人と心とその運命
キールの死をルイーゼは見た、その死を理解し、ただ呆然としながら抱き抱えていた、そしてキールを横にするとゆっくりと立ち上がる。
痛みと血の匂いの感覚と共にゆっくりと立ち上がると聖堂へと歩く、そこにはたくさんの亜人達がいた、一時的にアルドの指示で軍兵はいない、だが生死は握られていた、もうどうにもならない、皆が疲弊する中でドレットが皆に聞こえる声で言う。
「みんな! 諦めちゃだめだ! 私達は最後まで戦うんだ! 生きていれば希望はあるんだよ! だから!」
ドレットの言葉はとても心にくる、頼もしさと共に諦めてはいけないと精神的に追い詰められるようなそんな二つが混同した言葉。
「もう、いいんだよ」
ルイーゼのその言葉にドレットは困惑した表情でルイーゼを見る。
「そんなことない、諦めない限りは——」
「そうじゃないんだよ、諦めて死ぬとかそんなんじゃない、必要なことは、私たちが世界を変えるために必要なことはなんなのか、それは命を使うことだと思うわ」
ルイーゼのその表情は悲しみと怒りの表情がわずかに混ざっているようで、だがしかし覚悟を決めた目をしていた。
「何を言っているんだ、それに命を使うって...」
ドレットは困惑しながら言うとルイーゼは答える。
「私たちは今から最後の抗議をする、リドルが交渉をして、あの後どうなったかわからない、だけど攻撃のこない今、このチャンスを今こそ使うしかないの」
「でもそれで失敗したら...」
「今までもそうです、失敗してたら死んでたの、だから変わらない、みんなのために、私たちは——」
その時であった、窓ガラスが突然割れ、何かが投げ込まれた、それは手榴弾であった。
「逃げろ!!」
離れようとするが間に合わず、皆が吹き飛ばされる。土煙と火薬の臭い、それと同時に兵士たちが中へと次々と入る、軍兵ではない、王派閥の兵服、ドレットは鉄板を盾にして銃弾を防ごうとするが次々と仲間が射殺される。
「ルイーゼ!!」
ドレットはルイーゼに鉄板を渡すとドレットは兵士に近づくと顔面に蹴りを入れ、そのままの勢いでもう一人の兵士に激突させるとそのまま銃を奪おうと銃身を掴む、兵士は抵抗するがドレットは銃を引くと同時に左手を前に出すと詠唱する。
「ファイア!」
火球が兵士の目の前に現れ、兵士が後ろに下がる瞬間に銃を奪うと銃を向ける。
兵士は両手をゆっくりと上げるとドレットは弾倉を抜くと地面に銃を捨てる。
ドレットはそのまま次の兵士の元へ行こうとしたその時、頭を撃ち抜かれる。
「が.....!!」
「ドレット!」
ルイーゼは皆を守ろうと必死に鉄板で守るが、やがて皆は壁際へと集まるように追い詰められるのであった。兵士たちは銃を構えると皆に向ける。
人は皆、何かに縛られていた、常識に縛られていた、偏見に縛られていた、言葉に縛られていた、法に縛られていた、命令に縛られていた、愛情に縛られていた。
亜人はもまた縛られていた、同じ人間でしかなかったからであり、何かの鎖に縛られるのは全ての人間であった、ある人間は言った、亜人は野蛮で残忍でモンスターと変わらないと、だから縛られていると、ありのまま生きることはいけないのか、何かに縛られず自由に生きることは罪なのか、縛られることこそが正義なのか?
縛る先にあるのは価値観の違いによる戦争、それこそが結果であった。
「みんな....」
ルイーゼは周りの亜人と手を握る、互いに繋がり、死を覚悟する。
ここまでだ、声をあげても最後は死ぬ、もう終わるんだ。その全ての感覚を味わい、私は死ぬ。
「やめてよ!!」
それは甲高い声であった、誰かがそう言った声を聞いた、そして大扉を見た時に私は見た。空いたそこには街の人たちがいたんだ。
そして一番前にいる少年、彼が言ったのであろう、泣きそうな表情と共にプルプルと震えながら勇気を出した、すると他の人間も声を上げる。
「そうだよ....やめてやれよ....!」
「本当に殺す必要があるの!?」
なぜそんなことを言うのか、彼らはリドルの死を見たもの、もしくはその話を聞いたものなどであった、自身で考え、同じものであるのではないかと考え、偏見の鎖を打ち破ったものであった、それはリドルの死だけではない、今までの亜人の戦いを見たものであった、破壊行為を行わず、できるだけの暴力をせず、仲間を犠牲にしても正義を貫いていた今までの努力、それこそ人間としての闘い方があったからこそ、今がある、亜人を信じようとするものは数十人、数百人、いや、既に数千人はいるであろう、全ては繋がっている、今この時のために、今までの犠牲が、今までの悲しみが、今までの努力があったのかもしれない。
兵士たちは引き金が引けなかった。大衆の目もあるだろう、だがしかしその必死に生きることが、手を繋ぎ、仲間と生きていたその姿もまた、兵士を変えようとしたのかもしれない、登る朝日と降りる銃は交差する、そう、戦いはその時、終わったのであった。
「...........みんな....」
ルイーゼは呟く、涙が流れ、生を知った、死すら覚悟していた、もうダメだと、変わらないのではないかと、そう感じていた、だからこそこの状況に感動したのかもしれない、兵士たちは銃を捨てるとただ立っていた、すると拡声器の声が響き渡る。
「王派閥の兵士達! ロッド王は捕まった! 大人しく投降しろ!」
兵士たちは大扉から外に出ようと向かう、その背中を皆は見ていた、戦争の終わりはあっけないものであった、しかしこれを見るために戦ったのだから。
人の命は軽い、だがとても尊いもので、私にとってはとても大事なもの、苦しいことも、悲しいことも、嬉しいことも全てが美しい、だからもう誰も悲しませたくない、たとえ縛られることはあっても、それを受け入れるだけではなく、疑問を持ち、必要なら努力をする、それこそが生なんじゃないかと私は思う、これからどうなるのかわからない、だけど私は、必死に生きてみたいと、明日を知りたいと、そう思えた。




