第4話:外道の剣客
ノヴァ=ルベロは依頼達成の帰り道に魔王軍の精鋭ナンバーズ所属の、『殺刃』クナドに襲撃を受け、そのまま戦うことに。
クナドは剣を構えて僕と向かい合う。
クナドの高速の刺突を手で掴んで受け止めた。魔力で強化してるおかげで指は切れていない。
「硬いな!」
「まあね。」
僕はクナドの剣を掴んだまま腹を前蹴りで吹き飛ばした。林の中に吹き飛んだクナドに走って追いつき、空中から殴って地面に叩き落とした。地面に倒れているクナドに追撃をしかけようとしたら、斬撃を放たれた。背後の木が何本も切り倒される。
「良い出力だね!」
僕が感心していたらクナドが態勢を立て直して斬りかかってくる。僕は連続の斬撃を全て腕で受けて防ぐ。
「でもその出力じゃ僕の腕はぶった斬れないよ。」
クナドは剣に魔力を溜めて振り下ろす。それで生まれた巨大な斬撃が地面を走って僕に向かって来た。
「火力勝負かな?じゃあこっちも。『星屑』!」
魔力を指先から放出してぶつけた。そして押し勝った魔力がクナドにぶつかって吹き飛んだ。クナドは剣を杖に立ち上がった。
(全力の斬撃で押し勝てないか…。しかも俺の出力ではあの鉄壁とも言える魔力強化を破れない。どうするか…。)
クナドは刺突の構えを取る。僕は走って距離を詰めたが、クナドは僕が一定の間合いに近付いてきた瞬間、突いた。
「『穿刃』!」
咄嗟に右手を出したけど、凄まじい出力と速度の刺突を僕の魔力防御だけでは防げず、手を貫かれた。クナドは勝ったような表情をしたが、すぐに絶望に変わった。
僕は刺さった剣を握ってそのまま折った。そしてクナドの胸の前に左指を指した。
「『星屑』。」
ゼロ距離で魔力を叩き込んでクナドの上半身に風穴が空いた。
「攻撃性能は高いんだろうけど、剣術だけで魔法を使わないね。温存しすぎて使う前に死んでも知らないよ?」
僕は剣で貫通した右手を治癒して、出血の酷いクナドを見下ろす。
(終わりかな。そろそろ空が白んできたしし、もう殺しても…。)
「俺の魔法は一度使えば後戻りできない、捨て身の秘術。使いたくはなかったが、負けて死ぬよりはマシだ…。」
クナドは全身に魔力を立ち昇らせる。空気がビリビリと震えて僕の好奇心をくすぐる。
「良いね、捨て身とかそういうの大好きだよ。ほら、どんな魔法を見せてくれるのかな?」
「武神契術『アレス』!」
クナドの全身が狼のような毛に包まれた。両手から魔剣が生えて、目が4つある異形に変化したクナドは僕に語りかける。
「さぁ、第2戦目だ!」
クナドが振り下ろした両手を右腕で受け止めた。重みで地面から砂埃が上がる。
(ん?)
両手を弾いてカウンターで腹に星屑を一撃入れた。クナドはダメージで勢いよく後ずさった。
(あの魔剣の魔力が異常だ。あんまり体で受けるのは良くないかな。)
クナドは高速で突っ込んできたけれど、跳んで回避した。
振り返りざまの連撃を後ろにステップしながら避ける。僕は避けきったと油断していたら背中の尻尾で右足を掴まれた。
「やば」
引き摺り回されて木に背中を叩きつけられた。土埃の中から突きを構えるクナドが見える。
(またあの突き技か!)
「『穿刃』!」
体をひねって回避しようとしたが、間に合わずに右腕を貫かれて木に磔にされて動けない。
クナドが空いている右腕を振り上げる。
(腕を貫かれて碌に動けないし、受けるしかないか…。)
左腕で受けたが魔力防御だけでは耐えきれず、刃が肉に食い込んできた。その瞬間体から異常を感じ取る。僕は後ろの木ごと魔力で吹き飛ばして無理やり距離を取った。
傷口に不気味な紋様が現れた。違和感を感じて試しに魔法を使おうと構えたが、その瞬間腕が痺れて軽く弾けた。
(毒というよりも呪いかな。魔法が使えなくなる、当てさえすれば面白い魔法だ。でも…。)
クナドは全速力で突っ込んでいく。
(これであいつの魔法は封じた。あの魔力放出が無ければ接近戦は怖くない、これで終わりだ!)
ノヴァの前方に無数の魔力の塊が浮かぶ。
「『星屑』。」
クナドは次の瞬間、全身が穴だらけになって地面に勢いのまま倒れる。ノヴァが放った無数の魔力の弾丸で撃ち抜かれて蜂の巣になったのだ。
(あの魔力放出は魔法ではなかった…!ただ魔力をぶちまけただけの魔力操作の一環でしかなかったんだ…。それでこの出力、そもそもの実力差が開けすぎていたんだな。)
僕は倒れて体が少しずつ灰に変わっていくクナドの眼の前に立った。クナドはうつ伏せから顔を上げて僕に問う。
「その技は、魔法ではないのか。」
「そうだね。ただ固めた魔力を飛ばすだけの世界で最も単純な魔法だよ。」
「そんな技を先代の『魔王』が使っていたという伝説を、前に殺した人間の家の本で見たことがある。そんな技術を持ちながらなぜ魔法を使わない…?」
僕は前世を思い出す。
(先代…、今も魔王がいるってことか…。僕に並ぶ実力の悪魔があれから生まれたってことなのかな?)
「だって僕が魔法を見せようとワクワクしてきた頃には、既に終わっちゃってるんだよ?使わないんじゃなくて、使えないんだよ。相手がいないから。」
僕が魔法をフル活用して戦った相手は、今までにたったの3人と悪魔1体しかいない。
「じゃあ、おつかれ。現代の悪魔の割には強くて面白かったよ。」
灰に成り果てるのを待つのも面倒だったので、トドメを刺そうと魔力を篭めた右手を向けた瞬間、手に投げナイフが投擲されて邪魔された。その間に紺色のフードを被った悪魔がクナドを抱えて走り出す。
星屑で追撃しようとしたが、見た時には姿を見失った。
「速いなぁ、しかも気配を消すのが上手い。」
(気配的にあれは悪魔だ。それも僕の魔力探知をすり抜けてナイフ投擲を当ててくるレベルの強い悪魔。何がなんだか分からない。)
僕はナイフを右手から1本ずつ抜いて治癒魔法でさっきの戦いの傷と同時に治した。
「眠たくなってきたよ。いい加減帰ろう…。」
眠さを我慢しながら僕はアジトに歩き出した。




