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自由

 まず、左中指の骨を折った。

「ポキっ」

「いだーーーい!」

 噛ませた轡でこごもって聞こえる。


「チョーカーを外せ!」

「いったーーーうぃ」

「チョーカーを外せ!そうでないと今度は骨を折るだけじゃなくって、手を切り落とすぞ」


「たぁかぁし!こいちゅらをごろせぇ!」

 第二王子は高橋が簀巻きにされているのを見ているはずなのだが、命令すれば動くと思っているらしく、まだ俺たちのチョーカーを外さない。


 命令もモゴモゴとくつわを噛まされているので、はっきりとは発音されていない。

 それもあってか、簀巻きになっているからなのか、高橋は動かない。


 王子の左足にナイフを深々を突き刺した。

「これでチョーカーを外さないならば、足を切り落とす」

 井ノ川の本気の脅しに第二王子の顔色は真っ青になった。


「わ、わがぁった・・・・」

 くぐもっていても、ちゃんと同意した事が伝わったので、まずは井ノ川のチョーカーを外してもらう事にした。

 変な事をしない様に、俺と辰徳が王子の背後左右に立ち、王子の肩に手を掛けた。

 猿轡を外した途端、「高橋、此奴らをヤレ!」と再度命令を口にしたが、簀巻きにされている高橋はミノムシの様に体をくねるだけだった。

 つまり、命令は声が届く範囲でしか強制力が無く、且つはっきりと言わないと拘束力を発揮しない事が今分かった。


「お前が俺たちを害する事は出来ない。さっさとチョーカーを外さなければお前を殺す。今ので命令は聞こえる位置にいなければ拘束力が無い事が分かったからな。もうお前をここで殺しても問題はないわけだ」と井ノ川が本気で王子を脅すと、王子はガタガタと震え始めた。


 観念したのか、とうとう「△〇×◇B+●」と何かの呪文を唱えた。

「カチャ」

「「「おおお!」」」

 井ノ川のチョーカーが外れた。


 辰徳、俺の順にチョーカーを外してもらい、最後に簀巻きのままの高橋のチョーカーも外させた。


「「自由だ!」」


「お前たちはどうして私がチョーカーを外せると分かったのか?」

「この馬車は誰が手配したのか?」

「このまま逃げおおせるとでも思っているのか?」

 第二王子は自分の立ち位置を理解していないらしく、一人で俺たちを詰問しようとしたが、高橋を簀巻きにしていたロープで簀巻きにしてやると漸く黙った。


「こいつはどうする?」

「殺すか?」

「こいつを殺したら斎藤とか山口のチョーカーは誰が外すんだ?」

「王族なら誰でも外せるらしいぞ」

「お前ら、どうしてそれを知っている!?」

 第二王子に俺たちが何を知っているかを知られてしまった。


 3人がまだ王子の前に立ったまま相談している所、俺はすっと王子の後ろに回り、剣を思いっきり簀巻きにされ横にしていた首に振り落とした。

 胴から離れた首を見、俺は川に走った。

 嘔吐が止まらなかった。

 胃の中身を全てまき散らした所で、高橋たちが焦って俺の所まで来た。


「おい、何で殺したんだ?」

「俺たちがチョーカーを外せるのは王族全員だと知っている事を知られたからだ。まだ王都に残っているクラスメイトが居るのに、俺たちが何を知っているかを知られると不味いだろう・・・・」

 高橋は自分の発言が第二王子の死に繋がったことに気付いたのか、漠然とした顔になった。


 俺はさっさとここから立ち去りたいので、躊躇なく魔法で穴を掘り、そこに王子を埋めた。

 また俺の手はかすかに震えている。


「彰人・・・・」

 辰徳が心配そうに俺の肩に手を掛け、馬車に乗せた。

「国境に向かってくれ」と御者に指示を出し、最後に乗って来て、俺の手首を軽く握った。


 普段なら男に手首を握られるとか気持ち悪いだけだが、今は誰かの温もりを感じる事に安堵する気持ちの方が大きかった。

 辰徳もそれが分かっているのだろう、俺の手の震えが治まっても、しばらくは軽く手を添えてくれていた。

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