閑話 セビル視点
セビルさん視点は……
――彼の書き込み自体は、もっと短いものでした。
勝手に捏造しました。
日々の行動記録が、旅団の記録簿に残る。
自動的に記入されていくのだ。
旅団と言っても、秘書と僕の二人だけのPT専用の旅団だ。
他の同期の生徒たちは、複数のPTで一つの旅団を立ち上げ、日々の攻略情報を共有しているらしい…。
僕は、秘書と二人だけのPT用に、日々のやり取りや打ち合わせのためだけに、専用旅団を立ち上げた。
だから、団員は僕と秘書だけだ。
秘書、とは僕のパートナー・ラフィリアの事。
彼女は、最新の攻略情報を手に入れるために、個人でも入団可能な旅団に入っている。その旅団は、学園最大の超有名旅団だ。
だが、ソロで入れる旅団とはいえ、いや…ソロだからこそ、旅団に入るとPTに誘われる。
彼女自身も、入団して即、何人かに誘われたらしい。
でも、その旅団では、PTメンバー募集は専用の部屋で専用の書類を提出しないと出来ないルールになっているから、彼女はその場で断ったそうだ。
正しくは、そういうルールだから断る事が出来たんだけど…。
僕は沢山の人と接するのは苦手だ。
だから学園に入学しても、訓練も攻略も全部、一人でやろうと思っていた。
誰からも干渉される事無く、一人で。
でも、限界があった。
どうしようかと悩んでいた時に、試しにと入った旅団で、彼女に出逢った。
彼女も一人の方が気楽らしい。
沢山の人と接すると、色々と気を遣わなくてはならないから。
行動基準も、行動時間も、合わないと身動きが取れない。
でも彼女は違った。
僕と妙に合った。
行動のタイミング、攻略の考え方なども。
PTを組むのは自然な流れだった。
でも、彼女は僕と違った。
とても明るく、朗らかで。
感情が顔にすぐ出るけど、でも大半は笑顔で、楽しそうで。
初対面の相手にも気さくに話しかけて。
そんな彼女が何故、一人になりたがるのだろう。
僕にはわからなかった。
僕と同じだと彼女は言うけれど。
「何考えてるかわからない」って言われてばかりの僕とは違うのに。
僕との攻略を円滑に進めるために、
最新攻略情報を手に入れるために、
彼女は今日も有名旅団の掲示板へ足を運ぶ。
そして、自分なりにわかりやすくまとめ、
今の僕たちに必要な物、
今後の僕たちに必要な事を、
僕ら二人きりの旅団の掲示板に張り出す。
僕は彼女のそんな行動を見て、まるで僕の秘書のようだと思った。
失礼だよね。ほんと。
でも僕は、ある時それを口に出してしまった。
「秘書は凄いなぁ」
新しい情報を手に入れたらしく、掲示板に書類を掲示していた手が止まっていた。
そんな彼女の目は、真ん丸だった。驚いていたのだ。
突然「秘書」、なんて呼ばれればそうだよね。
僕は内心慌ててしまい、何とかその場を繕わなきゃって、そればかり考えてしまった。
彼女の気を悪くしてしまう。
そうなったら、彼女は僕から離れてしまうかもしれない。
どう取り繕うか、悩んでる僕に、彼女は笑顔で言った。
「秘書ってなんかすっごく頭よさそう!! なんか照れる~♪」
……一瞬、この子はバカなのか? って思ったけど、多分、違うんだろうなぁ。
「ごめん、なんか、その……」
「いやいや、いいよ! 好きに呼んで!」
「いや、あの…でも、やっぱり…なんか、違う、よね?」
「ブスって言われるよりいい。」
「それは絶対言わない」
「ありがとー♪」
あれ以来、僕はラフィリアって呼んだり、秘書って呼んだりしてる。
圧倒的に秘書って呼ぶ回数の方が多いけど。
特に二人きりの時は。
そんな僕らの旅団の記録簿に、ある日秘書の日記が挟まっていた…。
見ちゃ駄目だって思ったけど、気になってしまうのは、仕方が無いよね?
一緒に攻略してるし、いつも一緒にいるし。
一度くらい。
ダメだとわかっていても。
なんだろう? 僕は彼女の事がもっと知りたいのかな?
気づけば、勝手に読んでしまっていた。
実に、彼女らしい日記だった。
そうか、麻にハマってしまったのか。
必要な分は麻も麻糸も麻ロープもあるのに、まだ欲しいらしい…。
しかも、出来上がった事を、僕には秘密にしておきたいらしい(笑)
まだ足りないフリをして、まだまだ麻収穫バイトに行きたいらしい。
うん。
わかったよ。
僕は気づかないフリをする。
だってラフィリアは楽しそうなんだもん。
彼女が楽しいなら僕も楽しいよ。
だから明日も麻収穫バイト、頑張ろう。
なんだか、セビルさんからラフィリアに矢印出てるみたいになってしまった…。
セビルさんすみませんでした!