燃え尽きない業火
男の子視点です。
「なにさ、坊やは港から来たのか。それを早く言ってさ!これじゃあ、もと来た道を戻ることになるさ」
一通り話したいことを話して満足したのか、相手は俺がどこから来たのかを聞いてきた。進路を変更してくれないか、という少ない期待を持ちながら、これから向かうであろう港から来たことを正直に話した。
相手の後ろにいる馬の手綱を持つオジサンが「こりゃ道案内してもらえて助かる」と口にしたのを聞き、やはり意味がなかったと期待が崩れた。
「どうするのさ?このまま一緒に戻るか、それともここで別れるか。オレは坊やと港で酒を呑みたいし、話したいこともいっぱいあるさ。でも坊やはどこか行く宛があったんじゃないのか?これは悪いことをしちまったのさ」
未だに、目の前で喋る男が誰なのかがわからない。彼女の話を聞いて、人違いということは絶対にない。けれど、それだからと相手が誰もわかるわけでもない。
もう少し、様子を見たほうがいいのかもしれない。
「坊やを拾って得したよ。まさかすぐに川を見つけてくれた上、それを教えてくれるとは。無事街についたら、礼を弾もう!」
「本当さ!これでいつ飲水が切れるかヒヤヒヤせずに済んだのさ。坊や、いつの間にそんな頼もしくなったのさ」
旅をする上で飲水の確保は重要なことだ。あてもなく彷徨うにしたって、現在位置と方角を確認する上でも川はいくつもの情報を共有してくれる。
その代わり、旅人やものを運ぶ商団は同じことを考えるから、川沿いの交流も必須になる。俺はそれが嫌であえて川と一定の距離を取り、日の傾きや風の流れで方角を読み取り港から離れていた。
度々、飲水の確保や方角の確認で川の位置を把握していたことが功を奏した。
会うタイミングが本当に良かった。彼らと鉢合わせたのは川上にある二股に分かれた地点より手前だった。
そこより川上であれば確実に現在地を把握されていた。彼らが川を見失ったのは、この川が乾期になると水面が下がり地下水だけになってしまうことに気が付かなかったからだ。もちろん、この川沿いに何度も往復するような商談だったたらわかることだが、初めてなら気づくことができないのが当たり前だ。
俺も、港町で初めて聞かされた話だ。俺が初めて港に着いた時何事もなく辿り着けたのは、偶然乾期とぶつからなかっただけだった。
毎年、乾期の間は港に向かういくつかの商団が川を見失い、無意識のうちに全く別方向にある街に続く路線を進むか、他の商団と鉢合わせて情報を共有してどうにか地下水を見つけるしかない。乾期さえ越してしまえば、元の水面が戻り港への道が続くが、越す前に地下水を横切ってしまえば方向も見失ってしまう。
彼らは、偶然にも乾期に鉢合わせ、地下水を横切っていたから、二股に分かれているはずの地点にも気づけず、彼らは俺と同じように日の傾きと風の流れで方角だけを確認し進んでいた。
そう踏んだ俺は川の位置を把握していることを伝え、彼女を残し去った港町に続く方ではなく、二股に別れたもう一方の川を教えた。
彼らが水面が下がった間に川越をせずに進んでいれば、こんな嘘は通じなかったはずだ。
「坊やのお陰でオレたちは本当に助かったのさ!無事港に着いたらオレがたくさん奢ってやるのさ」
口の両端をニイっと吊り上げ男が笑う。不自然な癖に、俺は見覚えがあった。
そして、俺は思い出した。コイツは絶対に彼女を近付けてはいけないやつだと。
いつもお付き合いくださりありがとうございます。
少しでも面白い、続きに期待を感じて下されば、ご気軽に評価コメントしていただけると嬉しいです。




