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メッセージ

 訓練場の砂地に『特』と『秘』足で書き、その上から足で何度も踏んだ。

 辰徳がかすかに頭を縦に振った。


 俺は腰のあたりに隠しておいた例の布を掌で隠す様に取り出し、辰徳に素早く手渡した。

 辰徳は最初びっくりした様だ。

 手の中にあるものが布だと言う事は分かった様で、すぐに隠した。

 次に『山口』と足で書き、またその上から足でバッテンを書き込んだ。

 再び辰徳がかすかに頷いた。


 その後はどちらも何も書き込む事もせず、取り立てて会話もしない。

 この土に書き込むのは1回か2回までにしなければ、ザイディール国の奴らに気付かれる恐れがあるからだ。


 前回、山口がやからしてしまったので、この書き込みも山口はハブにされている。

 頭の悪いヤツに足を引っ張られるのは御免だというのがみんなの共通した考えだ。

 だから、誰かが文字を書きたい時は、他のヤツが必ず山口に話しかける様にしているのだ。

 山口に話しかけるヤツは1日、2日遅れて話の内容が伝わる様になるので損をするのだが、まぁ、最終的にはちゃんと伝わるので、その時々山口の近くに居る者がその役を果たして来た。


 辰徳は自分の貴族家の息子に、「訓練前だけどちょっとトイレ行って来ます。どうも朝食が体に合わなかったみたいだ」と言って、訓練場脇へ備え付けられたトイレに走って行った。

 恐らくトイレの中で俺のメッセージを読み、他のヤツに回してやる気なんだろう。

 本当は山口だけでなく、斎藤にも知らせない方が良いかも知れない。

 山口は直情的、斎藤は考えなしのヤツだから・・・・。


 そんな事を考えていたら、辰徳が真っ青な顔をして戻って来た。

 俺と辰徳のやり取りを遠目に見ていた高橋が「大丈夫か?」と辰徳に近寄り、肩を叩いた。

「ああ、なんとか大丈夫だ」と答えつつ、布を高橋に渡したのだろう、高橋が自分の腰のあたりを何度か触っていた。


 じきに訓練が始まった。

 俺たちは誰も自分担当の貴族子息に話しかける事をしなくなった。

 さっきの様に、どうしても許可を取らなければならない時は話し掛けるが、それ以外はもう口も利きたくないというのが心情だ。

 向こうも特段俺たちと話したい訳ではないみたいで、積極的に話し掛けて来る事はめったにない。

 命令をする時は別だがな。


 訓練が終って、今、誰と誰が俺のメッセージを持っているのかは知らないが、少なくとも辰徳と高橋には勇者の体乗っ取りという事が伝わっているのだと思う。

 二人の顔色が悪いのがその証拠だろう。

 後は誰が知ったのだろうか・・・・。

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