夢は叶うんだってさ
……あ、父さま。
遅かったね。
それが今日の分の?
いつもありがとうね、うふふ。
ううん、平気よ。
私ちっとも苦しくないわ。
申し訳ないだなんて、とんでもないよ。
だって。
これであいつを殺せるんだよね?
あいつを超えることができるんだよね?
あの綺麗な顔を、真っ白な肌を、宝石みたいなお星さまみたいな瞳をズタズタにできるの?
グシャグシャにできるんだよね?
うふふ。
嬉しいわ、父さま。
私、ほんとにとっても気分がワクワクしちゃうのよ。
腕が千切れてるけど。
足が毟り取られちゃってるけど。
皮膚が剥がれちゃってるけど。
髪の毛全部抜けちゃってるけど。
何も見えなくってずっと真っ暗なままだけど。
音だって聴こえないけど。
あんなに可愛かった私の姿ははもうただの肉の塊みたいになっちゃったけど。
誰かのお嫁さんになることなんてありえなくなっちゃったけど。
父さまみたいな立派な魔法使いになることなんてありえなくなっちゃったけど。
ズキズキズキズキ痛いのだけはいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも残ったままだけど。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
あああああああああああああああああああ。
もう私自分がどうなってるのかとか全然分からないけど。
変な薬とか管とかそんなのばかりになっちゃったけど。
でも嬉しくて嬉しくて仕方ないのよ。
ドラゴリュートを殺せるのが嬉しいの。
それだけの力を父さまから貰えるのが嬉しいの。
心が弾んで踊って素敵な声が聴こえるわ。
グジャグジャグジャグジャって。
花が咲き誇るような未来が見えるわ。
うふふふふふふふふふ。
あいつを私の奴隷にしてやるのよ。
学院のクソ共の前で裸に剥いて。
犯して犯して犯して犯してドロドロにしてやるの。
みっともなく無様に女の子みたいな声を喘げさせるの。
私がされたみたいに。
皆の前でボロボロに任された私がされたみたいに。
恥ずかしく大勢の前で心もプライドも力も全部踏みにじってやる。
必死に許して許してって喚くあいつをズタズタにしてやる。
壊してやる。
それからね、私みたいにしてやるの。
私がされたみたいにしてやるの。
腕を外して。
足を切り取って。
皮膚をビリビリ削いで。
髪の毛を全部引き抜いて。
目玉両方抉り取って。
耳に硫酸を注いで。
女神さまみたいに綺麗だったあいつをただの肉の塊みたいにしてやるの。
力も見た目も心も全部失くして泣きじゃくるドラゴリュートを。
笑うの。
笑ってやるの。
ざまあみろ、って。
笑われた分だけ笑い返すの。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
きっとできるよね。
だって私父さまの子だもの。
私の名前は、アリス=フォルミヘイズ。
世界で一番優秀の魔法使いの家の、その長女なんだもの。
ね?
そうよね?
うふふ。
そうだって言えよ。
殺すぞ。
……あはっ。
父さま、前よりずっと素直になったね。
そうだよね、そうだよね。
また私に脳味噌ぐちゃぐちゃ弄られたり、お腹開かれたりしたくないもんね。
痛いのも気持ち悪いのも止めてほしいんだよね。
不思議だね。
痛いことも気持ち悪いことも全部父さまが教えてくれたのに。
ふふ、父さま、すっごく顔色が悪いよ。
忘れたとでも思ってたの?
研究が行き詰まってる時、父さまが私に何をしたのか。
私が何をされたのか。
痛かったよ。
気持ち悪かったよ。
そっかあ。
父さま、私がもう忘れたと思ってたんだあ。
きゃはっ。
きゃはははは。
きゃはははははははははははははははははははははは。
ははははは。
ひっどい顔ね、父さま。
まるで死人みたい。
もうすぐ死のうとしてる死人みたい。
そうだよね。
だって父さまもうすぐ死ぬもの。
私が殺すもの。
あはは、今更謝ったって遅いよ。
お漏らしして怖がるふりしたって駄目。
駄目だよ?
殺す。
殺す。
殺してやる。
殺してやる。
……でも、いいよ。
私許してあげる。
だって、こんなに素敵な力をくれたのは父さまですもの。
今まで生きてきてよかったわ。
死なないでいてよかったわ。
悲しみにも痛みにもちゃんと意味があったのね、価値があったのね。
あの苦しい毎日は無駄じゃなかったんだわ。
諦めずに誠実に努力を重ねていけば、いつか必ず夢は叶うんだわ。
待っててねドラゴリュート。
貴方に地獄を見せてあげるから。
きゃははははははははははははははははははははははははははははははっ。




