がこのことを知ったら、どのように思うでしょう」
葵の表情が一瞬、固まった。
「彼女に知られることはないわ」
「お確かで?」
「私がうまくやる」彼女は昨夜、私が結衣に言った言葉を繰り返した。だがその口調はまったく異なっていた——すべてを掌握している者の確信に満ちていた。
窓の外で、庭師の影が揺れた。葵は突然声を潜めた。「それに、お義父さまには……知られてはならないの」
佐々木家の老人。佐々木家でただ一人、家柄ではなく人柄で人を見る方だ。もしこの五百万のことが知れ渡れば、葵のこの家での立場は風前の灯となるだろう。
「つまり、私に表に出て片をつけさせ、危険はすべて私に背負わせろと」私はまとめた。その口調は穏やかだった。
「あなたは聡明なお方だから、小林」彼女は否定しなかった。「これがうまくいけば、結衣の心も定まるわ。あなたと彼女——」
「私と彼女のことは、貧乏な男を一人追い出したところで決まるものではありません」私は立ち上がり、封筒を彼女の前に押し戻した。「この金は、お納めください」
葵の表情が変わった。
「どういう意味?」
「私の意味はこうです」私は袖口を整える。その動作は悠然としていた。「佐藤の件は、私が手配します。ですが、あなたのおやりになるような方法は、私の流儀ではありません」
「じゃあ、どうするつもりなの?」彼女は焦り、声を張り上げた。「あなた、昨夜結衣が夜中に彼に会いに行ったのを知っているの——」
「彼女は会っていません」私は彼女の言葉を遮った。
葵は口を開けたまま、しばらくそれを閉じることができなかった。
「あんた……どうしてそれを?」
私はその問いには答えなかった。立ち去ろうとすると、彼女は突然背後から私の腕を掴んだ。
「小林」彼女の声が変わった。これまでにない、弱々しい響きがあった。「あなたを追い詰めようとしているわけじゃないの。ただ……結衣は私の娘なのよ。あんな貧乏くさい男に、彼女の人生を壊させるわけにはいかない」
彼女の指は冷たかった。爪は手入れが行き届き、品よく整えられている。五十歳を超えてもなお、この顔に時の刻む跡はさほど見えない——それは金と手入れの品々が積み上げたものだ。彼女の言葉は、一言も信じてはならない。
「お約束します。佐藤は去ります」私は言った。「ただし、今ではありません」
「では、いつなの?」
「結衣自身が、きちんと結論を出した時です」
彼女は手を離した。その顔に浮かぶ表情は、複雑に絡み合って読み取れない。感謝? 不満? それとも、さらに深く張り巡らされた策略の一端か?
花房を出るとき、携帯電話が鳴った。結衣だった。
「小林、今夜は買収の祝いの席があるの。来てくださる?」彼女の声は落ち着いていたが、その奥にわずかな探りが見えた——昨夜の私の態度を、確かめようとしているのだ。
「もちろん」
「それで……少し早く来てもらえないかしら。ある方に、一緒に会ってほしいの」
彼女の口調には、かすかな願いの色があった。彼女が私に何かを一緒にしようと誘うのは、これが初めてだった。
「どなたです?」
電話の向こうで、数秒の沈黙があった。
「佐藤よ。彼が……あなたにお目にかかりたいんですって」
葵のさっきまでの言葉がまだ耳に残っている。そして、私の婚約者は、その幼なじみに会うよう、私を誘っているのだ。




