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玉滴石  作者: みつき


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16/16

エピローグ

 ――封印を解いてしまった僕のせいだ。


 僕は走った。


 ナギは二階建ての家より大きな体を揺すらせて、道路を歩く。

 

 一人のサラリーマンは、逃げ場を求めるように塀へ背中を押しつけ、その場に張り付いていた。口を開けたまま、声も出せずにいた。

 

 (見えてるのか――)


 天はそのまま走ってナギの前に辿り着いた。


「待て!」

 

 天は両手を突き出した。 


『なんだよ……。もうすぐ暴走車が来るんだよ。壊してやる……ヒヒッ』


「ナギ!!」


『うるせえ!』

 

 ナギは、黒い大きな尻尾で天を薙ぎ払った。


 天は、民家のブロック塀に叩きつけられた。


「う……」


『お前が邪魔するからだ……』


 ナギはそのまま大通りへ歩いていく。


「きゃあああ!!」


 子連れの女性がナギを見上げながら、ベビーカーを方向転換しようと焦っていた。


 天は起き上がり、ナギを追った。


 ハァハァ。


 ――止めなきゃ。


「ナギッ!」


 天は両手を広げてナギの前に立った。ナギの巨体に隠れ、目だけがこちらを見下ろしていた。 


『邪魔だ!! どけっ! 踏み潰すぞ!』


「いくなら……僕を殺してから行け!!」


 天は歯を食いしばった。


『……』


 天はナギの足の裏が近づいてくるのを見て、目を瞑った。


 

 (そこまで俺に――?)


 ナギは一瞬躊躇した。


 ――次の瞬間、ナギの姿は小さくなり、尻尾や鱗が消えて、前髪の長い男の子の姿に戻っていた。


『……!』


 天は息を荒くしていたが、目を開けた。


「あっ……」


 小さいナギ。また封印が戻った……?


『また天の中に入ったみたいだ……』

 ナギは小さくなった足で小石を蹴った。

 

「そうか……」


 達也、秋穂、海都の三人が天を見つけた。


「天!」


「鬼は?」

 

 みんなキョロキョロした。


「そこにいるよ……。最初の大きさに戻ってる」

 天はナギを指さした。


「見えないよ」


 秋穂は、ハッとした。


「また、天に封印されたってこと?」

 

「うん。そうみたい……」


 (また、始まるのか……)


 ――でも、今度は違う。みんなわかってくれている。


 天は、さっきの出来事をみんなに話した。


「小さくなったのか」

 海都が驚いていた。


「うん。身長は僕より小さい」


「……なんか変化あれば、すぐ言いなさいね」

 秋穂が心配そうにしている。


「うん」


「さあ、帰りましょう」


 みんなで家に向かって歩く。後ろからナギがついてくる。


 ナギが海都を見ると、こう言った。

『海都、今日は落語習いに行かないのか?』


「今日は行ってないよ」と天。


「ナギがなんか言ってるのか?」

 達也が一人で喋っている天に聞いた。

 

「海都が、今日は落語習いに行かないのかって」


「落語……?」

 達也が聞き返すと、海都が慌てて誤魔化した。


「たまに落語見にいくんだよ」


「習いにって聞こえたが……?」


「……天、言うなよもう!」


「ごめん……」


「そういえば、海都のへやに扇子やら手拭いやら、落語の本とかあったわ」

 秋穂が追い打ちをかける。


「……ごめんなさい。塾じゃなくて、落語習いに行ってる……。落語家になりたいんだよ」

 海都が気まずそうに言った。


「本当なのか……?」

 達也が海都を睨んだ。


 海都は肩をすくめた。


「……もっと早くいえばいいのに。嘘はよくないけどな」

 達也は海都の肩をポンと叩く。


 海都が達也を見た。

 

「……応援するよ」

 笑う達也を見て、海都も笑い返した。


 天は振り返ると、後ろをついてくるナギを見た。


『何見てんだよ……』


 ツノが生えていないナギを見ると、少し気持ちが楽になっているのが自分でもわかった。


 

 空には、満月の月が輝いていた。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

もっとエピソードいろいろ書きたかったのですが、体力が足りませんでした。

続編描きたくなったら描くかもしれないです。

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