帰宅
「井ノ川、山田、良く帰って来てくれた」
俺たちのプライベート・エリアに帰ると、最初に俺たちを見つけたのが高橋で、走り寄って肩を組んだり、背中をバンバン叩かれた。
高橋の「2人が帰って来たぞー!」という大きな声での呼び掛けに、家から飛び出て来た辰徳も俺たちに走り寄って来た。
そして俺たちの妻も走ってくる。
「彰人からの手紙が届いたからある程度の事は知る事が出来たが、ザイディール王家をお前たちだけで倒すって言うのは如何に言っても無謀だろう?」
「辰徳、でも、俺たち成功したんだぜ」
「「おおお」」
高橋と辰徳からは、帰宅したばかりなのに悪いが先に報告をしてくれと頼まれた。
俺のサリーナと井ノ川の嫁さんは、俺たちが不在の時間が長くて心配しまくっていたのだろう、多少やつれており、高橋たちに説明をするのは良いが自分たちも同席すると言って譲らなかった。
そうなると高橋たちの嫁も「「私も」」ということになり、総勢8人が今は宿屋兼酒場となっている俺たちの最初の家に集まり報告会となった。
「土魔法って無敵だなぁ」
「でも、魔力が無くなってヘロヘロになった山田を抱えて逃げるのは、結構大変だったんだぞ。俺は斥候だからな。力技は苦手なんだよ」
「まぁ、終わりよければ全て良しだな」
「これで枕を高くして寝られるな」
「でも、山口まで体を乗っ取られたのか・・・・」
山口の事を嫁たちは知らないのだが、俺たちの世界から一緒に召喚された仲間だと説明すると、俺たちを慰める様に肩や腕を摩ってくれた。
「しかし、まだ隷属の首輪が残ってるかどうかは分からないんだよね?」
辰徳の言葉に俺たちは固まった。
王族がいなくても、勇者を隷属させれば色んな事をやらせる事ができるし、子孫を残させ、それこそ奴隷として扱えば貴族家としては儲けものだからな。
「後、王とか王子の落胤の有無も不明なんだよね?」と更に辰徳が畳みかけて来た。
そうだ!まだ俺たちは完全に安全ではないのだ。
考え込んでしまった俺たち4人を見て、高橋の嫁さんが「じゃあ、買い付けに外へ出た時には泊まらずに帰ってくるか、飲食は持ち込んだ物だけで済ませるといいですよね。だって薬を盛られていないならあなたたちの方が断然強いはずです」と言ったのを皮切りに、ウチの嫁も「ここは全部高い塀で囲まれて出入口は一つだけで丈夫な門もあるし、門番もずっといるので、知らない人は知ってる人が連れて来てもあなたたちが確認するまでは敷地内へ入れなければ危険はないんじゃない?」とか、辰徳の嫁も「買い付けそのものは人を雇ってさせてもいいのでは?」なんて、女性陣からもポンポン、俺たちを守るための意見が出て来た。
完全に安全とはまだ言えないけど、でも対策も取れている。
この世界で家族も出来、心許せる同郷の仲間が居る。
先に逝ってしまった奴らには悪いが、ここでしっかり根を下ろそう。
ってか、俺たちにはそれしかできないからな。
話も一段落ついたので、サリーナがソワソワしはじめた。
「あなた、そろそろ家に戻りましょう。疲れたでしょう?何が食べたい?何でも作るわよ」
俺の右手を握ったサリーナが軽く手をひっぱってくれた。
立ち上がり嫁の肩に腕を回して、「じゃあ、また明日」と仲間に声を掛けて家に向かった。
「ああ、彰人しっかり休んでくれ。また明日」
「「お休み。また明日~」」
4組のカップルがそれぞれの家の中に向かった。
「心配掛けたな。無事戻って来れて良かった。そうだな・・・・じゃあ、お前の得意な野菜炒めを頼む」
「はいっ」
サリーナの嬉しそうな眩しい笑顔が俺を見上げた。
拙作をお読み頂き、ありがとうございました。
軽いホラーを目指してみましたが、本来自分が読む本でもホラーってあんまり読んだ事がないので、本当に四苦八苦し、ホラーとはかけ離れた作品になった気がします。トホホホ。
ホラーとは何ぞや!難しかったです。
現在、『料理魔法なんて魔法あったんだぁ』と
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おしゃまな幼女が主役の『サーシャの場合』を掲載しています。
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よろしかったらそちらの作品もどうぞよろしくお願い致します。




