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日本社会のノイズに絶望した最強AIエンジニア(62)、俺を「マスター」と慕う天才美少女たちと静かな理想国家を建国する  作者: 春凪一


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4.4.聖域の人々

4.4.聖域の人々


最新鋭の自動運転車が、木漏れ日の美しい山道を滑るように進んでいく。


都会の喧騒が嘘のように、窓の外にはただ、緑のグラデーションと、鳥の声、そして川のせせらぎだけが存在していた。


「うわーっ!空気がおいしい!なんだか体の中が洗われるみたい!」


助手席の響が、窓を全開にして深呼吸している。その無邪気な姿は、まるで都会から初めてピクニックに来た子供のようだ。


「大気中の粒子濃度が著しく低いわね。科学的に見て、人間の健康に最適な環境よ。……でも、少し……静かすぎないかしら」


後部座席で腕を組む燈は、どこか落ち着かない様子だ。彼女にとって、この完璧な静寂は、実験室の無音チャンバーを彷彿とさせるのかもしれない。


「村の人口動態と経済データは確認済みです。この静けさは、美しさであると同時に、過疎という深刻な問題の裏返しでもあります。楽観はできません」


静香は、タブレットから目を離さずに淡々と告げる。


三人の天才少女たちの反応は、見事に三者三様だった。だが、その根底にあるのは、未知の場所に対する期待と、ほんの少しの不安。それは、私とて同じだった。


「この『静けさ』こそ、我々が求めているものだ。問題は、ここの人々が、それをどう感じ、どう守ってきたか、だな」


やがて車は、開けた場所に出た。村の小さな中心部だ。


古びた郵便局と、小さな商店、そして風格のある木造の建物が見える。村役場だろう。


私たちが車から降りると、どこからともなく、数人のお年寄りが集まってきた。警戒心と好奇心が入り混じったような、静かな視線が私たちに向けられる。


「……都会からのお客さんかの?」


最初に口を開いたのは、腰の曲がった、上品そうな老婆だった。その皺の一つ一つに、この村で生きてきた長い歳月が刻まれているように見えた。


「はい。はじめまして。私は春凪一と申します。少し、皆様にお話を伺いたくて、参りました」

私は、深く頭を下げた。少女たちも、慌ててそれに倣う。


老婆は、私の顔と、その後ろに立つ三人の少女たち――特に、その都会的な服装と、人間離れした美貌を値踏みするように見つめ、ふむ、と小さく頷いた。


「わしは、ここの村長の角田つのだです。……立ち話もなんですから、役場の中へどうぞ。お茶でもお淹れしますわ」


通されたのは、役場の一室。だが、会議室というよりは、公民館の集会室といった方が近い、畳敷きの部屋だった。壁には子供たちが描いた絵や、昔の村祭りの写真が飾られている。


角田村長が入れてくれたお茶は、驚くほど美味しかった。


「それで……春凪さんとやら。世界を救ったという、あの有名なAIの先生が、こないな何もない村に、何の御用で?」


村長の言葉は丁寧だが、その目には、鋭い光が宿っていた。これまでにも、同じように都会からやってきては、耳障りの良いことばかり並べ立てて、結局は村を失望させていった者たちを、何度も見てきたのだろう。


これは、試されている。


私は、背筋を伸ばし、正面から村長の目を見つめ返した。


「ええ。単刀直入に申し上げます。私は、この野迫川村に、新しい国を創りたいのです」


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