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越境

 ザイディール国の隣国のハヤルマ帝国に入った。

 越境にあたり、御者は俺たちに金貨を2枚づつ渡してくれた。

「ソノマからの餞別です」

「ソノマには世話になった。よろしく伝えてくれ。で、この金貨2枚はどれだけの価値があるのか?」

「どこかの町へ入る時の税金と2週間の宿屋と食事代くらいにはなります」

「そうか。4人分も揃えてもらって本当にありがたいと伝えてくれ」

「わかりました。最後に大きな街へ入る時には身分証の提示を要求されます。その時ははじめて近隣の村から来たので身分証を持ってないと言って下さい。村の名前を聞かれたら、普通に村で生活していたから村の名前が会話に出て来る事がなかったので知らないで通してください」

 ソノマたちも色々考えてくれたのだろう。ありがたい。


 御者は俺たちが大きな川がある為に無人の国境線となっている所に、土魔法で作った橋を渡って越境したのを見届けるとそのまま元来た道を帰って行った。

 無事、ソノマの従兄が帰れることを祈る。

 あまり言葉を交わす事もなかったが、彼がいなければ俺たちは未だ囚われたままだったのだ。

 問題なく帰り着いて、ソノマに俺たちからの礼を伝えて欲しい。


 大体の町や村の位置は御者が教えてくれていたので、そこを目指して歩き始めたのだが、黒目黒髪が4人揃うと現地の人たちの記憶に残り易いのではないかと言う事になり、まず最初の町に入る時は1人だけが入り、染粉について調べ、人数分の染粉を買う事にした。

 途中の村へも食糧を買いに寄る事になるだろうが、その時も代表で一人だけが村人に接触する事にした。


 取り敢えずは御者が渡してくれた食糧があるので、上手く行けば村に寄らずに大きな街へ行けるかもしれないとのこと。

 勇者は身体能力が高いので走っても歩いても現地の人たちよりは早いし、疲労感も少ないはずとも言われた。


 山口と斎藤を残したまま逃げて来た事、罪もない門番を殺してしまったこと、王子は・・・・まぁ俺たちからしたら罪人だが、それでも自分の手で人を屠った事を考えると喉に何かがこみ上げてくるが、まずはどこかに落ち着かないと生き残れないので、走れるところまで走る事にした。


 御者の言う事は当たっており、疲労感はあまりない。

 結構な距離を走っているのに疲れは無い。

 こちらへ召喚されてずっと共同訓練で走り込みしていたのも俺らに利しているんだと思う。

 喉が渇けば高橋の魔法で水を出してもらい、腹が減れば御者からもらった肉を高橋の魔法で枯れ枝に火を点け焼く。

 夜間は野宿。

 順番に見張りをしながらなのでぐっすり眠る事は出来ないが、それでも命の危険を感じず、自由である事が疲労感を緩和してくれている気がする。


 斎藤や山口の事は極力考えない様にする。

 考えると寝れなくなるからだ。

 今はまだ後悔したり、立ち止まる時ではない。


 俺たちの足で3日間も走ったら、一度も村に寄る事なく、とうとう大きな街が遠くに見えて来た。

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