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開拓村へ向けて出発

「しゅっぱぁぁぁっつ」

 40代後半に見える白髪が混じった頭髪で、どちらかと言えば痩せているトボガンという村長の掛け声で、30人、いや35人くらいの貧しい感じの大人ばかりがゾロゾロとトボガンの後ろをついて歩く。

 殆どが男だが、女性も3人いた。

 一人はトボガンの嫁さんらしい。


 出発にあたり、村役場から一人だけ王都の門前で待機していて、門をくぐる時にリストの名前を確認した。

 この役人は俺たちと一緒に開拓村へ行き、リストに記載されており、且つちゃんと開拓村に到着した者に村の広場で支度金の金貨1枚を配布する役を担っている。

 この役人は、馬車ではなく馬に乗って移動している。

 帰路は1人になるため、彼の為に冒険者ギルドから護衛数名が付いている。

 この開拓団の移動のために国もかなりのお金を使っているということだ。


 開拓団と言えば聞こえは良いが、貧しく仕事のない者たちを王都から連れ出す意味合いもあるのだろう、役所というか国の力の入れ方は王都の治安維持という意味もあるのかもしれない。


 行列を見てみると、俺たちの馬車以外だとトボガンのと、後もう一人、こちらは少し身なり良い30代半ばに見える男がこれまた嫁さんと一緒に乗っている馬車しかない。

 トボガンは家財道具まで乗せた馬車に嫁さんを乗せているみたいだ。


 残りはみんな徒歩移動で、荷物は背中に背負っているモノか、肩に回している風呂敷の中身くらいしか持っていない様だ。


 俺たちの荷物は食堂で作ってもらった1か月分くらいの熱々の料理や4人分の家具まで含めて、全部2つのマジックバックに入れているので、馬車の荷台には俺たちの内3人がクッションやら座布団やらを敷き詰めて寝っ転がっているのだ。

 もう一人は当番制だが御者を務めるので馬車の前側に座る事になる。


 途中で「おらも乗せてけれ」なんて言って来る者も何人かいたが、「無料では乗せられない」と言えば、みんな大人しく引き下がった。


 一人を親切で荷台に上げようモノなら、「俺も、俺も」と残りの男たちが馬車に乗りたがるのは目に見えているからかだ。


「おらの嫁だけでも乗せてもらえねぇだろうか?」

 どこの方言かは分からないが、さっきの方言のキツイ奴と同郷の奴なのだろう、ねっとりしたお河童髪の男が女を一人連れて来た。


「ここには独身男しか乗ってないから、嫁さんならあっちの女性が乗ってる馬車に頼んだ方がいいぞ」と高橋が呈よく断ろうとしたが、「もう、既に頼んだんでさ。でも家具があって重たいから、これ以上は無理だべって言われた」と言うので、しょうがなく嫁さんだけは乗せてやった。

 

 50代くらいの横幅のある嫁さんなので、乗って来られると急に馬車の荷台が狭くなった気がした。

「ほんに、ありがとさん」と、ニコニコ顔で端っこにドスンと座った嫁さんは、異動中ずーっと話をして来た。

 本音を言うとちょっと五月蠅い。

 馬車が動いているとゴトゴトと騒音がある上にしょうもない話を聞かされると、耳に神経を集中しなくちゃいけないのは疲れてしまうのだ。


 だが、この奥さんの四方山話が俺たちにとっては集めたかった情報も含まれていると気付いてからは、意識して奥さんと話す様になった。

 例えば途中の何々村では牛の放牧が盛んとか、その次のほにゃにゃら村ではキャベツの栽培が有名だとか、近隣の町や村の情報を豊富に持っているのだ。

 家畜を買いたい俺たちには、このおばさんの情報はとっても役に立った。


「後、おめぇらぁ、今まで家畜を育てたことがねーなら、家畜だけじゃのぅて世話する奴さぁ一緒に雇え。素人ばっかじゃ育たねぇな」

 最後の最後に貴重な意見をありがとうござんす!

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