小さな思い出
更新が遅くてごめんなさい…
庭に向かって行くと、お茶の用意をするカヨの姿が見えた。
「カヨー!」
僕の声でカヨが振りかえる。
「坊ちゃま!もう少しで坊ちゃまの好きなアールグレイが出来上がりますので、お待ち下さいね」
透明なティーポットから茶葉が踊り出しているのが見える。
カヨの入れるアールグレイは絶品だ。
「ネオン、カヨ、待たせて悪かったな!」
後方から父様の声がした。
そして、僕の目の前の席に座る。
「父様、お仕事の方はどうですか?」
「あぁ、やっと少し落ち着いたよ。ネオンとお茶を飲むなんて久しぶりだな…本当は、もっと一緒にいたいのだが…」
「父様、僕のことは気にしないで下さい。僕は、大丈夫ですから…」
「紅茶の準備が終わりました」
カヨが父様と僕の前にティーカップを置く。
父様は、ティーカップに唇を付け飲む。
「とても美味しい。カヨの入れる紅茶を飲むと、落ち着くな…」
「旦那様、ありがとうございます!まだ、先代には叶いませんが…」
カヨは、嬉しそうに微笑んだ。
「あぁ、確かにリオの入れた紅茶も美味しかったな」
父様は、遠い昔を懐かしむように言った。
その時、ドアが勢いよくノックされた。
「旦那様、トリスタンです。少し、面倒な事になりました」
「許可する、入れ」
父様の許可を得たトリスタンは、部屋の中に入ってきた。
そして、トリスタンは、父様に耳打ちした。
「ごめん、仕事が入ったようだ。カヨ、御馳走様。リヨン、半刻後には屋敷を出るから、準備を」
そういうと父様は、僕には、一切目線を合わせずに、席を立って足早に去って行った。
「承知致しました」
父様の後について、リヨンが部屋から出ていく。
結局、いつも通りのメンツになってしまった。
「坊っちゃま、どういたします?」
カヨが伺う様な目線を僕に寄越す。
「僕は、もう少しお茶とお菓子を頂くよ。カヨも父様のお手伝いがあるんでしょ?行ってきたら?」
「坊っちゃま、気を遣って頂きありがとうございます。申し訳ありませんが、失礼させて頂きます」
カヨも父様の手伝いで席を外してしまい、独りぼっちになってしまった。
「あぁー、また独りか。寂しいと言えば、何か変わるのかな…」
そう呟いた時、あの水色の存在を思い出した。
そして、近くにあるナプキンにクッキーを包み、蔵へ向かった。
一週間ぶりの蔵。
以前来た時とは、何も変わっていなかった。
「ルリアー?ルリアー?」
奥の空間に、声を掛ける。
「ネオン、遅い!ずっと、待っていたのに!」
籠の中の小鳥は、両翼を広げ、僕に怒りを表している。
「父様の仕事の関係で、来れなかったんだ。でも、今日はお土産を持ってきたよ!」
「お土産?お土産って何?」
お土産がよっぽど気になるのか、翼を下ろして僕に寄る。
「クッキーを持ってきたんだ!」
「クッキー?」
「クッキーはね、食べると幸せになれる食べ物だよ。甘くて、美味しいんだ!」
手のひらに、クッキーを細かく割って、自分の手にのせて目の前に出してやる。
目の前の存在は、器用にクッキーを砕き、食べる。
「何これ、美味しい!あれ、これを以前に食べた事がある気がする…あっ、痛…!」
突然の激痛がルリアの頭を襲う。
「大丈夫!?」
痛みに耐えるように、頭を振るルリアの姿に心配になる。
「たまに、こういう事があるの。なんか、いきなり映像が見えて…私と他の人。私を見て幸せそうに笑ってた…」
「その人を思い出せる?」
「うぅん、思い出せない…」
ルリアは嘴を小さく振り、答えた。
また、目の前の存在の謎が深まったのであった。
最近、無農薬の紅茶に嵌まっています。
クッキーと紅茶の組み合わせって最高ですよね!




