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江戸時代モノの時代設定を文化文政期にする利点について語ってみた

 はじめまして、月白げっぱくたぬきと申します。「なろう」さまの月の裏で、科挙二回落ちて宦官になったヤツとか千円男娼とか書いているヤツです。代表作は、文政期のお江戸は芳町の「百花の王」なる二つ名持ちの陰間あがりを主人公にしたお話でございます。


 今回は長い江戸時代の中で文化文政期を選んで良かったことについて語らせていただきます。ロクに知識もない狸がなにか言ってら、くらいの感じで生暖かい目で見てやってください。



【利点1:登場人物が飲食するシーンが書きやすい!】


 江戸期とは、寿司や天ぷらなど、現在我々が楽しんでいる和食が成立していく時代。すなわち、前期や中期だとまだ世に出ていないものも多いのです。


 例えば、江戸前の握り寿司に欠かせなかった粕酢を発明した某企業の創業が文化元年。つまり大河ドラマ「べらぼう」の時代だと、屋台で握り寿司を食べる描写はできない。特に江戸前期は、まだ砂糖は輸入に頼っていて庶民の口にはとてもじゃないけど入らないため、登場人物におやつを食べさせるだけでも、かなり苦労することでしょう(上流階級のお話なら、また別なのでしょうが)。文化文政期なら、庶民のお話でも、華のある選択肢がでてきます。


 とはいえ、私、登場人物にキンメダイの料理をさせようとしたのですがね。漁場の場所と生息水深を考えた結果、釣り上げるだけでも当時の道具ではなかなかタルいし、たとえ漁獲されたとしても、お江戸の日本橋に運んだときには腐っていると考えて断念いたしました。キンメ、赤くて映えるんですけどね。実際、キンメは江戸では食材利用されていなかったようです。



【利点2:登場人物の容姿を浮世絵に例えたり、長唄を引用したりしやすい!】


 時代小説を書くにあたって。やっぱり歌などで雰囲気を出したくなるわけです。たとえば平安時代が舞台なら、登場人物どうしで和歌を贈り合いたいところ。中華であれば月下の壁上に漢詩のひとつでもババーンと大書してみたくなっちゃいますよね♪


 時代物としての空気感を演出すべく、登場人物に何かうたわせたいとき。頑張って詩なり和歌なりをひねり出す以外に、もうひとついい方法があります。そう、古典から引っ張ってくればいいじゃないか!


 と、いうわけで、著作権消滅をいいことに登場人物に長唄を歌わせたり、作中人物の容貌を「英泉の美人画のごとく、目つきにケンがあり、色っぽい」などと描写したりしているわけですが、ここで注意点。主人公の一人称で書いている限り、時代設定より後に成立したものは出せません。


 いま、私たちがパッと思いつく、浮世絵、黄表紙、落語、長唄といった作品群。だいたい『べらぼう』の時代以降の成立が多いのではないでしょうか。こういったものを引用したい場合は、文化文政以降を舞台に選ぶとラクです。


 とはいえ私、うっかり「三千世界の鴉を殺し」なんて書きかけて、おおあわてで消したことがあります。高杉晋作はこの頃まだ産まれてもおりません。



【利点3:家斉様、バンザイ!】


 将軍様が遊び好きなため、ナントカの改革系の締め付けが無い時代ですので、登場人物に(あまり)気兼ねなく派手な着物が着せられる!


 それにしても私の書く江戸モノの主人公は、「今や背が伸びすぎてツンツルテンになった、元はお引き摺りだった梅花の振袖」という、とんでもなくきらびやかな(?)格好で売春しております。ホントは浮世絵とかの陰間さんは縞とかの着物で粋に決めています。着物の色だって「桜鼠」とか「利休鼠」とか渋カッコいいのが主流なはず。しかし、BLは華やかでナンボなのです!


 また、家斉様は側室いっぱいでお子様も多く、姫君の輿入れ先への持参金でお困りになっていたほどです。ですので、変わり者の姫さまや若さまのひとりやふたり、捏造したって大丈夫そう。


 たとえば「私、将軍家斉の十六女の瑠衣姫。実は夜な夜なお城を抜け出して、悪い廻船問屋の屋敷に盗みに入っては貧しい人にお金を配っていたのだけど、ある夜、謎の義賊に危ないところを救われて、そのまま恋の一夜を過ごしたの。だけど、外様大名への輿入れが決まっちゃって……祝言で初めて見た殿の顔は、えっ、あのときの謎の義賊!?」みたいな話も書きやすいかと思います……って、例が男女モノになっちまいましたね。



【利点4:まだ陰間茶屋が芳町にある!】


 芳町の陰間茶屋は芝居小屋に近接しておりますので、働いている子たちも歌舞伎役者の卵である舞台子が多いのです。そのため、拙作のヒロイン攻め、玉吉兄さんのような、京言葉を操る下り者の可憐な腹黒女形も自然に出せてしまいます。


 もしも、時代を天保以降にしてしまいますと、芝居小屋の焼失・移転に伴い芳町の陰間茶屋も消滅しますので、舞台を湯島にでもしなくちゃいけなくなります。湯島は大きなお寺のある街ですので、お客は坊さんが主流。お話も芸能人の卵たちのいちゃラブではなく、お坊さんと美少年のラブストーリーなどになるのでしょうか? これはこれでイイのですが、僧侶は私、現代モノでさんざん書いたので、もうお腹いっぱいなのです(知らんがな)。




 時代が後になればなるほど、基本的には書きやすくなる江戸時代モノですが(現代日本人の転生・転移があるなら、前期の方が知識無双しやすいかも?)、文化文政期の後には天保の改革と幕末が待っております。


 もしも日本史にお詳しい方でしたら、幕末であれば、食事等の描写の苦労が少ない上に、坂本龍馬などの歴史上の有名人が出しやすい、金髪碧眼キャラも無理なく出せる、総髪が流行しているためビジュアルを盛りやすい、といった利点を活かせるのではないでしょうか。私は幕末系の本を何冊読んでもアタマが混乱するばかりなので、この時代に関しては読み専一択……。


 などと言いつつ、実は幕末モノにも挑戦してみたことがあるのですが、西洋の事物が一気にどっと入ってくる時代なため、銃器についての調べモノが地味にメチャクチャ大変でした。「この子にはこの銃はデカすぎる……あ、でも、こっちの銃だと、まだ日本には入って来ていないかな?」などと散々悩んだ記憶があります。


 以上、江戸モノの時代設定を文化文政期にして良かったことについての私見でした。長いたわごとをお読みいただき、ありがとうございました。

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