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第9話 音のない村
町を抜け、
ノアはまた歩いていた。
背後に、
わずかに動き始めた町。
振り返ることはしない。
空は鈍く曇り、
遠くで雷鳴がくぐもって鳴った。
低い丘を越えた先に、
村があった。
だが、そこには音がなかった。
家々は並び、
人々の姿もあった。
だが、
誰一人、声を発していなかった。
笑い声も、
怒号も、
子どもの泣き声もない。
「……」
ノアは、立ち止まった。
右手のキューブが、
かすかに震える。
また、
何かがある。
ノアは、
無言のまま、村へと歩を進めた。