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第31章 問うことを禁じられた大地
そこは、整っていた。
何も不足はなかった。
何も混乱はなかった。
誰も苦しまなかった。
ただ──
誰も、
何も、
問わなかった。
それは静けさではなかった。
それは満足でもなかった。
それは、
“問いが存在しないように設計された沈黙”だった。
ノアは、
広場に立っていた。
そこには文字があった。
記号があった。
標語があった。
「理解は完了している」
「探求は不要である」
「この地に疑いは存在しない」
その言葉たちは、
土の上に、壁に、空にさえ記されていた。
人々は、笑っていた。
穏やかに。無理なく。
だが、その目には問いがなかった。
キューブは、
かすかに震えていた。
ノアは、
歩みを止めなかった。
その震えが何を意味するのか、
ノア自身にもわからなかった。
だが、
それだけが、
まだ世界のどこかに
“残っているもの”があることを
告げている気がした。




