カタカナ化の苦悩 ~ ラブはLoveじゃない、宇軒はユシェンでいいのか、スコットランド・ゲール語の綴りにない謎の気息音はどうすりゃいいんだ
こんにちは。狸です。
月の裏で、なんちゃってスコットランド風の西洋キャンパスライフや、なんちゃって唐風の官場純愛(?)小説などを書いてるヤツです。
今回は、スコッツや中国語、スコットランド・ゲール語といった外国語を無理やりカタカナ語化するときの苦悩について語りたいと思います。
その1 スコッツ!
タイトルは例によって伏せますが、拙作には、なんちゃってスコットランド風の世界で半人半犬とハイエルフがキラキラ大学生活を送るお話があります。一見、明るい青春モノなのですが、狸が書く話ですから当然、一皮剥けば、滅んだ王朝と差別の物語。
それはともかく。このお話には、「ラブ」という名前の小柄で年齢・性別不肖のカワイイ同級生が出てきます。
「よーし、スコットランド風世界の首都のスラムから大学に通う自宅生だな、だったら!」ということで。この子には、私が偏愛するシットコム”Rab. C. Nesbitt”の主人公であるグラスゴーの子持ちアル中無職おっさんの名前をもらいました。RabとはすなわちRobertの愛称。普通の英語ではRobですが、スコッツではこの母音は口を大きく開けて発音するため、Rabになるのです!
ところが日本のカタカナでは、Rabは「ラブ」としか表記できない。LとRの区別がありませんからね。ついでにBもVも区別しないことも多い。
なので、「『ラブ』? ああ、Loveくんね。キラキラネームだね。カワイイね」みたいな雰囲気になってしまいました。
違う、そうじゃない。シニカルなコメディの主役を張ってるイカツイ大人の男の名前を貰ったんだっ、とわめいても後の祭りです。
カタカナ関係ないですが、このお話。大学「総長」のウォルターというひとが出てきます。「国立のデッカイ総合大学のトップだから総長♪」なのですが、ヤンキー漫画を読みすぎたせいか「総長」と書くたびに大学総長と族の総長が同時に脳内に出現する。しかし、ウォルター先生は元ヤンでもおかしくないキャラなので、これはヨシ!
その2 鄭宇軒のルビはジョン・イシュェンのほうが正確かもしれない。劉明睿もリィオ・ミンルイかもしれない。
えーと。こちらは唐風官場純愛小説の主人公ふたりの名前のルビのお話ですね。
私は普段、中国人名には日本語読みのルビをふっているのですが、このふたりと英琳娘娘の名前に関しては、ときどき原語ルビを付けております。
なぜかって? 明睿が「めいえい」ってガラの男じゃないからです! なんせ、キャッチフレーズが「金も女も出世も思いのまま♪」ですもん。
明睿が「ミン」になったのに引きずられて、恋人の宇軒も「ユシェン」呼びになりました。ただ、それだけの理由で、このふたりだけ原語呼びなのです。
で、中国語。これ、日本語には存在しない音が山程ございまして。鄭宇軒の読み仮名なんて、ジェン・ユシェンだろうが、ジョン・イシュェンだろうが、いずれにせよ、原音を忠実に反映してないという点では大差ありません。
なので。中国語人名のカタカナ表記に迷ったときは、ズバッと割り切って、日本語として読んだときに響きがカッコいい方にしています! あああ、言っちゃったっ。
だけど。やっぱり、鄭は「ジェン」より「ジョン」のほうが近いかもなあ……。
その3 ゲール語の気息音は、どないしてカタカナ表記したらええねん?
再び、なんちゃってスコットランド風キャンパスライフ小説の話に戻ります。
主人公の半人半犬。実は前世は「漆黒の巨犬」と呼ばれる伝説の魔犬でした。
それはいいんですが、このお話で魔法の詠唱などに使用される神聖言語。実はこれ、スコットランド・ゲール語だったりするんですが。またこれも日本語に無い音のオンパレードなんですね。
「クー・モール・ドゥフッ」とは、これすなわち「Cù(犬)・ Mòr(大)・ Dubh(黒)」。スコットランド・ゲールは「名詞+形容詞」の語順。ついでに申し上げますと、平叙文は「動詞+主語」の語順です。要は英語の逆だ! ややこしいですねっ。
で、一番の問題が、Dubhの発音表記。
スコットランド・ゲールのイヤなところのひとつが、「発音に関係ないアルファベットが綴りの中に大量にぶちこまれていること!」でございます。他にも「発音が凶悪」「文法が凶悪」「綴りに無い謎の気息音が随所にぶち込まれている(後述)」などがありますが、それは置いといて。この「Dubh」につきましても、語末の「bh」は発音しません。
ただし! 「Du」の後に謎の気息音がある!
つまり「ドゥ」のあとに「フッ」と強く息を吐く音があるのですね。ちなみに私が愛用しているLearnGaelicのWeb辞書では、「Dubh」の発音は[duh]と表記されています。おお、わかりやすいぞ!
で。これ、カタカナではどない表記すんの?
えーと。結論から申し上げますと、「ドゥフッ」としましたね。もう、そのまんま。「フッ」まで行くと、ただの気息音のくせに存在感が強すぎるような気もするのですが、聞こえてくるものは仕方がありません。
ただこれ……連載終了して七か月ほど経った今でも「クー・モール・ドゥのほうがカッコ良かったかもなぁ」とクヨクヨ気に病んでおります。たぶん、鄭宇軒も劉明睿も「鄭と劉にすべきだったかもぉ、あああ」などとクヨクヨし続けるのでしょう。
ですがねえ……。英語だろうがスコッツだろうが中国語だろうがゲール語だろうが。正直、日本語には無い音だらけの言語なんですよ。それらの発音を無理やりカタカナに落とし込んでいるわけなのですから。
結論! どう転んでも、原音に忠実なカタカナ化など不可能!




