地獄のヒロシマ
校庭に並ぶと、
先生の掛け声と共に
生徒はそろって体操を始めた。
軍服をきた先生たちは、
上空を飛び回る飛行機に向かい、
大声をかけはじめた。
「鬼畜米英!神州への侵入による我らが軍神の鉄槌をうけることなかれ!」
「爆弾抱えて海の藻屑となれ!」
いくつかの生徒はまねして騒ぎ立てた。
「勝て勝てにっぽん!」
「ぐんしん敵なし!」
「てんのーへーかばんざぁい!」
あさひは仲のいい数人に
先程のことを話した。
「へぇ。あさひちゃんのお父ちゃん、すごいねぇ」
「わたしのお父さんは死んじゃったんだって。」
「わたしも。」
あさひは
自分の父親が死ぬことを、
この時始めて考えた。
その時だった。
目の前が青白い閃光に包まれたかと思うと、
轟音とともにものすごい衝撃が
あさひを吹き飛ばした。
目を開いた。
あたりは煙におおわれていた。
そして、
寒くもあり、冷たかった。
ごおおお
という音がくぐもって聞こえる。
「うぅ」
あさひは校舎の陰にいたので3000度の熱線を浴びずにすみ、傷もかすり傷ですんでいた。
なにがおこったのかわからなかった。
ふと、
煙がはれた。
あさひは目をこらす。
黒いものが横たわっていた。
たくさん。校庭中に。
立って歩くものもあれば、
這いずるものもあり、
動かないものもあった。
それが人間であることは、
にわかには信じがたく、
恐ろしい光景だった。
ふと横を見れば、
ズタボロの服に縫い付けてある名札から
転がっているものは
さっきまで話しをしていた生徒であることがわかった。
目の前あるものに、
あさひは思わず飛びのいた
「きやあああ!みよこちゃん!」
しばらくあさひは黙り込んだ。
………お母ちゃん!
あさひは走り出した。
しかし
どこをみても見渡すかぎりの地獄で、人間と呼べるものもなければ、家ひとつない。
「お母ちゃん!どこ!」
ズルッ。
何かを踏んで転んだ。
あさひは踏んだものをみて
叫び声を張り上げた。
走って、走って、走った。
目は真っ赤に充血し、
足は血だらけだった。
「お母ちゃん!たすけて!怖いよぉ!」
どこからか
よくわからない声が聞こえはじめた。
「アイゴー。アイゴー!」
朝鮮人だったのだが、
誰がみてもそこらの人間とかわりはなかった。
あさひは再び前向かった。
どこに向かっているかもわからぬまま。




