3. 千年の果てに、俺は召喚された
とりあえず、10話まで毎日3話投稿します!
本日3話目。続きは明日の6時に。
悪魔になってから、千年以上が過ぎた。もはや正確な年数など覚えていない。いや、覚える意味がなかった。悪魔の世界では、昨日も今日も明日も大して変わらない。強い者が奪い、弱い者が奪われる。それだけの世界だった。名前もなく、ただ存在しているだけで、人間だった頃の記憶もほとんど忘れてしまった。毎日は退屈で、変化がない。「俺は何のために生きているんだ?」と思うことさえある。
そんな時だった。頭の奥で、誰かが俺を呼んだ気がしたんだ。名前を呼ばれた、そう感じた。だが、おかしな話だ。悪魔になってから、俺に名前などなかった。それでも、その声は確かに“俺”を選んでいた。
召喚。悪魔にとって、それは契約の始まりだ。願いを叶え、対価を受け取る。実に分かりやすい取引。千年も悪魔をやっていれば、善悪よりも先に損得で考えるようになる。俺は少しだけ興味を持った。どこの誰が、何を願って俺を呼んだのか。悪魔としての地位は低い俺、そこまで大層な儀式や魔力ひ必要としないだろう。初めてなので詳しくは知らないけどね。とにかく俺は呼ばれ、応じた。
光が弾けた。次に感じたのは、血の匂いだった。目を開けると、そこには一人の女が立っていた。いや、立っていると言うより、倒れる寸前の体を無理やり支えていると言った方が近い。服は裂け、白かったはずの肌は血と泥で汚れていた。整った顔には青黒い痣が浮かび、片方の目は腫れ上がって開いていない。
「お前が私を召喚したのか?」口に出した瞬間、自分でも少し違和感があった。普段の俺なら“俺”と言う。だが契約の場では、なぜか自然と“私”になる。悪魔としての本能か、儀式の影響か。理由は知らない。ただ、その方がしっくりきた。
「そうよ、私が呼んだわ。あなたにお願いしたいことがあるの」
女の声はかすれていた。だが、不思議と弱くは聞こえなかった。体は限界のはずなのに、その瞳だけは燃えていた。憎しみか。悲しみか。あるいは、守りたいものがあるのか。どれにせよ、ただ助けを求める人間の目ではなかった。俺も答えよう。
「私に願いを叶えてもらうには対価が必要だ。お前に何が出せる?もちろん、悪魔は契約は必ず守る。」
千年も悪魔やってると、人間だった頃よりも何倍も生きてるわけで、価値観もほぼ悪魔に上書きされたよね。女が答える。
「私の命とこの体をあげるわ!」
命と体。悪魔にとっては、十分すぎる対価だった。本来なら笑うところだ。愚かな人間が、自分からすべてを差し出す。これほど都合のいい契約はない。なのに、俺はすぐに返事ができなかった。その女の目を見た瞬間、千年前の記憶が、ほんの少しだけ疼いたからだ。そして、彼女の願いは…
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