仕度 その2
「なぁ、手押しポンプとかいるんじゃないか?」
井ノ川が夕食の席でぶち上げた。
「ん?」
最初、高橋はあんまりピンと来てなかったみたいだった。
「ほら、俺たちのプライベートエリアを作るんなら、その中に井戸を作るだろう?そうしたら釣瓶って言うんだっけ?桶みたいなのをロープで括ってそれを手で上に持ち上げるとかするより、手押しポンプがあった方が便利じゃないか?」
「ああ。そういう事か・・・・。俺の水魔法があるから、究極井戸はいらないかもしれないけど、俺が病気とかした時に水魔法って言われても困るかもしれないな。だけど、釣瓶くらいは片手で簡単に持ち上げられるんじゃないか?」
「だけど、将来的には小作を雇うんだろう?ならポンプがあった方がよくないか?魔法をポンポン使っていると俺たちが勇者ってバレて、それが外に情報として流れるとヤバくないか?」
「なる~。じゃあ、ポンプも買うか」
井ノ川が我が意を得たりという感じで「ところがこの世界にはまだ手押しポンプが無いんだよ。で、この王に居る間に鍛冶屋に頼んで作ってもらう方が良んじゃないかと思ったんだ。設計なら俺、うろ覚えだけど分かるぞ」と言い出した。
「あ、それなら俺も少しなら覚えてるかも」と辰徳が言うものだから、二人に今晩中に設計図を作ってもらい、明日鍛冶屋へ行ってもらう事にした。
明日の俺と高橋の予定は馬車の操作をこっちの人間に教えてもらう様になっている。
本音を言うと、馬とかあまり近くで見たいと思わないんだけれど、まぁこれからの移動手段として考えるなら、操作は出来た方が良いものな。
「後さぁ、紙とかペンやインクとか、田舎では手に入らない物とかのリストアップも必要じゃないか?」
俺は辰徳が何を考えてこう言ったのか、大体の想像がついた。
こっちの世界は娯楽が少ない。
小説も漫画も映画も動画もゲームもない。
紙とペンがあれば、地球で読んでいた漫画とか小説の大まかなあらすじを書き留めておいて、手持無沙汰の時に読めば良いと思ってるんだと思う。
俺たちは4人だからお互いに読んだ事の無い作品も一つや二つではないと思う。
夜とか、家の中に居れば出来る事は少ないしな。
ちゃんとした文章でなくても、大体あらすじを読めば、ああ、あのシーン面白かったなとか、知らない作品なら登場人物とあらすじだけを読んで勝手に想像することもできる。
それに、トランプとかの遊具を作るにしても紙がいる。
あ、トランプ、いいかもしれない。
「なぁ、辰徳、トランプとかも作りたいから紙を買う時、厚紙があったらそれも買って来てくれ。ハサミや定規もあればそれも」
「山田!ナイスアイデア。トランプかぁ。いいなそれ!」と井ノ川がとても嬉しそうだ。
これで明日の予定の中に鍛冶屋の他に紙やインクを売っている所も行く事になった辰徳は、「念のため、針と糸とか、靴をもう一足づつとか結構リストから抜けてるモノもあるかもしれないから、今夜、高橋と彰人で追加のリスト作成を頼む。俺と井ノ川は手押しポンプの製図を引くから」とこっちにも仕事を振って来た。
宿屋で寝るだけなので、灯りさえあれば何かする事があるのは歓迎だ。
「じゃあ、明日はこっちのマジックバックを持って行くぞ」と井ノ川が俺たちが買った大振りなマジックバックを持ち上げた。
こっちのはダンジョンに入る為に買った物で見るからにマジックバックと分かる物だが、赤髪が持っていたのは時間停止が付いている上に一見してマジックバックとは分からないくらい小さいし、使用者が限定されるので国宝級なのではないかと思う。
なので失くしてしまうと二度と手に入らないかもしれない。
赤髪の方は普段は管理する者を一人にしてその者が責任を持って管理する様にということで、高橋が身に付けているのだ。
俺たちも4人の財産が増えて来たので、どっちのマジックバックに何を保管しているのかリストを作った方が良いかも知れない・・・・。




