表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【資金ショート即敗北】陸自エリートと米軍SEALsの異世界代理戦争。絶対不可侵のボッタクリ村で日雇い農業から始める極限サバイバル  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/18

第一章「極限兵站と黄金の旗」

最強の証明と、絶対不可侵のボッタクリ村

風が、マンルシア大陸特有の青々とした広葉樹の葉を揺らす。

ルナミス帝国とレオンハート獣人王国の国境、その絶対不可侵の緩衝地帯である『ポポロ村』の広場において、極限の緊張が張り詰めていた。

「——第1から第3セクター、クリア。配置完了しました、隊長」

通信機越しの赤城の報告に、陸上自衛隊1等陸尉、坂上信長は短く「了解」とだけ返した。

手にした標準装備の9mm拳銃のグリップを握り直す。彼の率いる100名のレンジャー部隊は、音一つ立てずに広場の西側を完全包囲していた。完璧な陣形だ。いかなる魔法使いや魔獣が相手でも、数秒で制圧できる。

だが、信長の視線の先——広場の東側の廃屋や木々の陰には、それ以上の「死の気配」が潜んでいた。

(……見えん。だが、確実に『ロック』されとる)

信長の背筋に冷たい汗が伝う。

東側およそ1500メートルの時計塔の陰。そこに、アメリカ海軍特殊部隊『NAVY SEALs』の部隊長、エリアス・ソーン大尉が潜んでいるはずだった。

心拍数を自らの意志で落とし、狙撃の瞬間には「死体と同じ脈拍」になるという、歩く死神。通称、“灰色の幽霊グレイ・ゴースト”。

エリアスのスコープは、間違いなく信長の眉間を捉えている。

一触即発。現代地球からこの異世界に召喚され、ルナミス帝国(陸自)と獣人王国(米軍)の客将として相対することになった両雄が、最初の銃弾を放とうとした、その時だった。

「はいはーい! ストーップ! 開会式前のドンパチはルール違反ですよーっ!」

ピィィィッ! という気の抜けるホイッスルの音と共に、両軍の完璧な殺傷圏キルゾーンのど真ん中に、一人の少女が飛び出してきた。

ラフなストリートファッションに、ウサギの耳。足元には不釣り合いなほど無骨な特注の安全靴(タローマン製)を履いた美少女——キャルルだ。

「……何者だ」

信長が低く唸る。エリアスの照準も、微かに少女へとズレた。この張り詰めた前線に、全く気配を悟られずに割り込んでくるとは。

「初めまして、迷える異世界の軍人さんたち! 私はここ、ポポロ村の村長、キャルルです!」

キャルルは明後日の方向を向きながら、陽気に口笛を吹くようなテンションで言い放った。

「えー、これより、ルナミス帝国とレオンハート獣人王国による『ポポロ村・特別代理戦争』を開始します! ルールは簡単! 相手陣地にある『50kgの旗』を奪い、24時間自分の陣地でキープした方の勝ちです!」

「……旗取りゲームだと?」

沈黙を破り、広場の東側から長身の男が姿を現した。しなやかな筋肉を持つ灰色の幽霊、エリアスだ。彼の隣には、相棒であり元エリート商社マンの義正が控えている。

「そうです! ただし、このポポロ村での戦争にはいくつか『特別なルール』があります」

キャルルはニコッと、ひどく愛らしい、しかしどこか背筋の凍る笑顔を浮かべた。

「あなた達の初期資金は、両軍それぞれ『金貨2万枚(約2億円)』のみ。本国からの追加支援は一切禁止! 弾薬、武器、毎日の食料レーション、すべて中立である私達『ポポロ商人』から自腹で買ってもらいます!」

「……は?」

信長の口から、間の抜けた声が漏れた。

「街の施設を壊したら即罰金! 私達村人に危害を加えたら、即失格(物理的に排除)! つまり、お金が尽きれば、弾もご飯も尽きて負けってことですね♡ わかりましたか?」

「ワレ、ふざけとんのか……ッ!」

信長は思わずドギツい広島弁を漏らした。補給線を本国から絶たれ、現地調達——しかも「完全自腹」での戦争など、軍事の常識から外れすぎている。

「キャプテン・ソーン」

エリアスの隣で、義正が小さく舌打ちをした。

「理不尽だが、システムとしては堅牢だ。それに、今の我々は『標準支給の拳銃と手榴弾』しか持っていない。まずは没収されているメインウェポンを取り戻す必要がある」

義正の言葉に応えるように、「毎度おおきに!」というコテコテの関西弁が響き渡った。

「金儲けの時間やでぇ~!」

煙管きせるを吹かし、算盤を弾きながら現れたのは、猫耳族のポポロ村財務担当・ニャングルだった。その後ろには、山積みにされたコンテナがある。

「お客さんらの『私物』、ワイが責任持って預かっとりました! さぁ、戦争始めるなら道具が要るやろ?」

ニャングルがコンテナを開けると、そこには信長の愛刀『夕日丸』と20式カスタム小銃、そしてエリアスのMcMillan TAC-338 “Wraith” と愛銃ガバメントが丁寧に並べられていた。

「……私の銃だ。返してもらおう」

エリアスが冷たい声で要求するが、ニャングルは鼻で笑った。

「アホ言いがな。ここはポポロ村やで? このスナイパーライフル、ええ手入れされとるなぁ。……せやな、返却(購入)費用は金貨2,000枚や」

「2,000枚!? 2,000万円じゃと!?」

信長が吠える。「ワシの刀と20式はいくらじゃ!」

「その刀、業物やなぁ。セットで金貨3,000枚もろとこか」

ニャングルは算盤をジャラッと鳴らし、悪びれもせず笑った。

「需要と供給や。素手で戦争したいんやったら、無理には言わんで?」

「隊長」

信長の背後から、工作部隊の赤城が進み出た。

「ボッタクリもいいとこですが、拳銃だけでSEALsのバケモノ連中とはやれません。買うしかねえです」

東側でも、義正がエリアスに耳打ちしているのが見える。おそらく同じ計算——「初期資金の15%を失ってでも、主力兵器は必要だ」という結論に達しているはずだ。

「……払おう」

「……こっちもじゃ。買い戻す」

日米のエリート部隊長二人が、血の涙を流すような思いで全財産の詰まった魔法ポーチから金貨の山を渡す。

「まいどありぃ! あ、言うとくけど、5.56mm弾も.338ラプアマグナム弾も、1発につき『銀貨1枚(1,000円)』やからな! フルオートで撃ちまくったら、一瞬で破産しまっせ!」

ニャングルの無慈悲な宣告に、信長とエリアスは同時に手元の銃を見つめた。

——1発撃てば、1,000円札が飛ぶ。

——飯を食うにも、陣地を構築するにも金がかかる。

「あ、もしお金が足りなくなったら言ってくださいね!」

キャルルが、ピカピカの安全靴を鳴らしながら明るく提案した。

「ポポロ村の農場はいつでも人手不足です! 日給金貨1枚で、畑の雑草抜きからお仕事ありますから! それじゃあ皆さん、良い戦争を~!」

秋晴れの空の下。

陸上自衛隊エリートと、アメリカ海軍特殊部隊の精鋭たちは、自らの手元に残された資金残高を見て、静かに絶望の淵に立っていた。

「……赤城。夕飯の予算、いくら残りそうじゃ」

「隊長。このままだと、俺たち全員で缶詰一個を回し食いっすね」

「……」

かくして、人類最高峰の軍人たちによる、血と泥と「日当」に塗れた極限のサバイバル代理戦争が幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
それぞれの国の客将になっているということは異世界に来てからある程度経ってそうですが、 なんと言われてこの村まで来たんでしょうか。 今回のルールをわざと黙っていたとしら何かしらたくらみがありそうです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ