202.おでこの約束と、エルフの郷の柔らかいパンです。
私の事を毛嫌いしているヴィステリアさんのことだから、家の中ではいないものとして扱われるかと思っていたけど、夕食を作ってくれた。ミネストローネのようなスープととっても柔らかいパン。この世界のパンでこれほど柔らかいパンは初めてだ。
ずっと無言で食べていたヴィステリアさんは食べ終わると何も言わずに食器を片付け、何も言わずに自分の部屋へと行ってしまった。
食事中少し気まずい……と感じてしまったのは勘違いかな?
「食事の時はいつもこんな感じ?」
思わず隣に座っているルカ君に聞いてしまった。
「えっと……あ、うん。 こういう時もあるよ」
ということはさっきみたいに無言で黙々と食事をするのは稀だってことだよね。いつもなら楽しいはずの食事なのに私がいることで楽しくない時間にしてしまった。
「食事は部屋でとるようにするね」
「どうして!? お姉ちゃんのせいじゃないよ!?」
「凪がみんなと一緒じゃ落ち着かないみたいだから、凪と一緒に部屋での方がいいかもって思っただけだよ」
凪の方をちらっと見たら、「俺をだしにして何を……」とでも言いたそうな目をされた。なんて言えば傷つけないんだろうって咄嗟に出た言葉が凪を利用する形になってしまった……。
“「ごめん!」”
“「先に部屋に戻る」”
綺麗に食べほした食器を残して、凪はゆっくりと部屋を出て行った。その様子を見ていたルカ君は少ししゅんとしたような顔をした。
「たまになら一緒に食べてくれる?」
「そうだね、たまに一緒の食卓に着かせてもらおうかな」
「本当に!? 約束だよ!?」
そう言って目を瞑ったルカ君は顔を前に出した。そのままじーっと動かない。
これは一体……?そう思ってると目を開けたルカ君と目が合った。
「知らない?」
「何を?」
「約束のやり方だよ」
「う、うん……ごめん、知らないんだ」
「僕たちは約束をする時はおでことおでこをくっつけるんだよ」
なるほど、それでおでこを前に出すように顔を突き出してたのか。
もう一度ルカ君が目を瞑っておでこを出したので、そのおでこに自分のおでこをくっつけ目を閉じた。すると「えへへ」と小さく、嬉しそうな笑い声が聞こえた。おでこを離すとルカ君は満面の笑みをこぼしていた。
天国と地獄で例えるならば無表情で無言の圧を醸し出すヴィステリアさんは地獄。溢れんばかりの笑顔と可愛らしさを素直に向けてくれるルカ君は天国だ。




